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続報ゆっくり茶番劇騒動、今日の動きからいろいろと学ぶ

昨日(2022年5月15日)に勃発した、「ゆっくり茶番劇」の商標をあまりゆかりの深くなさそうな者が取得した問題。

色々と炎上案件と呼ぶにふさわしい騒動に発展したようだ。以下、起こったことを記録しておこうと思う。必ずしも時系列ではないし、網羅的でもない。

①取り扱った特許事務所が見解を表明

話もよくまとまっていてわかりやすいし、真摯な対応に思える。その一方で、ネットミームっぽいものを取り扱うリスクみたいなものが、弁理士界隈ではそんなに認識されていないのかな?ということを思った。ネットの利用が進んでいるとされる昨今とはいえ、リアルワールドでの実感みたいなことで言うと、ネット文化にまで明るい人というのはまだまだ割合は多くない印象がある。ネット世論みたいなものと、リアルでの世間相場みたいなものには依然として隔たりがありそうだ。

代理人が述べていることは、PROとしての率直なところなのだろう。今回、本件にネガティブであるネット民の心情として代表的なのは「みんなで作り上げてきた文化を独占しようなんて勝手すぎる」みたいなことであろうと思われる。要するに、「ゆっくり茶番劇」というのは、誰か個人(少なくとも今回の者の)の商標とすべきものではなく、コミュニティで共有されるべきなのだ、的な価値観である。

こういった「皆様に愛されている商標である」か否かみたいなことをルールに当てはめてみると、周知商標に当たるか否かという論点になるようである。その点に関して、数万件程度の検索ヒットでは、周知と呼べるレベルではない旨の見解が示されており、それはある種の相場観みたいなものとして、あるのだろうという気がする。

実際、インターネット老人会の(身近な)勇者たちの見解をサンプリングしてみたところでも、「ゆっくり実況」とかはわかるけど、別に「ゆっくり茶番劇」とは言わなくね?という話はあった。ニコニコの公開データを当たってみた人が作ったグラフを見ても、のび始めたのはわりと最近のことのように感じられる。「ゆっくり実況」等の周知性であれば十二分にあるように感じられるが、「ゆっくり茶番劇」に限定すると、それほどに見えなかった可能性は十分ありそうに思う。そうなってくると、「ゆっくり界隈の何か」を自分のものにするとは何事だ、みたいな曖昧な話についてみんなが過剰に騒いでしまった、という話とも受け取れるのかもしれない。

再生数がどれぐらいあるのかという視点ではないので、タグの数で何かが言い切れるわけではないのだけども。

こういう状況にあるものを、代理人や特許庁サイドで認めないと判断すべきだとするのは、少々酷なことだろう。まあ、そんなことを言うまでもなく、犯罪めいた脅しみたいなことはしてはいけないと思うわけだが。

特許事務所の見解を見て思ったのは、仮に自分が知財界隈の人間だったとしたら、何がコアなファンの心情を害して炎上するかわからん、となってくると、ネットミームとかネットカルチャー発の何か、みたいな案件は取りあえず断るのが吉なんだろうなと。

弁理士会の実施したアンケート調査によると、商標出願に係る事務報酬の相場は、5万~8万。謝金で4万~6万といったところのようだ。

事務手数料(H21)
https://www.jpaa.or.jp/old/consultation/commission/pdf/2010/question3.pdf

謝金(H15)
https://www.jpaa.or.jp/old/consultation/commission/pdf/tokkyojimuhousyuuankt_20030530-34.pdf

商売としてはわりに合わないよなあと。

②商標権者サイト、特許庁等のサイトがダウンする。一部では古代兵器田代砲か?と。

サイバーテロめいたことはもちろんOUTな気がするので、多くは語るまい。老人会的に、アツいものがこみ上げる心情までは否定できないところもあるものの、まあ、ダメだと思うよ。

一部では、この騒動でアツくなっている人がそもそも理解できない、みたいな意見もあり、ネット民の世代ギャップみたいなものも、これからどんどん大きくなっていくんだろうなと。そういった場合に、「ネットの一体感」みたいなことを感じてきた老人会世代が、新しいネット文化になじめなくなり、リアル世界どころじゃない老害になる、といったことはこれから増えてきそうだなと思った。

③結局商標権者が利用料の支払は不要と表明。しかし権利は保持すると主張

もとより、これで利用料を取るのは無理筋だろ的なムードのあるなか、なんでわざわざ商標を取得したのか、そして儲けもないのに保持するのか、という点は結局よくわからない。やはり、一部では炎上マーケティングの一種では?などと言われているようだ。

当該個人にとってどうこうということはさておき、結果だけをみれば「ゆっくり」というものがさらに広く知られる機会になった可能性は十分にあるだろう。

まあしかし、炎上マーケティングっていう言葉は使っていくべきなんだろうかね。そういうヤカラめいた行動に、なんか一瞬ロジカルに見えてしまうような雰囲気を与えるのって、実はよくないことなんじゃないかって気もするな。

④PROが解説を投下

本件商標登録の影響、経緯、今後の対応等について栗原弁理士によりスッキリと解説がされている。対応の箇所に、「万一無効にできなかったら」などと表現されているように、当該商標は拒絶されてもおかしくなかったし、無効にできる可能性も十分にある、との考えが示されているように読める。結局、これだけの騒動が起こるということは、この商標の権利を個人に認めるのはおかしい、と考えるのがまあ常識的なのだろう。なんとなく言葉の端々に、今回の登録を問題視している雰囲気が垣間見える。

⑤特許庁に問い合わせたとされる情報が出現

やり取り内容と回答者を明記することにつき承諾を得た、などともっともらしい感じではあるが、真偽は不明なので載せない。ニコニコ大百科の該当スレによると、特許庁としては今回の商標登録には問題があったと認識している、みたいなことが書いてある。そこまで、踏み込んで回答するものなのかなあ…と気になるところではある。

ちなみに、今後について個人的には、何かこう法が守るべき大義みたいなものがありそうな話では全くないので、商標はそれらしい筋の通った訴えがあれば無効になるのだろうと思う。

この点については、最近しばしば「政府中枢に近い」などと噂される、切り込み隊長こと山本一郎氏も動画で、客観的にこれだけ愛されてきたものですよということが示されたら「ですよね」で終わる話だ、などとしており、まあ、おおよそそういう話になっているのかなという気配を感じる。

なお動画中では、くだんのAIによるSoftalk音声を用いた動画の収益化停止措置についても、Youtubeとしては、ゆっくりそのものを排除しようという意図ではなかった、というような話が紹介されている。

⑥そして、公式マークがもらえない謎解きクリエイター松丸亮吾氏の好感度がアップする

くだんの商標権者からのSNS上での絡みに対して、「人が作ったものを自分のものにする人とはちょっと仲良くなれない」などと、丁寧だがわりとストレートなdisで対応したことが話題となった松丸氏。

後に中学の時から東方を愛していたことを表明し、ネット民に共感を示した。

なんだろう。これからの時代に支持を集めていくタイプの一つの好例なのかな、みたいなことを思った。自分はあまり性格がいいほうではないので、曲がった感じのしない人って、ちょっとうらやましくなっちゃうよね。

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