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一流の選手と超一流の選手を分けているのは反応の早さではなく〝遅さ〟だ

一流は誰からもわかりやすいが、超一流は素人にはわかりにくい。

実用の中に、美を見いだせるのが、美意識(中略)美意識は、その人の生き様を磨き、価値観を変えていく

熟練者の脳は行動が起こされる前に、その先まで予測することで、必要なときにすばやく動き、調整できるかのようだ。膨大な量の練習と経験を積んでいるために、高い技能をもつスポーツ選手は自分たちが見ているものを、あるいはやろうとすることを把握し、それがどういう結果になるかをうまく描けるのだ

本書は一種のサバイバルガイドにもなっている(中略)生き延びるために何をしなければならないかについて具体的にアドバイスしてくれる(中略)「現実はもっと興味深く、希望に満ちている」のである

キスを考えるときに外せない神経伝達物質は、ドーパミン(中略)ドーパミンは単独で作用することはない。クラインのいう「化学物質合唱団」の一員にすぎず、ドーパミンの役割は他の神経伝達物質も受け持っている。中でもオキシトシンは愛着感や愛情を育み、キスとも関係がある(第8章で取り上げるように、オキシトシンはホルモンとしても働く)。

ドーパミンにはさまざまな生理作用があるが、とくに重要なのは、意欲と報酬を増強するという作用である(中略)射精の度にオスの脳内のドーパミン濃度は少しづつ低下してゆく。そして、交尾が十分に行われると、脳内のドーパミン濃度は通常レベルにまで低下する(中略)後尾相手が変わると性的興奮が持続する(中略)テストステロン濃度の高い父親は家族を顧みなくなり、ヒナが餓死する可能性が高まった

雄ラットを雌に自由に近づけるようにしておくと、一〜二時間のうちに六、七回交尾をする。最後の交尾のあとでは、そのラットは疲れ果てたように見え、三〇分かそれ以上のあいだ不活発になる(中略)これは性的馴化であり、疲労ではない。なぜなら見かけは疲れ果てたようだった雄に、新しい雌と出会えるようにすると、すぐに交尾を再会するからだ(中略)同様に、一組の初対面の雄と雌のアカゲザルをいっしょにケージに入れると、ほとんど前戯なしに素早くそして頻繁に交尾する。数日後には、交尾の頻度は減少し、毎回の行為により長い準備行動が先行し、各パートナーは相手を観察し、さらに相手を刺激するようになる。しかし、もし雄に新たな雌のパートナーを引き合わせると、前戯は省略され雄はすぐに性的に興奮する。

雄のニワトリがなじみのパートナーよりも新しい相手を好むことは、研究で立証されている。科学者はこの淫乱な行動を「クーリッジ効果」と呼んでいる。

大統領は「クーリッジ夫人にそれを伝えて」と切り返した(中略)一匹のメスとつがいになった(※ラットの)オスは、しばらくの間、そのメスと交尾しようと躍起になり、苛立った様子をみせるのだが、その後は、ほとんどすっかり「生産性を失う」ほどまでに、その気をなくしてしまう。研究者たちは、このオスの性衝動に再び火をつけるためには、ケージに新しいメスを入れるだけでいいことを発見した。そうすると、しおれ果てていたオスはもう一度、精力的なセックス・マシーンになる。これが「クーリッジ効果」だ(中略)誰かと長く暮らすことは、その相手とセックスをすることへの興味を減衰させていく。悲しいことだが、真実だ ※引用者加筆.

快楽は、目標を達成することからよりも、目標に向かって前進することによって訪れる。シェイクスピアはそれを完璧に表現している。「勝ったら終わり。喜びは、その過程にある。(落ちたらそれでおしまい。喜びは口説かれているあいだだけ。という意味で書かれたことば)」

ドーパミン的な熱愛がH&N的な友愛に変わっていくのに伴い、セックスの頻度は少なくなる(中略)というのも、オキシトシンとバソプレッシンはテストステロンの放出を抑制(中略)望みが所有に置き換わった瞬間に、ドーパミンの役割は終わる。興奮は消え、オーガズムはクライマックスではなくなる

若妻だったジュリーは、仕事で家を一週間空けた夫をバーで待っていた(中略)いつもは幼い息子と家で待つジュリーだが、このときは違った。夫の仕事のパートナーの妻である友人に誘われて断りきれず、珍しく夜に出かけたのだ(中略)息をのんでドアを見つめるなか、ついに夫がバーに入ってくると、ジュリーの顔に愛情のこもった嬉しげな笑みが広がった。だが夫は妻の笑顔に気づかない。ドアが開いたとたん、ひとりの女性がぱっと席を立ち、彼の腕の中に駆け込んだからだ。ふたりは唇を合わせた。「キスをしていた夫が目を上げて、私と目が合ったの。私がただじっと見つめていると、夫が近づいてきて、『あれは知らない女だ』って言った。私はその言葉を信じたわ」(中略)ジュリーは夫が別の女性とも浮気をしているのを知った。驚くことに、あのバーでの出来事が起きたのは、ふたつの浮気を知った翌年のことだ。そうなると、謎はますます深まる。ジュリーはどうして、夫が別の女性とキスする現場を目撃しながら、それをなかったことにできたのか(中略)人々は裏切りに対してたいていがあまりよく見ようとせず、知ろうとしない。また多くの場合、世間、社会、他者との関係における自分の立場を守ることが適応的戦略になり、被害者や傍観者は目をつぶる

人の能動的楽観主義が本物かどうかは、危機のときの態度を見ればよくわかる。本物は危機のなかに隠れたチャンスを見つけ、チャンスを生かすことができる。

情報分析官

生きることを管理するという仕事は、身体を管理するということ

情報分析官

情報を降ろすとは、わかりやすい形でいうと、考えを紙に書き出すシンプルな行為です(中略)情報を降ろすことで、さまざまな細かい点を頭の中で覚えておく負担から解放されます。そのため知的なリソースを解放し、問題解決やアイデアを出すといった、もっと労力を要するタスクに使えるようになるのです。また脳の外へと情報を降ろすことで「分離による獲得」が生まれ、それまでは頭の中にしか存在しなかったイメージやアイデアを、自分の感性を使い、多くの場合は新たな気づきをもって精査できるようになります(中略)降ろすという行為は、文字である必要はありません。体を使うこともできる(中略)体を使って参加する学生だけが、体を動かしたことによる体の内側からの深い理解を得られる(中略)学ぶとは、新しい方法で動くこと(中略)人は体の動きによって、異なる考え方をするようになる

情報分析官

バスケットボールの試合では、ガラスのバックボードの後ろに座っているファンたちが、サンダースティックという音の出る棒を振って、フリースローをする敵方の選手の集中を乱そうとする。ダラス・マーベリックスは、神経科学の専門家の「みんながバラバラに振るよりも一斉に振った方が視界を邪魔する効果は大きい」という意見を取り入れて実行し、2回の試合で、敵方のフリースローの成功率をおよそ20パーセントも減らしたという(中略)やじを浴びせ、それ以外の時は黙っているように指示した。やじの影響力は大きく、選手たちの動きは、応援されている時や静かな時よりも悪くなった。

情報分析官

(※スパイク・)リーはすべてのホームゲームでマジソン・スクエア・ガーデンのコートサイド最前列シートに陣取っていた。リーはその座席からミラーが彼の言葉に反応するまで、とにかく野次り倒すのだ。最初のうちは、これはニックスにとっていいことだと思われていた。スパイク・リーが試合中にレジーの気を散らしてくれていると歓迎された。レジーがニックスよりもリーに注意を向けているようにしか見えないことさえあったほどだ(中略)ところが、しばらくすると、実はミラーは心の炎を焚きつける燃料としてリーを利用していたことが明らかになってきた。何度も何度も、レジーはスパイクと野次り合いながら、驚異的なシュートでニックスに集中砲火を浴びせるのだ。しばらくすると、ニックス・ファンはスパイク・リーに頼むから黙っていてくれと願うようになった。決してレジーを怒らせてはいけないと彼らは思い知ったのだ(中略)ちなみに、NBAの若手選手たちはこれと全く同じことを最盛期のマイケル・ジョーダンから思い知らされている(中略)眠れる獣を起こしてはいけない。眠ったままなら、彼はその試合で三十点ほど記録し、次の試合も普通に臨むだけですむ。でもあの野獣を目覚めさせてしまったら、彼はその試合で五十点入れるだけでなく、次にその選手とマッチアップした試合でもまた五十点入れてくるだろう。※引用者加筆.

怒りは、エンジンの燃料に火をつける点火プラグのようなものだ

「マイケル・ジョーダンが一種の天才だったとしても、少年時代にはその兆候がほとんど見えなかった」とデイヴィッド・ハルバースタムが彼の伝記『ジョーダン』に記している。高校二年生のとき友人のロイ・スミスと一緒に学校のバスケットボール・チームの夏のキャンプに参加したが、その後もメンバーには入れなかった。だが、スミスは入ったのだ(中略)ジョーダンは誰よりも激しく練習(中略)選手たちは自分の得意なことに頼りがちになる。自分の長所をいっそう強化し、元々弱い部分に頼ることを避けるのだ。だがジョーダンの場合、不得意なプレーをしょっちゅう用い、強化を試みた(中略)スミスコーチは、一対一の練習でも、五対五の練習でも、ジョーダンが必ず勝つことに気づいた。そこでハンデをつけることにした。ジョーダンのチームに力量の劣る選手ばかり入れ、勝つためには彼が余計に頑張らなければならないようにしたのだ。おかげで、彼はさらに力をつけたようだ。三年次の終わりには、教えてやれることはもう何もないと悟ったスミスが、大学チームをやめてNBAのチームに入るようジョーダンに勧めた(中略)マイケル・ジョーダンは子供のころから負けず嫌いだったようだ(兄のラリーと一緒に育ったので、しょっちゅう負けてばかりだった)が、技能の向上のためなら何でもするという気概は、一〇年生のとき一軍チームに入れなかったことで、ようやく表にあらわれた。友人のロイ・スミスの話では、このとき彼の闘争心に火がついた。レイニー高校のコーチのロン・コーリーは、ジョーダンを初めて見たときのことをよく覚えている。その年の二軍の試合の終盤だった。「コートには漫然と走っている選手が九人いた。だが、ひとりだけ全力でプレーしている少年がいた。それを見た私は、彼のいるチームが一ポイント負けていて、残り時間があと二分なのだと思った。そこでスコアボードを見ると、彼のチームは二〇ポイント負けていて、時間はあと一分だった。それがマイケルだった」

(※マイケル・)ジョーダンは、自分はスーパースターなのだから、特別扱いされるべきだ、と思っても不思議はなかったし、そうしても責める人はいなかっただろう。だが、実際のジョーダンはそうではなかった(中略)ジョーダンは私を「コーチ」と呼び、命令口調ではなく、何かを「お願いする」という丁寧な話し方をした。そして、私が彼の頼みに答えたらきちんと礼を言った。なんと素晴らしいことだろうか───デューク大学シャシェフスキー(ドリームチームのアシスタントコーチ)※引用者加筆.

普通の選手がシューズの弾性に吸収させている加速度(速度変化や方向変化)成分を、(※マイケル・)ジョーダンは自身の身体そのもので吸収している(中略)叩きつけられたボールはバウンドすることで上向きの大きな運動力(移動慣性力)を持つことになる。崩れ落ちていったジョーダンは次の瞬間、ボールの上向きの移動慣性力に身体を支えてもらって立ち直る(中略)ドリブルからジャンプにいく時に、ジョーダンは崩れ落ちていく身体のエネルギーを使ってボールを信じられないほどの勢いで床にぶつけて、その大きなボールの反発力をもらって、一緒になってジャンプしている。このようにジョーダンは、動作の一つ手前の段階でエネルギーを作り出しては、次のアクションにつなげることができるのだ。※引用者加筆.

少しの努力でスケートボードもサーフボードも、スノーボードだって乗りこなす。こうしたすべてができるのはなぜか。それは母なる自然が際限なく遺伝子で遊んで新しい感覚器官や筋肉を生み出し、そのうえで脳がその活用方法を考える仕組みだからだ(中略)拮抗する勢力の存在が魔力を発揮する。それがあるからシステムの安定と平衡が保たれ、機に応じて変化できる態勢を整えられる。

NBAのボールハンドラーでもワールドカップのサッカー選手でも、体重を逆方向にかけたディフェンダーをそのタイミングでなびかせ、バランスを崩させたまま置き去りにする(中略)圧力を緩めると、相手の体勢は微妙に変化するので、それを本能的に感じ取った相手が身体意識が前足に体重を戻そうとする。その瞬間、相手が前に体重移動する勢いと、前足に体重を乗せる百万分の一秒ほどの一瞬を利用(中略)彼らがそういうトレーニングを積んできたという事実を逆手にとって利用することもできる

自分らしいスタイルを確立する最初のステップは、達人の作品のまね(中略)手本となるテキストのまねは、認知的な負荷を減らせる(中略)指導者が与えてくれた手本の型に沿うことで、学生は学ぶべき教材をより深く整理できるようになります。

一流の選手と超一流の選手を分けているのは反応の早さではなく〝遅さ〟だ。エリートのテニス選手はボールを打つ最後の瞬間まで可能なかぎり待つことが、研究の結果わかっている。この0・1秒単位の時間の猶予が、新たなデータを消化する機会を生み出す───ボールのスピンの回転、風、速さ、相手の選手が立っているコートの位置などを読み取り、計算する。決断を遅らせることで、大きな価値が生まれるのだ

成功する人はひと言でいえば、確かな助走を経て踏み切っている

私たち凡夫は、お金や地位や権力があれば、ドーパミンやセロトニンやオキシトシンが分泌されて幸せになれると思いがちだが、ホルモンなどから幸福感を得ようとすると、耐性により幸福感が半減してゆく。このことを理解している非常に優れた人々は、神経伝達物質やホルモンからではなく三半規管から幸福感を得て、自己完結していると言う。簡単に言えば、優秀な人は歩いているだけで幸福感を得ているということだ。日本語で言えば、「生きているだけで丸儲け」である。我々凡夫には想像もできないことである。私自身、個別にお返事する時間がないのですが、「マインドウィスパリング スペース 調べたいワード」でnote内検索していただければ、詳しく検証した記事が見つかると思います。

関連リンク↓

https://note.com/wandering_1234/n/na1f843717d16


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