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【石川旅行記 #2(終)】これが私の旅行です

フラグ

旅館に泊まった私たち一行は一つ心残りがあった。

「景色が良いと言われた露天風呂に行ったけど暗すぎて何も見えなかった」

ということである。


昨日のリベンジとして朝7時からの朝食をたらふく(食べるのに夢中で写真を撮り忘れたがプレート3~4枚)食べ、足早に大浴場に向かい露天風呂を満喫した。

当然写真はないが、七尾湾を一望できる絶景が待ち構えていた。

遠くには七尾湾内にある能登島と、和倉温泉から能登島を結ぶ能登島大橋が見えた。
自然の豊かさとその間に割って入って存在感を主張する橋がコントラストになり、写真映えする景色となっていた。

また、七尾湾は牡蠣の養殖が盛んであるため牡蠣を引き上げるための小舟が何隻も浮かんでおり、地元の方の営みを垣間見ることもできた。


そんなことを色々考えおそらく1時間30分くらいはお風呂に入り、時刻は10時頃。

あんまりゆったりしすぎたら行きたいところ回れなくなっちゃうよな〜なんて軽口を叩きながら、準備をしてチェックアウトをしたのが11時頃。
お世話になりましたと旅館にお別れを告げ、車に乗り込み目指すは能登半島!!!!





まさかこの「旅館を満喫する時間」が予定を大きく狂わせることになるとは、この時の私たちは知る由もなかった…

たまたま客室が七尾湾に向いていたため良い景色が撮れた

あまりに遠すぎた絶景

旅館を出発し、まず目指したのは『青の洞窟』がある珠洲岬だった。

『青の洞窟』というと、東京であれば表参道にあるライトアップされた並木道を思い浮かべるが、実は同じような名前の場所は日本全国に点在している。

その多くが、並木道ではなく歴とした洞窟である。

私たちが向かう石川県珠洲市の青の洞窟は、日本海の荒波によって海岸が徐々に削られていき、崖の内側に穴としてできたものを整備したものである。

自然が好きな私は山や海にはよく行くものの、洞窟にはあまり行ったことがなかったため、青の洞窟も今回の旅の楽しみの一つにしていた。


ただ一つ懸念事項が出来した。
それは出発してから気付いたことである。

私たちは能登と金沢の間で宿泊をしようと考えて和倉温泉を選んだのだが、能登半島の大きさを大きく見誤っていた。

なんと和倉温泉から珠洲岬までは100km近くあり、なおかつ高速道路(のと里山海道)も前半30km地点までしか通っていない。
比較として金沢から和倉温泉までは70km弱である。ほぼ道中高速道路が通っているため、1時間30分もせずに着く。

11時に和倉温泉を出て、珠洲岬に着くのは13時頃(所要時間2時間弱)になるという計算だった。


…もしかしてやっちゃいました?


もう友人と二人で笑うしかない。

ただ出発して引き返すのはもったいないので、珠洲岬へと向かうことにした。

道中高速を降りるポイントを間違えたり、遠回りしたりとてんやわんやな中で2時間30分ほどで到着した。

やってしまった。時刻はすでに13時30分になっている。

しかしここだけはゆっくり見たいので、後の予定を考えず満喫することにした。


聖域の岬

到着した珠洲岬は断崖絶壁の上に立っている景勝地だった。
そもそも、日本三大パワースポットの一つに数えられている場所で、別名『聖域の岬』と呼ばれているため、とても縁起の良い場所だそうだ。
(ちなみにあと二つのパワースポットは富士山、長野県の分杭(ぶんぐい)峠らしい)

観光できる場所は基本的に有料になっていた。

チケット代1500円を支払い、断崖絶壁や洞窟を見るため事前に注意事項の説明を受け、ヘルメットを渡されて出発した。

まず目にしたのは『空中展望台 スカイバード』というやぐらのような建物だった。
ここは珠洲岬を一望できる場所で撮影スポットの一つでもある。

もちろん私たちも記念に写真を撮った。

崖からせり出しているので高所恐怖症の方は要注意

スカイバードの下には『ランプの宿』という宿泊施設もあり、雰囲気が良かったためいつか泊まることを心に誓い、スカイバードを離れた。

コテージ型の格式高そうなお宿。右にちょこっと見えるのがスカイバード


次に見たのは、幹が斜めに曲がっている木々だった。

これは日本海の強烈な海風をダイレクトに受けて形が変わってしまった木々ということで、かわいそうな気もするが絵になる景色となっていた。

ちなみに今日は遠くに雲が立ち込めていたため見つけられなかったが、天気が良ければ佐渡島が見られるらしい。

ただ柵が短く作られていたため、バランスを崩すと真っ逆さまに落ちていく。なるほど、そのためのヘルメットか。いや違うか。

必死に佐渡島を探している

青の洞窟

そしてお待ちかねの青の洞窟である。
木々が立ち並ぶ場所から急な斜面を300mほど下ると、すぐそこには浜辺があり、隣に大きなトンネルが設けられていた。

このすぐ左側に海がある

ここを入って50mほど進むと一気に天井が高くなり、一面群青色の洞窟が姿を現した。

言い得て妙で、本当に「青色の洞窟」だった。

真ん中に四方4mほど水がはってあり、周囲に人が歩けるように通路が造られた祭壇のようになっていた。

その祭壇を降りられる場所もあり、そこから波打ち際に近付くと角が削れた丸い白い石が落ちている。
それがパワーストーンとして有名で、持ち帰ることも可能なのだそうだ。

私も気に入った一個をお守りとして持ち帰ることにした。

そのほかには、はるか昔に洞窟に訪れた人が掘ったとされる仏像が安置されていたり、「刀禰家埋蔵品調査中」と書かれた注意書きがあったりと、興味の尽きない面白い場所だった。

最後は入り口から差す光を使って映える写真撮影を試みた。
テンションが上がりに上がっていた。

(※ちなみに刀禰家埋蔵品の刀禰(とね)家は、調べたところ上記の「ランプの宿」の元となる宿屋を創業した家系らしい。先祖は源平合戦で敗れた平時忠と共に能登に流刑となった琵琶湖の水軍一族で、江戸時代に廻船問屋を営み富を築いたのだとか。歴史のロマンがつまっている)

青の洞窟を出て、急坂を登るとそこで有料ゾーンは終わりのようだった。

確かな満足感を胸に、出発地の『聖域の岬 自然環境保護センター』に戻ってきた。来て良かった…


選択

ふと時計をみると時刻は14時30分頃。まだまだ観光ができそうな時間だ。

しかし、新幹線の出発時刻は18時12分。
残り4時間弱あるが、何かを見て回るには微妙に足りない時間。

当初友人が「ジンベエザメが見たい」と言うので、能登島にある『のとじま水族館』に行く予定を立てていた。
しかし、残り5時間で能登半島最北端の珠洲岬から能登島の北部にある水族館を見て金沢へ戻るというのは「頑張れば行けるがリスクもある」という道程だった。

さあどうする…ここが運命の分かれ道だ。


結論として、私たちは「この機会を逃せば能登半島にいつ来ることができるかわからない」と考えて、

のとじま水族館に行ってから金沢に戻ることにした。

だってジンベエザメ見たいし…


そこからの道中は「いかに移動時間を減らせるか」という試行錯誤の連続だった。

まず、立ち寄る場所のリストに入れていたジェラード屋『マルガージェラート』をリストから外し、代わりに『聖域の岬 自然環境保護センター』でカップで売られていた同店のジェラートを食べ、行った気になった。

旅行中一番映えた写真

できるだけ最短ルートを探しながら、遠回りとなる高速道路も避けひたすら海沿いを通る。

それでも能登島に入る頃には1時間近く経っており、のとじま水族館に着く頃には15時40分になっていた。
さらに微妙な時間…しかしもう着いてしまったので見ないという選択肢はない。

さあ!!!なんでも勢いだ!!余すことなく見ようじゃないか!!


超高速水族館巡り

水族館に着いて、入場券を購入する際売り場の職員さんが「16時30分には閉館しますがよろしいでしょうか…?」と控えめに聞いてくれた。

それに対して私たちは「大丈夫です!!」と元気よく返事をして入館した。

まず、私たちを出迎えたのは大きな円形の水槽だった。

ここで早速目的のジンベエザメと対面した。

ジンベエザメ

半分以上目的を達成したが、どうせなら他の展示も見たいということで順路に沿って廻ることにした。


入り口
いきなり目の前に来たハンマーヘッドシャーク
水族館もクリスマス仕様
ハギ「何見てんねんこらァ!!」
ヒトデ
マンタ
イルカ

閉館時間が迫っていたこともあり、展示を引き上げているものもあったため、意外にも1時間もせずに全ての展示を回ることができた。時刻は16時20分。


閉館を告げる「蛍の光」が流れる中、意外と周りに観光客と思しきカップルが多く訪れていることが見てとれた。
下調べした時には気付かなかったが、どうやら石川県の有名なデートスポットの一つであるらしい。


これが私の旅行です

帰宅タイムアタック

水族館を出て金沢に向かうため車に乗った時、私たちは今日の予定の答え合わせをすることとなった。

のとじま水族館から金沢駅までのルートをカーナビで検索して、一番早いルートを確かめる。

するとそこに出てきた時刻に私たちは驚愕した。


「到着時刻:18時40分」


「乗車券を購入した新幹線の出発時刻:18時12分」


乗り遅れ確定…


「ああ〜やっちまった!!!」

私が諦めて叫んでいると、助手席に座った友人が「運転する!!」と勢いよく発言し運転を交代した。

友人の目の色が変わった気がした。

能登島と和倉温泉を抜けて、のと里山街道の田鶴浜ICから高速に乗ると、爆速で飛ばした。

はっきり言うと取り締まりを受けるレベルの加速(最高で150km/hは出ていた)だったが、帰れなくなることの方が恐ろしい。
私も友人も次の日に仕事があるからだ。


1km/hくらいの感覚で行われる走行車線と追越車線との進路変更、少しでも間隔が空くと詰めに詰める超加速。さながら「頭文字D」や「湾岸ミッドナイト」の世界。
ただここは峠道や真夜中のハイウェイではない。他に車も多くいる。

正直助手席に座っている私は白目を剥いていたと思う。自分だったら絶対こんな無理はしない。

ただ、運転マナーの良し悪しは置いておいて金沢市内に入る頃には到着予定時刻が17時50分になっていた。車の返却など諸手続きを踏まえても間に合う時間だ。

友人に感謝しつつ、お土産はアンテナショップで買おう…なんて考えていた中、友人が「うわ〜」と声を上げた。

そう、今日は月曜日。平日である。時刻は17時50分頃。

帰宅ラッシュの渋滞だった。


約5kmを1分もせずに駆け抜けていたスピード感はどこへやら。100m進むのに5分を要していた。

刻々と迫るタイムリミット。緊張感が走る車内。大丈夫か大丈夫か、祈る二人の表情は般若のようでもあった。





金沢駅のロータリーまで残り50mあるかないかという地点で、
時計は「18時13分」へ表示を変えた。

鼓門

自由席という名の救世主

友人と二人で金沢駅構内のベンチに座りながら途方に暮れた。

何か他に手立てはないかを探すべきだが、常識もマナーもかなぐり捨てて駆け抜けた私たちの努力が実らなかった無力感は大きかった。

しかし、なんとかして帰らないといけない。

新しく乗車券を買い直すことも検討したが、いくら社会人とはいえ乗り遅れたという理由で2万円近くの出費は精神的に堪える。あと単純にもったいない。

そこで根気強く調べてみると、

「実は、新幹線は乗車券があれば、乗り遅れても別の便の[自由席なら]乗ることができる」

ということを知った。

これが正規の方法か裏技なのかまでは調べきれなかったが、それであればとりあえずの帰宅手段を確保できる。


安堵した私たちは金沢駅内をこれでもかと堪能し、きちんとお土産も購入した。

そして、当初の予定出発時刻から約1時間後の19時05分に、新幹線に乗り込み帰路についた。


今までの旅行の中で一番疲れたかもしれない。
しかし、それはそれとしてハプニングも人と共有できる旅は楽しい。
それを実感する旅行だった。


後日談

金沢での旅行が終わり、日常に戻った私と友人は後日電話で旅を回顧することにした。


競馬場での馬券に関する悲喜交々、宿選びが良かったこと、緊急とはいえ金沢駅までF-1走行したこと、案外過ぎてみると楽しかったという共通の感想が漏れた。


しかし、しかしだ。

ほぼ8割反省話が占め、中でも時間の使い方をお互い間違え過ぎたことを大きくピックアップした。

そして今回の旅をこう結論づけた。

「もっとしっかり予定立ててから行こうや」

一人旅に慣れすぎるとこんな初歩の初歩で壁にぶつかるということを嫌でも思い知らされた。


締め

今回も取り留めがない文章となり(というよりあったこと垂れ流しになり)、読みづらくなってしまったかもしれませんが、この旅行記が道ゆくどなたかの旅の一助となることを願って締めさせていただきます。

読んでいただきありがとうございました!


1日目↓



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