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1953年銀獅子賞受賞作「嘆きのテレーズ」…最高だよ、ママン。

この映画は、(二次元の)人妻好きの日本男児に、オススメしたい。
味吉良子、早瀬絹枝、春麗、ブルマ、ホリィさん、雪代巴、うちはサクラ(BORUTO時代)etc.

病弱でマザコンの夫カミーユと、 息子を溺愛している姑のラカン夫人と暮らしているテレーズ(演:シモーヌ・シニョレ)
ある日、リヨン駅で貨物点検の仕事をしていたカミーユが、イタリア人のトラック運転手ローランと 知り合い、意気投合。酒に酔い潰れ、ローマンに抱えられて帰宅した。

ラカン家では、毎週決まって木曜日に、友人を招いて競馬ゲームをしており、ローランも招待 された。ローランは、テレーズが満ち足りぬ思いでいることを察した。ローランは意を決してテレーズを訪ね、駆け落ちしようと訴えた。
幼い頃に両親を亡くしたテレーズは、生地店を営む叔母のラカンに引き取られて以来、病弱な従兄のカミーユを看病し、結婚させられた過去を語り、駆け落ち は無理な相談だと応えた。

木曜日。競馬ゲームに招かれたローランは、1人窓辺に佇んでいるテレーズに近づいた。そし て、想い合っている2人は黙って唇を重ねた。ローランとテレーズは初めて外で密会した。10数年間、裁縫と看病と店の会計だけの生活だったと言うテレーズに、ローランは改めて駆け落ちを迫った…。

いや、ストーリーはマジでどうでもいい。
一歩間違えれば通俗的な不倫の物語に堕するところ、シモーヌ・シニョレ演じるフェロモンぷんぷんの人妻:テレーズの存在感ひとつで物語を引っ張るのだ。
オトナの熟しすぎた色気を持ちながらも、妖艶とまでは突っ走らず、ほどほどに歳を食ったマダムな女房。
彼女が俯いている時、いびられる時、心揺れている時、ぷいと拗ねている時、その横顔が、インモラルな魅力を放つ。
暗い過去を抱えていると言うのも、一目惚れした男にとって堪らない、「守りたくなってしまって」刺激的だ。
そして、進退極まったママンは、果たして、自分の夫を殺してしまう。そこから物語は怒涛、ローランを巻き込み二転三転するクライマックスへなだれ込む。


実のところ、銀獅子賞受賞なんてのは大した価値ではない。(当時は複数作品同時受賞が当たり前、そのうちの一つに過ぎない。)
重要なのは、キネマ旬報社のベスト・テン (昭和29年度)において、『恐怖の報酬』 (第2位)、『波止場』 (第4位)、『ローマの休日』 (第6位)といった傑作を抑え、第1位に選出された事実だ。
長井代助をよろめかせる「それから」の三千代、日本の文学者がこぞって「文学の教科書」だと絶賛したトルストイの「アンナ・カレーニナ」、そして、星の数ほど映画や文学の題材にされた戦争未亡人…
男をよろめきつつも、男をよろめかせる、悪い人。日本男児の(二次元の)人妻好きは、今も昔も変わらないことを、この事実が証明している。



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