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夜行バス乗ってどこまで行こう。フランク・キャプラの「或る夜の出来事」。

ようやっと、高速バスに乗って旅しても良い(かに見える)ご時世になった。

夜行バスの旅のロマンを、スクリューボールコメディの中で描いたクラシック映画が、1934年製作、フランク・キャプラ監督「或る夜の出来事」だろう。
原作が「Night Bus」という名の小説である通り
夜行バスにヒロインが乗り込むところから、物語は始まる。

『或る夜の出来事』『IT HAPPENED ONE NIGHT』これは、フランク・キャプラの監督です。

もうアメリカの最もアメリカらしい作品です。そうして出ているのがクラーク・ゲーブルとクローデット・コルベールですね。まあ今でこそ、どちらもよくオールドファンの方ご存知でしょうけどクラーク・ゲーブルいう人はそれまでずっと悪漢役、ギャングの役、そういう役やっていたんですね。
今度初めてコメディをやると言うのでゲーブルがこれでコメディやるのかと評判になった作品であります。これはフランク・キャプラと言うアメリカのムード溢れさせる監督が作っておりまして、話はまあお金持ちのお譲ちゃんがわがままでわがままで。そういうお譲ちゃんがまあお父さんがこの人と結婚しろと言うので嫌で家出して。そのお金持ちのお譲ちゃんが家出したと言う事件が、まあ新聞記者が評判になってみんな追っかける、追っかける、追っかける中でゲーブルが新聞記者で、追っかけて行く様なそういう確かストーリーですね。

IVC公式サイト(淀川長治世界クラシック名画撰集)から引用

以上、あらすじ・キャストが非常に分かりやすい淀川長治の名調子・名解説。
いやはや、エネルギッシュな映画だなあ、とおもった貴方は、正しい!
なにせこの物語、許嫁との結婚に反発したお嬢ちゃん・エリー(演:クローデット・コルベール)が、ヨットから海へとダイブし脱出する力技から、始まるのだから。

ニューヨークに向かうグレイハウンドの夜行バスに乗り込むエリー。そこに乗り合わせたのが、上司とウマが合わず失業中の新聞記者ピーター(演:クラーク・ゲーブル)。ほんの些細な勘違いから二人は座席を争って大げんか、互いの第一印象は「最悪」で始まる。


さて、当時のバスというものは「とりあえず座れりゃ良い」代物だ。
硬い椅子に硬い背もたれ。リクライニングもない。ただでさえ眠りにくい上、エリーの隣に座った男はいびきをかいて、一睡すらできやしない。
なので、最後尾の席、ピーターの横にどんと座る。いつしか彼の肩にもたれかかって寝入ってしまう。
ピーターもあくどくない、粋な男だ。優しく、肩を貸してやる。

エリーがゴシップ欄をにぎわせている令嬢だと気付いたピーターはスクープを狙うが、2人を乗せたバスは大雨で立ち往生、エリーとピーターは乏しい持ち金をやりくりして、新婚夫婦と偽って安宿の一室に泊まることになる羽目に。
その一室で、本作の代名詞となった、男女のスペースを間仕切りする「ジェリコの壁」が現れる。これだ。
雨夜の仮の宿で、毛布一枚の壁を隔てて、ふたりは舌戦を交えることとなる。

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未婚の男女にベッドを共にさせてはいけない、という当時の自主規制を逆手に取った演出だ。

翌朝も、ふたりのあてのない旅は続く。それぞれ気の強い金持ち娘と新聞記者の掛け合いは旅の途上延々続き、気持ちが近付いたりまた遠ざかったりを繰り返し、最後は、金よりも恋という主張に理解ある父性愛に救われる。
どうってことない話なのだが、観終わった後に感じる、ほくほくとした多幸感は
汚れっちまった悲しみなど、何ひとつない暖かさに溢れている。
どこにも、あくどいところやうるさいところがなくて上へ上へと盛り上がっていく、洗練された完成度の高いラブコメディだ。


なお、本作、ゲーブルが肌着を着けず にワイシャツを着ていることから、全米でこのスタイルが大流 行。
肌着の売上が前年比で半減し、製作のコロンビア社は、肌着メーカーから訴えられたという微笑ましい?エピソードがある。
もちろん、全編出ずっぱりのグレイハウンドバスの知名度とイメージが大幅にアップしたのは、言うまでもない。

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※本記事の画像はCriterion公式サイトから引用しました。

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