"惨めでも疲れ果ててもいないのだな、私の若いころと違って。"_"Breaking Away"
日本では「ヤング・ゼネレーション」という絶妙にダサい邦題で公開された1979年のアメリカ映画「Breaking Away」より。インディアナ大学の学生たちが自転車競技に情熱を燃やす姿を描いている。監督は「ブリット」で当時絶頂のスティーブ・マックイーンを主役に、ロケ撮影で映画史上最高と言われるカーアクションを演出したピーター・イェーツ。
ピクサーの「カーズ」原語版において1942年型ウィリスMB、退役軍車のサージ役を演じたポール・ドゥーリイが、仕事に家庭にもほとほと疲れ果てたデイヴの頑固な親父を演じている。そんな彼が、溌剌と自転車に打ち込むデイヴの姿を見て、ふと漏らした「若さへの憧れ」のため息から、引用。
この台詞の裏側には、かつてストーン・カッターを仕事としていた時にぴりりと感じた苦い挫折がまぶされている。
だからこの親父、自分が若い頃はそうじゃなかったからと、最初はデイブの最大の反対者、それが終盤にはデイブの最大の理解者になる。デイブが頻出したトラブルの前に挫けそうになった時、その背中をぐいと押すのだ。
ともあれ、基本あらすじは、周囲との断絶から和解を得て、若者が未来に向けて一歩踏み出して終わる、典型的なサクセスストーリー。一歩間違えれば80年代的甘々なティーンエイジものになりそうなところ、そこはイェーツの演出、自転車競技の硬質な描写、エッジの利いたスピード感で押して押す。とりあえず、
を(漱石の意に反して)文字額面通り受け取った時に解釈できるであろう、自転車を駆る競技のだいご味そのものも、描かれていると言ってよい。
「ロッキー」や「ロンゲスト・ヤード」などアウトローが現況を脱するためにスポーツに打ち込んだ70年代ニューシネマの時代から、青春最中の若者が自己の殻を破るために打ち込む「スポーツ映画」のジャンルのはしり、と言ってもよい本作。ぜひご覧あれ。
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