“君が感じたままを歌うんだ。人々はそういう歌を聴きたいと思い、そういう歌で救われるんだ。”_”Walk the Line”(2005)
ホアキン・フェニックスが吹き替えなしの歌を披露し主演するカントリー・ミュージック歌手Johnny Cashの伝記映画「ウォーク・ザ・ライン 君へと続く道」より。原題の'Walk the Line'は、Johnny Cashのヒット曲'I Walk the Line'から取られている。
1955年テネシー州Memphis(メンフィス)。Johnny Cashは既に一児のパパ。軍を除隊後、家庭用品のセールスマンとして訪問販売をするが、うまくいかない。ベーシストと電気ギターを弾く二人の友人とバンドを結成して、歌の練習をしていたが、ある日、レコーディング・スタジオを見かけ、オーディションを受けさせてくれと頼む。かのエルヴィス・プレスリー(1954年デビュー)を最初に売り出したロックン・ロールの震源地:サン・レコードだ。
オーディションでJohnny Cashたちは、ゴスペル・ソングを歌って聞かせる。スタジオ社長にしてプロデューサーのSam Phillips(演:ダラス・ロバーツ)は「そういう曲は売れない。売れないものをレコードにしても仕方がない」と告げる。
「このままでは帰れない」と食い下がるJohnny Cashに、Phillipsが告げる言葉より。
君が死ぬ間際に一曲だけ歌えるとしたら、何を歌う?
神様が『ああ、この男は地球上にいる間、そんな風に感じていたのか』と思い、(世界から見ても)君の人生が凝縮されている、歌だ。
他とは違っていて、真に迫っている、君が感じたままを歌うんだ。
人々はそういう歌を聴きたいと思い、そういう歌で救われるんだ。
それは神を信じることとは関係ないんだ、キャッシュさん。自分の生き方を信じることにつながってるんだ。
と。
Johnny Cashは空軍時代に作ったフォルサム刑務所の囚人の気持を歌った曲を演奏する。 曲は”Folsom Prison Blues”。
その内容に感じ入ったSam Phillipsは、その曲をレコードにする。
全ての始まりだった。
ここからJohnny Cashの栄光、ロマンス、薬物中毒、転落、カムバックのドラマが丹念に描かれる。日本での知名度が薄いシンガーなので、人にとっては退屈に感じられるかもしれない。
それでも、
ホアキン・フェニックスが父親から愛されない切なさ、最初の妻から理解されないやるせなさ、後に第二の妻となる人を愛し一直線に突き進む素直さ、切れると暴れまくる荒々しさなど、さまざまな感情表現を幅広くこなしていて、彼の演技だけで十分お釣りのくる、力作だ。
この記事が参加している募集
この映画の話は面白かったでしょうか?気に入っていただけた場合はぜひ「スキ」をお願いします!