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「統計学アレルギー」も、今の時代じゃ笑い話。「常識」に楯突くブラピの姿に、喝采挙げろ。それが「マネーボール」。

ポン・ジュノ、韓国映画、そしてアジア映画、ここにあり。
の結果に終わった第92回アカデミー賞であった。日本映画も続かなくちゃ。


さて、今回、助演男優賞を受賞したのが「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のブラッド・ピット
「ムーンライト」「マネー・ショート 華麗なる大逆転」「それでも夜は明ける」等この数年間自ら製作した作品は確かに賞レースを賑わしていたが、純粋に自身の出演だけで賞レースに加わったのはずいぶん久しぶりのことになる。
そして、男優賞獲得は本人にとって念願叶ったり、である。(さぞ嬉しかろう)


それ以前、最後に彼の出演作がノミネートされたのは、いつのことだったか…
調べてみたら「マネーボール 」(2011年のアカデミー主演男優賞にノミネート)だった。

野球に「統計学」(セイバーメトリクス)を取り入れる、公開当時(2011年)には斬新かつ物議を醸したテーマも、データサイエンスが日常用語と化した現在では、物珍しくはなくなった。
本作をこれからも語り継ぐ余地があるとすれば、それは役者の快演
特にブラッド・ピットとフィリップ・シーモア・ホフマンの演技合戦に他ならないだろう。

ブラッド・ピット主演×『ソーシャル・ネットワーク』のタッグで贈る。メジャーリーグの常識を覆した、これは、真実の物語。選手からフロントに転身し、若くしてメジャーリーグ球団アスレチックスのゼネラルマネージャーとなったビリー・ビーンは、自分のチームの試合も観なければ、腹が立てば人やモノに当たり散らす短気で風変わりな男。ある時、ビリーは、イエール大学経済学部卒のピーターと出会い、彼が主張するデータ重視の運営論に、貧乏球団が勝つための突破口を見出し、周囲の反対を押し切って、後に“マネーボール理論”と呼ばれる戦略を実践していく。当初は理論が活きずに周囲から馬鹿にされるが、ビリーの熱い信念と、挑戦することへの勇気が、誰も予想することの出来なかった奇跡を起こす!!
【スタッフ】
監督:ベネット・ミラー
製作:マイケル・デ・ルカ、レイチェル・ホロヴィッツ、ブラッド・ピット
原作:マイケル・ルイス
脚色:スティーブン・ザイリアン、アーロン・ソーキン
【キャスト】
ビリー・ビーン:ブラッド・ピット(東地宏樹)
ピーター・ブランド:ジョナ・ヒル(桜井敏治)
アート・ハウ監督:フィリップ・シーモア・ホフマン(石住昭彦)
シャロン:ロビン・ライト(田中敦子)

ソニー・ピクチャーズ公式サイトより引用

悪人?それがブラッド・ピット。


ブラッド・ピットが常にキレッ放しの映画だ:アスレチックスのGMという立場を通して閉鎖的な野球界を変革せんとする、野望でアブラぎった男を演じる。
気弱な天才:ジョナ・ヒルを片腕に、野球の世界の秩序を崩そうとする。
壁にぶつかっても、へこたれることなく、執念深くその壁を除こうとする。
誰かが嫉み悪く言えば言うほど、却って、彼は自分のやり方に拘るようになる。

やがて彼はメジャーリーグに広がる燎原の火、止まることを知らない炎となる。
「金も出すが口も出す」太い精神で、GMとして「本来望ましい」職掌を越え、
試合の度に選手の起用から登板のタイミングに至るまでこと細かく指示し、
現場を引っ掻き回す。 

現場を担うベテラン選手や監督から見れば、間違いなく聖域を犯す「悪人」だ。
だけど成果は出ている:だから、ますます憎まれる。

善人?それがフィリップ・シーモア・ホフマン。


この「悪人」に対し、現場責任者であるアート・ハウ監督=フィリップ・シーモア・ホフマンだけは真っ向から異議を唱える。「偏屈者」と「頑固一徹」が見てくれからしてこれ程まで似合う役者がいるだろうか。

長年にわたって戦い続けてきたベテラン下士官の様なカンロク。
ために、彼がこねる屁理屈すら、何か理論を超越した説得力を帯びてくる。


GMと監督の意見は、いつまでたっても平行線を保つ:交わることはない。
単純化すれば「凡人」「天才」かの二元論、対立の構図なのだが、
いつしかそれは、GMと監督の間のただの意見の相違を超えて、「人間か科学か」二元論の激しい思想上の戦いの様相を帯びてくる。
「思想の戦い」
を目撃するためだけに、見ておいて損はない映画だ。
もちろん、いつ・どの組織にも存在する「現場と管理職の対立の構図」を見出すことも可能。


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