"1899年、ニューヨークの街は新聞売りの声で響き渡っていた…"_"Newsies"(1992)
若かりしChristian Bale(1975-)が主演した1992年のディズニー製ミュージカル映画「Newsies(ニュージーズ)」より。
この映画は、1899年にニューヨークで起こった実際の出来事に基づいており、ニューヨーク・ワールド紙とニューヨーク・ジャーナル紙のティーンエイジがその役を担った販売員("newsies")が、待遇、とくに賃金を改善しようとストライキを起こす様子を描いている。
「ディズニー・ルネサンス」の旗手アラン・メンケンの音楽とジャック・フェルドマンの歌詞で構成された楽曲が特徴的だ。公開から20年が経った後に舞台化が行われた事実からも、そのクオリティの高さがうかがえるだろう。
なんといっても冒頭の
の語りから、僕たちは19世紀末のニューヨーク・シティに引きずり込まれる。
当時、子どもの権利は先進国:アメリカですら鼻で笑うようなものだった。安い労働力として、親なしホームレスの子供たちが使われるのは、さも当然のことであった。史実通り、ロバート・デュヴァル演じる『ニューヨーク・ワールド』発行人:ジョーゼフ・ピューリツァーはいかに多くの枚数の新聞を売るか、にしか関心がない、銭ゲバ。
歩合制の給料故、新聞の束を少しでも自分のものにせんと、印刷工場の前に群がるニュージーズ。束を掴んでは、道行く人に売りつけようと鈴を鳴らし声を張り上げるニュージーズの姿。されど非情な薄給ゆえ働けど働けど楽にならざるわが暮らしを自嘲するニュージーズの唄("Carrying the Banner")。
のちの1904年に、「国際女性デー」の起源となる婦人参政権を求めたデモが発生したように、何か下から突き上げようとするこぶしのようなもの、変革のきざしというものが生まれる余地のあるエネルギーのるつぼ。
果たして、些細なきっかけから、17歳のジャック"カウボーイ"ケリー(クリスチャン・ベール)を中心とするストライキの声は上がり、それは一つの唄となって結実する("The World Will Know")。
もちろん、ストライキで世直しが果たせるのであれば、それこそ世の労働者は皆が皆、ストライキに勤しんでいる。
ストライキのリーダーとして担ぎ上げられたケリーは、新聞社上層部からの懐柔、怒れる仲間たち(the angry, young man)からの突き上げの間で板挟み。17歳にして早くも大人としての立場を引き受けざるを得ず、のちにベール自身がブルース・ウェインとして直面した問題:力そのものの追求ではなく、力を有することへの諸々の責任にぶつかり、疲弊していく。
大人が子供にふるう暴力もまだまだ容赦のなかった時代。
若者たちが団結して正義を求めるというテーマ、メンケンとフェルドマンによるキャッチーな楽曲に反して、物語は比較的シリアス。
だからこそ最後にニュージーズによって高らかに唄いあげられる勝利:The World Will Know とCarrying the Banner は第九よろしく、歓喜に溢れているのだ。
しかし、本作における最大のサプライズ・ゲストは、第33代 ニューヨーク州知事セオドア・ルーズベルト翁の登場だろう。ストライキの話を聞くや、ニュージーズ側を応援し悪徳新聞社に物申す物分かりの良い、鼻の上にかけている眼鏡が印象的な穏やかそうなオッサン…もとい、代議士としての登場だ。
劇中の時間軸の2年後の1901年に大統領の覇権を獲得、内政では労働運動に歩み寄り、ポーツマス条約の仲介に尽力したことから当時日本ではワシントンやリンカーンに次ぐ偉人として高名を謳われ、他方で棍棒外交によって中南米に悪名を轟かせるのは、またべつの話。
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