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お米

 佐野くんがいつものペースで、台所からゆっくりとベッドのそばへやってきた。
お米の入ったビニール袋を持っていた。
 いきなり、彼はぼくの胸に乗せた。
あの重さはなかなかのインパクトだった。

 「あと二~三日分ですかねぇ」
いつもの低音だった。
 すごいヤツだなぁと感心してしまった。
物忘れがひどくなったぼくに、最高の対策だった。
 体感を活かせば、そう簡単に記憶からは離れないだろう。

 いまのところ、生活全般の金銭管理と必要なものの購入は、ぼく自身にまかされている。
 ただ、勘違いや物忘れは増えるばかりで、なにか手立てを講じなければとアレコレ考えはじめていたところだった。
 体感や視覚を活かせば、憶えやすくなりそうだ。
ちょっと面倒くさいけれど、「見る」、「感じる」を最大限に役立てていこうと思った。

 佐野くん、機転を利かせてくれてありがとう。

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