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木蓮の花開くころ

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ここでは、かっこよくない障害者のぼくの半生を語ります。そこで出逢った友人はかけがえのない財産です。
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#古武術介護

春を待つ手紙

 政治に携わる人の演説を聴いて、投票したい気持ちに駆られたことがあまりない。 思想をこえ…

アルコール物語

 ブーが残念がって、ぼくのアタマをポンと叩いた。 「せっかく、ぼくはやっさんがいちばんに…

間(ま)

 ぼくの中で親友と呼べる三人のうちのひとり「中村ブー」が、妙にしみじみと言ったことがある…

投げかける

 あの日、ぼくは扇町公園での集会に参加していた。 山にかこまれた施設で、生涯を過ごすつも…

もし…

 サポーター(ヘルパー)さんが食器を洗いに行った途端、鼻の脇が痒くななることがある。呼び…

ぼくの日常

 サポーター(ヘルパー)のAさんは、ごはんを冷凍するときにラップでくるんだほうがいいとい…

逆さ読み

 今日、手のひらに装着するタイプのワンキースイッチを使って、初めてひとりで本を読もうと思った。 これまでサポーター(ヘルパー)さんにパソコンの操作をお願いしてきたとはいえ、カーソルの動きを目で追っているから、電子書籍を開けてページをめくるぐらいはなんとかできるはずだった。  だいぶ脚色が入ってしまった。 最初、ワンキースイッチを使うためのこまごまとしたパーツが揃い、お試しでネットを検索したり、電子書籍のページをめくったりしようと思ったら、カタカナには変換してあるものの、意味

雨男

 ぼくが電動車いすで歩かなければならない予定が入ると、太陽が顔を見せた日はあまり記憶にな…

あまたろう

 裏庭の山茶花は、雪の重みで傾いていた。  祖母が白いビニール紐で塀に結わいつけて、よう…

そんなこともありました

 あの日、ぼくは養護学校の教室で、M先生に給食を介助してもらっていました。  野菜スープだ…

言いわけ、疲れ、ノスタルジー

 ほぼ毎日、つづけていたnoteへの投稿が一日あいてしまった。 文章の長短にはかかわりな…

犬小屋にて

 ふたりとも、ずいぶん酔っぱらっていた。 住宅街のこじんまりとした焼肉屋で、好物の塩タン…

たんぽぽサラダ

 その焼き肉屋に店名はなかった。    夏の夕方だった。  役所での会議の帰り、たまらなく…

 忘れられない色がある。 よく磨かれた黒板の深緑だ。  たったひとりの教室。 まだ誰の手によっても、ひとつの文字も、一本の線すら描かれていない黒板の前に、ぼくは座っていた。  幼いころから憧れてきたこれが学校か。 これから何人の友だちができるだろうか。  英語はほかの友だちと同じスタートラインに立つから、絶対に負けられないぞ。 数学は九九ぐらいしかできないけど、ちゃんと教えてもらえるかな。  国語はたくさん本を読んでいたから、うまくついていけるだろうな。 理科はどんな