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読書231230「鉄のカーテンをこじあけろ」

これは冷戦が終わる時、ポーランドのスパイとCIAがどのように連携したかとその後について、取材をもとに書かれた本。あの頃をリアルタイムで覚えている世代としては本当に興味深かったです。

冷戦時代もその前の大戦、そしてエカテリーナの時代からドイツとロシア(ソ連)に挟まれたポーランドは、常に他国から領土に踏み込まれる危険を抱えた挟まれた国だった。その歴史は今のウクライナと似ている。その結果、冷戦末期ポーランドのスパイはとてもとても優秀だったそうだ。

冷戦終結に向かう流れをキャッチすると、ポーランドが最も心配したのはソ連が直接EUと話を進めること。なぜならその時ポーランドはドイツとの間に明確ではない国境問題を抱えていたからだった。

ポーランドの判断は早く、また米国の判断もはやかったようだ。最初は米国からのアプローチだったようだが、二つの国のスパイは組むことにした。

そしてその直後におきたイラクのクェート侵攻。なんとCIAを含めた米国の軍関係者が大使館にいてイラクに置き去りになってしまった。彼らを命懸けでポーランドのスパイが救出する。クライマックスはイラク国境。せっかく偽造パスポートでポーランド人にみせかけたのにポーランド語で自分の名前すら言えない米国人スパイに、ウオッカを飲ませて酔っ払いにし審査官と特段やりとりなく出国させたという機転。それはどんなスパイ映画も三流に見えるほどだ。ポーランドは90年代のはじめまでふたつの顔があり、東側の国として米国が入れない国に出入りでき、ずいぶん米国を助けたようだ。

しかし冷戦後の米国はどんどん戦略が下手になっていく。イラクのことも、ポーランドのスパイはずいぶん警告したそうだ。

逆にNATOにポーランドが入流という議論になった時、NATOのボーダーがそんなにロシアに近づくことに米国内は反対の意見もあったようだ。そしてその判断が今日のウクライナの問題までに続くのかもしれない。

米国とポーランドの中はトランプまできて破壊的になったようだ。

1989年は学校で習ったばかりの地図が書き変わる始まりだったが、結果はその時思い描いたものではなく、世の中にはどんどん新しい壁ができている。

おすすめの一冊です

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