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(3日目)真っ白な気持ちでビートルズのアルバムを1日1枚づつ聞いた感想

3日目 いよいよ「ハード・デイズ・ナイト」(1964年7月)

100年後に宇宙人が聞いても「はい、これ売れるね!」と言うに違いないレノン=マッカートニー名義のヒット曲が並びます。

私もビートルズといえばこのアルバムがベストと思ってました。
商品としてのバンドの完成がここにあり、「また当然ヒットするやつだよね」的な世間のオーダーの中完成させた三枚目。
制約ある中での商業エンターテインメントの難しさと面白さを感じます。

ここまで一枚め、二枚めと聞いてきて、ビートルズはロックンロールとR&Bがベースというのは分かりました。

だったら本来は『かっこよさ、背伸び、怒り、反抗、挫折』という方向性を発揮していくはずです(同じイギリスでもロンドン出身のローリングストーンズやキンクスなど多くはそっち志向で成功しています)。

でも初期ビートルズは、キャラクターとして逆のベクトル『親しみやすさ、若さ、健全さ、希望』が強調されています。これはマネージャーのエプスタインが狙ってしたことなのか、「自分たちの未来はこっちにある」と売れる為に道を選んだのか、ビートルズは解散まで、この両面を持っていると思うので、バンド誕生時から宿していたものかと思います。
 デビュー3枚のアルバムのとんでもない売れ方を見ると、普段アルバム買わなかった人たちまで買ったに違いなく(日本の記録『およげたいやきくん』のように)、同時代の同世代が欲していたけど今まで無かったもの、「こういうの欲しかった」と言う需要に超マッチしたに違いありません。

というような、資料に基づかない推測もありながら、中身の印象に移ります。

映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』(これもなんというタイトルなのか)のサントラを兼ねたアルバムで、A面1曲目「ア・ハード・デイズ・ナイト」。開始1秒で世界観作ります。
歌詞は「キツい仕事だったけど、君に会うと癒やされる」という世界で、日常的でありふれたガテン系テーマですが、それをこんなドラマチックな感じの曲にして歌うバンドって他にいないと思いました。(日本では80年代のユニコーンと、森高千里がヒットさせたカーネーションの曲『夜の煙突』ぐらいしか思いつかない)

労働と恋愛はすごく大きなテーマだけど、なかなか一緒に歌って成功しない。恋愛はロマンティックで無限拡大イマジネーション一発逆転の夢がある(別れたり結婚すると現実だが)。一方仕事は現実的で個別問題。収入が生活クラスを規定し、勤務が時間を制限する。恋愛の敵で家に帰って考えたくない問題。

そこで「ア・ハード・デイズ・ナイト」。ジョン・レノンの熱い訴えはどこに向かっているのか?よく「この時代のビートルズはとにかくめちゃくちゃに忙しくてその不満を歌った」とか言われますが、それでこんな変化のあるメロディ作るだろうか? 時代としてイギリスの労働事情と当時の労働党政権の矛盾点が根っこにあるはずで、この考えたくない問題を弾んだ曲で無理やりラブソングでぶつけているように思えます。

A面ラストが「キャント・バイ・ミー・ラヴ」でポールの歌です。
歌詞は「愛はお金じゃ買えないよ」とベタなテーマで、これもネット等で読むと「ジョンとポールの考え方の違い」とか書かれていますが、イギリスで1年間ずっと1位を取るアルバム作るようなヒットメーカーが、そんなメッセージを曲に込めようなんてこと考えていないと思います。 

ビートルズは歌詞に深い意味や哲学込めたって庶民は喜ばないことをよく知っていたと思います。
実際、皆な金で困っていて考えたくない問題を、逆説的にラブソングにして「どう?」と打ち出したと私は思います(こればっかりですが)。
そこをプレスリーのようにストレートに甘くぶつけるんじゃなくて、否定や仮定で屈折させて歌ってるのがビートルズの皮肉とユーモアだと思います。(本当に独自解釈でビートルズ研究者は怒るかもしれませんが)
こんだけ歌詞に「BUY」や「MONEY」って単語が、ノリノリで出てくる曲は歌っていて痛快だったと思います。
 
このアルバム両面合わせて13曲でぎり30分越えという短さです、食い足りなさと「余力まだまだあるんでしょ」と思わせるパワー感じます。

ジョンがシャウトした時の儚げさ、ポールの低音から高音へ移る声の甘さ。ジョージを入れた三人の美しいコーラスが完成し、珠玉のポップチューンが一杯詰まってます。
改めて50年以上経っていても古く感じない曲には、聞いている歌詞やメロディだけではない、半歩先を訴えかける謎の成分が歌にあると思いました。

「急にこの結論なに?」って思うでしょうが、長く残るヒット曲に共通するけど言葉にしにくい、誰もが聞いてすぐ分かる「アレなやつ」としか言いようがないです。

(つづく)


こういうのも書いてます。軽い食感で胃に負担のないデザートにピッタリのキャラミスです。




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