見出し画像

割合でつまずいている子に一発で理解させる方法を考えてみる

中学受験の算数において、最も重要な単元の一つと言われているのが「割合」です。
 
そしてこの「割合」でつまずいているお子さんが非常に多いという現実もあります。
 
割合でつまずいているという お子さんを僕が教える時、 あるいは 初めて 割合を学習するお子さんに伝えるようにしていることを書きたいと思います。
 
割合の学習では
 
比べる量
もとになる量
割合

 
この3つの言葉が出てきます。
 
これらの言葉が意味することをどれだけしっかり把握できているかが理解のポイントと考えられるのですが、 ここを乗り越えさせるのが非常に困難なんです。
 
「元にする量を1と考えた場合に、比べる量がどれぐらいにあたるかを表すのが割合」
 
こんなことをいくら説明しても、子どもには響きません。
 
むしろ
「この先生の授業、全然わからんわ〜」
と、ダメ講師の烙印を押されかねません。。。
 
だから僕は子どもたちにこう 伝えます。
 
「もとになる量とか比べる量とか、そういった言葉はどうでもいいので、 これだけ覚えておいて。 割合 っていうのは『何倍なのか』ってことなんだ。」
 
『何倍』という言葉は子どもたちにもおなじみで、すぐに納得してくれます。
 
そこでいくつか即席で問題を作り、 子どもたちに解いてもらいます。
 
「350円の20%は?」
 
この20%( 0.2)が「割合」だということはすぐに分かってくれるのですが、 ここで「もとになる量」とか「比べる量」と言っても混乱するだけです。
 
もちろん、下記のような公式(?)をここで伝えても、言葉の定義があやふやな段階ですから、あまり意味がありません。


もとになる量 × 割合 = 比べる量
比べる量 ÷ もとになる量 = 割合
比べる量 ÷ 割合 = もとになる量

 
意味がない、というより「これに当てはめさえすれば答えが出る」というメッセージを子どもに伝えることになりかねず、かえって理解を妨げるケースが多いと思っています。
 
だから
 
「20%っていうのが 割合で、 つまり 0.2倍ってことなんだね。」
 
つまり「350円の20%は?」というのは「350円の0.2倍は?」と聞かれているのと同じことだと教えるのです。
 
これなら簡単に子どもたちは対応できます。
 
「700円の30%は?」→「700 × 0.3 = 210円」
「1200円の2割5分は?」→「1200 × 0.25 = 400円」
 
このような問題で ウォーミングアップしたら次に
 
「□円の30%が150円です」
 
といった問題にステップアップします。
 
とにかくかけ算の式に「読み替える」ことができるようになっているので
 
□ × 0.3 = 150
 
という 式が立てられますね。
これを逆算すればいいわけです。
 
150 ÷ 0.3 = 500
 
こういう風に「 何倍」と読み替えて式を立てる練習をしていくと「元になる量」「 比べる量」という言葉を教えなくても、どんどん問題を解いていけます。
 
「言葉の定義をしっかりと理解させる必要があるのでは」 という意見もあると思うのですが、 そこに注力するあまり「割合がわからない子」を量産している事例、残念ながらほんとうに多いです。
 
だから 順序を逆にしたんです。
 
上記のような方法でどんどん問題が解けるようになったお子さんに、改めて「元になっている量はどっちだと思う?」「比べる量はどっち?」と質問すると、ほぼ間違いなく 正解が返ってきます。
 
体感的に習得させてから 理屈を後からインストール、という手順で導いてあげた方が、子どもに無駄な挫折感を与えることなく割合をマスターさせてあげられることに気がついたのです。
 
体感的に習得してどんどん問題を解いていく中で「元の数に1より小さい数をかけたら、元の数よりも小さい答えが出てくる」といったことも「当たり前のこと」として腑に落ちていきます。
 
ここまでたどり着かせてあげれば
 
「1500円を1とした場合、300円はどれだけにあたりますか」
 
という意地悪(子どもたちはそう感じるようです)な問題にもなんとか対応できるようになっています。
 
「1500円を1とした場合、300円はどれだけ(ここが割合)?
 
と聞かれているので「300円は何倍?」と聞かれているのだとわかりますね。
 
「何の何倍?」の「何の」はもちろん、「1500円の」ですから
 
「300円は1500円の何倍?」
 
ということになり、
 
300 ÷ 1500 = 0.2
 
と計算できます。
 
下記のように書き出して比べてみてもいいですね。


算数が苦手な子に多く見られるのが「とにかく大きな数字を小さな数字で割る」という傾向ですが(小さな数字を大きな数字で割ることに抵抗を感じるようです)、この「何倍」という意識で問題に取り組んでいくことで、そのような間違いもなくなっていきます。
 
 
割合がわからない、子どもがつまずいている、という方は是非一度試してみていただければと思います。
 
 
上記の「とにかく大きな数字を小さな数字で割る」傾向の原因の1つとして「小数や分数の計算になると間違いそう」という意識も大きいようですから、計算練習もがんばらせてあげてくださいね。


理系が得意になる子の育て方 西村則康 、 辻󠄀義夫
WEDGE

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?