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宮藤官九郎(6) クドカンドラマの女性観 | 成馬零一

ドラマ評論家の成馬零一さんが、90年代から00年代のテレビドラマを論じる『テレビドラマクロニクル(1995→2010)』。『木更津キャッツアイ』をはじめ、男性を中心としたコミュニティの描写を得意とする宮藤官九郎は、ある時期まで、恋愛に対しては非常に冷めた視線を向けていました。今回は初期のクドカンドラマが女性をどのように描いてきたかを振り返ります。

テレビドラマクロニクル1995→2010
宮藤官九郎(6) クドカンドラマの女性観 成馬零一

 恋人よりも仲間といる時の男子校的な「わちゃわちゃ感」の方が楽しそうに描かれるクドカンドラマだが、では彼の作品において女性はどのように描かれてきたのだろうか?

 宮藤と連続ドラマを作り続けているTBSの磯山晶プロデューサーだが、彼女がはじめて宮藤を脚本家として起用したのが、1999年の『親ゆび姫』である。

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▲『親ゆび姫』

 本作は、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話「親指姫」を現代的なホラーに読み替えた作品だ。
 
 女子高生の町田冴子(栗山千明)は同級生の君島祐一(高橋一生)に片思いをしていたが、なかなか気持ちを打ち明けられずにいた。ある日、冴子は公園で知り合った化粧をした謎の男から「恋のお守り」として赤い液体を手渡される。覚悟を決めて、祐一に告白する冴子。しかし祐一は、今は誰とも付き合う気がないと言って断ってしまう。
「これを振りかければアナタの思い通りになるの」
 男の言葉を思い出した冴子は衝動的に赤い液体を祐一にかける。祐一の身長は4センチの人形ぐらいの大きさに縮んでしまう。

 小さくなった祐一を冴子は家に連れて帰る。『親指姫』というよりは内田春菊の漫画『南くんの恋人』(青林工藝舎)の男女逆バージョンとでも言うようなドラマである。
 過去に何度もアイドル女優主演でドラマ化された『南くんの恋人』が、思春期の少年少女にとっての甘酸っぱい願望を描いた(小さくなった女の子と少年がいっしょに暮す)秘密の同居モノだったのに対し、『親ゆび姫』は甘酸っぱさが皆無で、宮藤が書くとここまでおぞましいものに変わるのかという話に読み替えられていた。

 小さくなった祐一に責任を感じ必死で世話しようとする冴子。祐一が好きなお菓子やジュース雑誌を買って目の前に置くのだが、祐一は彼女に冷たい。

冴子「(ドクター・ペッパーをスポイトで吸いながら)フフフ、ワタシ、祐一くんの事、なんでも知ってるんです。寝る時はジャージにタンクトップ、中学の時はバスケ部で、遠征にいくバスでモノマネやってたんでしょ? 好きな映画は『アルマゲドン』で、ヒップホップが好きで、モーニング娘。では鼻ピアスの子が好きで、サングラスかけてアダルトビデオ借りにいって、門脇先生に見つかって、あとそれから……」
祐一「やめろよ!」
冴子「……え?」
祐一「……言ったよね? おれ、アンタの事なんとも思ってないの。だから、こんな事されても、不愉快なだけなの」
冴子「……ごめんなさい(目に涙ためる)」
祐一「だから困るんだよね、泣かれても」
(著・宮藤官九郎『宮藤官九郎シナリオ集 親ゆび姫×占っちゃうぞ♡』角川書店)

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