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タバコ【詩】

 自分にとってたいせつな場所は、だれかにとってはなんの変哲もない場所だったりもするだろう。それでいい。

 飾らず普段着のまま、やわらかな日の光につつまれて、海へ。

 海藻とりをする家族連れを横目に、邪魔にならないところでタバコを焚きつける。吐き出した煙は、青すぎる空へと消えていった。

 ぼくはタバコみたいだ。

 短い時間必死に自分を燃やして、ゴミを出し、煙をあげつつ空に消える。やがて風になり空気に溶け、雲となり雨となってふたたび大地へと還る。

 そこには生産性などなく、堕落した一生がある。

 こころという場所の所在とか、生きることの意味とか、そんなことはどうだっていい。ただ見て、聴いて、嗅いで、触って味わえればいい。

 なにを? 人生を。

 つかめないその実態はだれかの見ている夢かもしれない。

 タバコはいい。人生を豊かにする。あるときは思索の血判を押す決心に、あるときは飽きない哲学の箸休めに。たかが数分。されど数分。これがあたえてくれるものは、なににも代えがたい。

 それが、ぼくにとってたいせつな場所。

 他人がみたらなんの変哲もない時間。

 火が消えたら、灰皿にいぶして、肩で風を切って殺生しよう。

 こころに灯った青い炎は、明日の食い扶ちのために、静かに、大切に、消えないように。


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