【Marche Interview #04】人との出会いを楽しむ場所として/富山県のお米農家、濱田律子さん(濱田ファーム)
インタビュー4人目は、ヒルズマルシェに2011年から出店し続けてくれている、富山県黒部市でお米の生産をしている濱田ファームの濱田律子さんにお話を伺いました。
濱田ファームさんは、稲作農家として新規就農し、消費者への直販がメインで販売。マルシェへは、稲の収穫後から田植え前の5か月間の間に月1回、土曜日のヒルズマルシェ、日曜日のFarmers Market @UNUへ出店されています。
販売が難しいお米の販路を東京へ求め、出店へ
ーマルシェに出店をするきっかけを教えてください
マルシェ出店を始めた当時は、農業を初めて5年目くらいで、ホームページでの販売はまだしておらず、ブログを書いていてそこ経由で少しづつ注文が入り始めたぐらいの頃でした。マルシェに出店する前は、生活者の方に販売して反応を見たいと思い、地元の農業祭やイベント等に出店してみたんですけど、地元だとお米農家も多いうえに親戚からもらったりという方も多く、売ることが難しいなと分かり、首都圏へ行って挑戦してみたいという想いがでてきました。ちょうどその頃に東京でマルシェが始まった頃だったのもあり、農家がウェルカムみたいな感じだったので、出てみようと思いました。出店に関しては、実際にいくつかのマルシェを視察してみて、自分たちに合いそうな雰囲気をもつマルシェを選びました。一番最初は代々木で開催されていたアースデーマーケットに2~3回出てみたのですが、その後場所を変えて、今の土日出店のスタイルになりました。
ヒルズマルシェ初出店(2011年1月15日)の様子はこちらをご覧ください
濱田ファームさんのブログ「タンボマスターへの裏道」
最初の頃は、その場でお米を売りたい!という強い気持ちで出店をしていたので、呼び込みはもちろんですが、準備をしていって試食を出したり、チラシの配布なども一生懸命頑張ってやっていました。でも、ブースの前を通るお客さんが、お米と認識したらそのままお店の前を通り過ぎたりされていくことが多く、東京でもお米は売るのが難しい農作物なんだなと勉強になりました。その中でも反応してくれる方は、お米を買おうと思って探している方だったり、「黒部」という地名に反応して足を止めてくれる方だったりすることも分かってきました。そうして少ないですが興味をもって足をとめてくれる方と会話をして交流していくことで、購入につながっていきました。
▼濱田ファームさんの商品陳列の様子
-実際にマルシェで購入してからネット注文へとつながるお客様は多いのですか?
年間5回(10日間)マルシェに出店しますが、恐らくマルシェ会場で購入してからその後にインターネットで注文してくださる方は10名満たないです。ただその10名の方々は一度注文いただくと定期的に注文してくれることが多く、また、その方が実家や友達に贈るなど一人のお客様から広がっていきます。全体での数は少ないけどリピーターになる方は多いですので、そうしたお客様1人1人を大切に対応しています。それでも10年間マルシェに出店していると100人規模になっていくイメージですよね。
▼濱田ファームさんのホームページ(https://www.hamadafarm.com/)
消費者向けの販売の為、人気のブログはもちろん、お米についての情報やマルシェ出店の情報など、お客様が気になる情報がたくさん掲載されています。
出店継続のコツは、「楽しむ」コト
-遠方から長年出店してくれていますが、その理由はなんですか?
出店し続けている理由は、単純に楽しいからです。売上が凄くあがるわけでもないし色々と計算したら赤字になりますが、マルシェという場所が好きで楽しいから出てます。なんで楽しいのかというと、マルシェは買い物をする場所でもあるけども、お客様や出店者、事務局、東京の友達など色々な人がマルシェに集まっていて、出会いの場所でもあり、そしてそこに自分たちがいるということが楽しいです。お米が売れればもちろんもっと楽しいですが、売れなくてもそうした楽しみがあることで出店を続けていると思います。
マルシェに出てくる時は、夜中の2時に起き、2時半出発で7時過ぎに都内に到着となります。マルシェに出店し始めた頃は、「頑張って」販売をしていたので、終わると疲労困憊して大変でしたが、慣れてきてからは力まずにうまく出店が出来るようになり、疲れることが少なくなったので、それも継続的に出店できている理由の1つだと思います。これが、売上をあげることだけが目標になっていたり、毎回疲労困憊になってしまうと、継続できていなかったですね。
田舎で毎日地味な作業を続けている1農家ですが、マルシェに出店することで東京に自分たちが楽しく活動できる居場所あるということは、人生での楽しみの1つです。
「出会い」もマルシェの楽しみ
他の出店者とも、マルシェに出店してなかったら出会うコトが無い方々なので、そうした出会いも嬉しいし、今日(ヒルズマルシェ出店日にインタビュー)なんかもほとんどの出店者を知っているので居心地がいいです。そうした中で、同郷の富山県からの出店者さんとの出会いもありました。隣町(魚津市)の宮本みそ店さんは青山のファーマーズマーケットで初めて出会い、今はとっても仲良くしてます。そのご縁から、うちの黒米を使ってピンク色の甘酒(飲む麹)も生産し売られてますね。
東京のマルシェに地方から出店しているというだけで、その農家さんは何か想いや違いがありますし、チャレンジ精神が違うので、会話していてもとても楽しいです。同じお米農家さんが出ていると、交流することで情報交換にもつながり勉強にもなったりします。
ーネットで購入されているお客様もマルシェに来られますか?
来られますね。お客様も、会ってみたいという気持ちがあると思うし、私たちもどういうお客様なのか知りたいけども、メールのやりとりでは聞けないことを直接会うことで聞けますし、顔を見て声を聞いてと一度でもすればお互いにあっという間に打ち解けます。そうするとその後のやりとりが、その方の顔が見えているのでメールのやり取り含めてとてもスムーズになります。結果としてその後も購入し続けてくれる方が多くなりますし、震災後や天候で品質が下がった時などに、応援の気持ちも含めて買ってくださる方も多いなと思います。
-これまでのお客さまの中で特に印象に残っている方はいますか?
印象深いお客様としては、ヒルズマルシェでのお客様だったのですが、お米を買ってくださっているところから農業に興味を持たれて、何度か田植えや稲刈りで黒部にも来てくださっていた方がいたのですが、数年前に会社を辞めて農業を支援する事業で輸出の仕事を始めた方がいました。人生を狂わせてしまったのではないかと(笑)
他にも大人の方や学生など来てみたいという方を受け入れたことがありますが、そうした出会いや交流なども田舎で地道に農業をしているだけでは会うことが出来ないですよね。
ー出会いという意味では、飲食店などとの出会いや出荷などもありますか?
マルシェ出店で飲食店の方などからお話をいただくことはありますが、量や金額など色々条件も含めて、これまでに良い形での出会いは無かったですね。飲食店の場合、取引するとなるとお米なので年間の必要な量を伺って、その分を確保しておかなければいけないのですが、途中でお店が閉店したり取引が無くなったりして、確保していた分があまり売先を別途確保しなくては行けなかったりと大変なこともあり、難しかったですね。
農家が主役になれる場所へ、気軽に出店へ!
-濱田ファームさんのように、遠方からコンスタントに都内マルシェに出店してくださる農家さんは少ないですが、もし出店してみたいと思っている方がいたらどんなアドバイスをしますか?
私は、時間がかかるから遠いとかっていうのは、あまりハードルだとは思わないです。遠いと決めるのは自分であって、私は富山~東京間はたかだか400㎞であんまり遠いという感覚はないです。ですので、遠いからということで出店に対して構える必要はないかなと思います。
地方と全然違うのが、東京の方は農業や農家に興味を持ってくれる方が多いです。田舎にいると周りに農家が多いし、農業は大変でしょうと言われてしまうのに、東京のマルシェでは農家が主役になれる場所です。マルシェの場に限らないとおもうんですよね。東京のレストランとかでも同じように興味を持ってくれます。食事していて店員さんと仲良くなって話をして、農家だと伝えると色々と質問をしてくれます。東京では色んな方が興味を持ってくれるので、自分の仕事に誇りをもてるようになると思います。
その為、むしろ遠くから来ているからこそ、東京のお客様にとってはアピールする価値になります。夜中2時に出てきました、とか途中大雪でとかいうお話をするとお客様はとても喜んでくれますし、黒部に興味もってもらえると、常に黒部のパンフレットももっているのでそこでお話をして、黒部に興味を持ってもらえると嬉しいですよね。あと、不思議なんですが、あ、この人富山の人だなっていうのが雰囲気で分かるので、それで声をかけるとまたそれで繋がりが深くなったりしますね。
~インタビューを終えて~
事務局としても、遠方の農家さんが出店する際に、東京への過度な期待と、稼ぐことが目的での出店は難しいと思っています。もちろん、売上を得るためにマルシェという売場があるのですが、様々な成長が出来る場所として知見を広げて出店してみることが、マルシェの価値を受容できるのではないかなと改めて思いました。
また、最後の農家が主役になり誇りを持てるというのを聞いて、マルシェで当初実施していた、実家が農家のこせがれが親の農作物を販売するという取り組みをもう一度良い形で実現できないかなと思いました。
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