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【Marche Interview #01】マルシェに出たら人生変わった!/スパイスのスペシャリスト嶋田優子さん(Seasoning Lab)

マルシェのつくり方、使い方~インタビュー編~
 ヒルズマルシェが始まってから10年。マルシェを立ち上げ、運営し続けてきた中での運営側や出店側での成功法則などをノウハウとしてまとめ、2019年9月14日に『マルシェのつくり方、使い方』を出版いたしました。
 その中で、実例として出店者や運営者、お客様のインタビューも掲載させていただいておりますが、ページ数や文字数の制限もあり、多くを掲載することが出来ませんでした。マルシェという場に集まる人々にはとても魅力的な出店者やお客様、イベント運営者がいらっしゃいます。そうした方々についてもお伝えしていくことで、よりマルシェの奥深さが伝わるのではないかと考え、続編として「インタビュー編」をnoteにて連載していきます。

 お一人目は、ヒルズマルシェに2011年に出店を始めてから定期的にご出店いただいている、SeasoningLabの嶋田優子さんです。ハーブソルトミックスなどの料理のスパイスはもちろん、様々なハーブのチャイなど食卓の美味しさが一気に広がるシーズニングを数十種類、販売しています。

1つ1つがヒルズマルシェへの布石だった

 2010年に取引先の貫井園さんが、私が依頼を受けて開発した商品をヒルズマルシェで販売されると聞き、一緒に応援でついて行きますと行ったのが、ヒルズマルシェとの出会いでした。そして、いつかここに出て販売をしてみたいと思うようになり、その後出店したことから、一気に事業の成長スピードが変わっていきました。

会社勤めから独立起業、売れない日々、苦手な仕事、ただ結果としてその1つ1つがヒルズマルシェへの出店につながっていて、そこまでの経験があったからこそ、ヒルズマルシェ出店後の成功を掴んでいる嶋田さん。
まさにマルシェを上手に使いこなせたといえる出店者の事例の1つだと思います。そこまでの軌跡とマルシェ出店で広がった事業について詳しくお聞きしました。

独立起業、Seasoning Labの経緯とは

 大学で中学高校家庭科教員養成課程だったので、そのままいくと家庭科の先生になるコースだったのですが、自分には向いてないということに気が付き、食品の研究者がいいなと考え就職活動をし、内定をいただいたのがスパイス会社でした。そこの開発部に勤め、プレッシャーもあるけど凄い好きなことができ、良い会社で11年勤めていたのですが、諸事情あり退職することになりました。会社の中心となる開発に関わっていたこともあり、同業他社への就職は規約上出来なかった為、そのままでは11年のキャリアが何も活かせずもったいないと考え、悩んだ末に退職金を元手に自分で事業をすればいいと思いつきました。会社の規約では同業他社への転職はNGでしたが、自分で事業を興すことには記載がなかったため、SeasoningLabを立ち上げました。製造に関してもそこまで許認可が大変なではなく、場所を借りてすぐにスタートすることができました。最初は何も分からなかったので、ホームページや税理関係などを学ぶのに教室に通って色々と見につけながら始めました。それが2009年のことです。

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通信販売・営業での失敗、教室の運営へ

 通販サイトを早々に立ち上げました。注文はくるものだと思っていましたが、最初の1年半ほどは全く注文がありませんでした。種類も多い方がいいと思い、ラインナップも増やしていましたが売れず、仕入代や固定費だけがひたすら出ていく日々でした。
 このままでは駄目だと思い、このお店に置いていただきたいなと感じたお店に営業をかけはじめました。電話や訪問でアポや営業を行っていましたgあ、ほとんど相手にしてもらえず、営業もうまくいきませんでした。ネット販売も営業もうまくいかず、次に手を打ったのが、前職時代に経験があったスパイス教室の実施でした。今はもうやっていませんが、当時はひたすらスパイス教室をやる日々でした。一番最初は、団地の集会所をおさえて、自分でポスティングやチラシの配布をしてお客様を集めていきました。教室については競合がいないのと興味がある方が多く、参加者もどんどん集まりました。また参加者の口コミで開催場所もお子さんが通う幼稚園やガス会社、スポーツジム、レストランなど増えていき、さらにお客様も増えていきました。多い時は1日2回開催する日などもありました。
 教室の活動でスパイスを知ってもらい、購入へとつながっていく、そうした日々でした。

転機、貫井園さんとの出会い

 そうして地元を中心にお客様が増えてほっともしたのですが、やりたいことが出来ているわけでないのと、そもそも人前で話すことが苦手で、緊張も激しく、事業としてはできればつくることに専念したいといつも思っていました。
 それでも、その教室の活動のお蔭で今につながる出会いが生まれました。教室に来ていたお客様の紹介で雑貨屋さんにスパイスを置いてもらえることになりました。そしたらお店のオーナーから、椎茸パウダーを入れた健康的なシーズニングを特注でつくれないかと依頼をを受けました。そこで椎茸パウダーを探していたら同じ埼玉県で隣町の貫井園さんが販売していることを知り、取引させてほしいと連絡しました。そうすると今度は、その貫井さんからうちの特注もできますか?といわれて今度は貫井園さんへ商品の提案をして仕入と卸両方での取引がはじまりました。そしたら貫井さんがヒルズマルシェに商品を持っていくという話になり、出店についていって「これだ!」と思いました。こういう販売の仕方があるというのを初めて知りました。

マルシェの前のフリーマーケットへ出店での経験

 ただ、その時はヒルズマルシェは自分には敷居が高いと感じ、すぐに出店はしませんでした。そこで同じようなのを探してすぐに出店ができそうなのがフリーマーケットだったので、出店をしてみました。たくさん出たんですが、とにかく売れませんでした。マルシェと違って"ござ"やブルーシートを敷いて地べたに商品陳列をしているのが普通の中で、私はテーブルをもっていってたのですがそれも浮いている感じでしたし、一番つらかったのが価格交渉でした。安く買いたいというお客さんが来るので、3つで安くしてとか言われ、断り続けるのもストレスで、売れないのと合わせてだんだん病んできてました。貫井さんにその話をしたら「ヒルズマルシェ紹介するよ」と言ってくれたのですが、まだ自分にはハードルがと言ってたのですが、大丈夫だよと背中をおされ、登録し、面接を受けに行くことになりました。
 その面接もとても緊張しました。面接担当者の森ビルの方に、「自信はありますか?この辺の販売しているシーズニングと勝負できると思ってますか?」など色々と聞かれて、終わった時にはもう落ちたのではないかと思いました。ショックで帰り道に横断歩道で転倒し、スーツを着ていたのですが穴をあけて帰りましたね。紹介してくれた貫井さんにも全然だめでしたと落ち込んで報告をしていました。

人生が変わった、2011年6月18日(土)

 ヒルズマルシェに初めて足を運んでから約9か月経過し、面接も合格して2011年6月18日(土)に初めてヒルズマルシェに出店しました。
 マルシェが始まりすぐに、片山さん(ヒルズマルシェ主催、森ビル担当者の当時メンバー)が来てくださり、「こういうお店に来てほしかったんだよ」と言ってくださったのは今でも覚えてます。場違いじゃないのかなとびくびくしていたのがほっとしました。初日に購入されたお客様からも後日メールをいただいたりしました。出店してみたら、凄い楽しかったんです!あ、これだ!とやはり思い、そこから毎月出るようになったら急に事業の流れが変わりました。 

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▼嶋田さんのブログからその時の記事の一部を引用

今、思い出すと、あっという間で、夢の中にいたような楽しい時間でした。
面接で「どうしてこのマルシェに出たいと思ったのですか?」
という質問をいただいた時、私は、「この土地で、私たちの作っているシーズニングを見ていただきたいと思った」とか、自分のことや、シーズニングの話しかできませんでしたが、日本の各地から、旬の食材が集まるマルシェだからこそできることがあるそして、そこが楽しいところなんだ!と気付きました。

ブログ全文はこちらからお読みいただけます。

 このままずっと教室をしていくのかと思っていた時期でもあったので、本当に展望が見えたという感じでした。今となってはマルシェに繋がっているのでやってよかったとは思っていますが。

マルシェの出店で全てが一変!事業が軌道へ

マルシェは、ただ単にその場所で売ることだけが出店の意義や価値ではありません。そこから様々な波及をしていくこともマルシェの醍醐味です。嶋田さんはまさにそれを勝ち取った出店者の一人といえます。

 マルシェ出店で潮目が本当に変わりました。
 マルシェ初出店ですでに出会いがありました。Aux Bacchanales(当時アークヒルズにあった店舗)で偶然コーヒーを飲んでいたシェフが、渋谷での店舗立ち上げのメニューを考えており偶然シーズニングを食べていただき、名刺交換をしました。その時はまさか採用になるとは思っていませんでしたが、結果として店舗立ち上げのメニュー開発から関わらせていただき、今もお取引をさせていただいております。
 それと、マルシェ出店を続けていくと、全く売れなかった通販サイトに注文が入るようになったんです。サントリーホール(ヒルズマルシェ開催場所に隣接しているコンサートホール)のお客様は、頻繁にヒルズマルシェに来られるわけでないので、そうしたお客様から追加オーダーでの注文が入るようになったりしたのです。顧客記録でどれくらい買ってくださっているのか表示されるのですが、本当にずっと購入してくださっている方が多いです。サイト利用者はほぼマルシェ経由でのお客さんだと思います。今では東京はもちろん神奈川や千葉など関東一円にお客様も広がっていき、通販の売上は事業の一つの柱になっています。
 他にも、例えば愛知県からヒルズマルシェの視察に来られていた農家さんと出会い、そこの農家さんの商品開発もさせていただき、その商品からさらに愛知県で販路が広がったりもしました。同じ出店者の事業者でも仕入をし続けてくれるような方もいたりと、挙げればきりがないくらいにヒルズマルシェからの出逢いとつながりと事業の広がりが起き続けています。
 ヒルズマルシェで個人の方や業務の方等とのつながりが1つでてくると、そこからばばっと次々へと広がる感じです。地元にいて動いているのと規模もスピードも全然違います。中には失敗話もいくつかあったりして、信用して納めてたら支払未払で閉店してたりということもありました。
 出店の副産物として、六本木のヒルズマルシェで販売しているということで地元のお客さんの見る目や反応が変わったのもありました。納めている店舗のPOPやブログとかで「ヒルズマルシェで人気!」など表記もしてくれるようになったりしていきました。

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何が起こるか分からないからこそ出店してみてほしい

 私は、本当にあの時ヒルズマルシェに出ていなければ、今もずっと教室をやりつづけていたと思います。そして結果として何が起きるか分からないというダイナミックさがマルシェでは起きました。
 これから出店してみたいと思う方へメッセージというのは難しいのですが、もし当時の自分に言うとしたら、「立ち上げてすぐに出店したほうがいい」と言いますね。インターネットを開いてサイトをつくっても誰も来ないよというのと合わせて伝えたいですね(笑)

【SeasoningLab】
< 出店中のマルシェ ヒルズマルシェワテラスマルシェ >
 Seasoning Lab 嶋田優子
 〒357-0023 埼玉県飯能市岩沢547-2
 公式サイトはこちら
 通販サイトはこちら

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~インタビューを終えて~
 マルシェはチャンスを掴むことが出来る場所なんだと改めて感じました。マルシェ出店までの道のりやマルシェを経て変化していったことなど、多くのことを教えていただき書かせていただきましたが、その裏では商品に対する想いやそこにかける努力・熱量がずっとあったからこそ、こうした機会が登場したときに、チャンスとして捉えてつかみ取れたのではないかなと思います。ITやSNSの時代がどれだけ進んでも、出会える場所が無い限りはリアルもネット社会もすれ違うだけだと思います。今後の嶋田さんのさらなる成長が楽しみなお話でした。

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