東神楽町農業プロデューサー6年の任期終了。いよいよここからが本番!
2016年4月、北海道上川郡東神楽町の農業プロデューサーとして「東神楽町の農業を将来に渡り勝ち組にする」という方向性だけを任をいただき活動開始。町長はじめ東神楽町の多くの方々に協力をいただきながら様々なトライ&エラーを繰り返しながら2022年3月をもって6年間の任期を終えました。その中で見えてきた地域活性への取り組み方などについて行ってきたこと、これから行うことも含めて簡単に書き残しておきます。
本当に素敵な町、東神楽町
振り返りをする前に、改めて東神楽町がとても素敵な町だということを伝えたいです。どんなところをとって素敵だといえるのか?立地や住み心地などが完璧に近いといえるのはもちろんですが、素敵な人がたくさんいるところも魅力のひとつです。
完璧な立地とは?
この後にも書いていますが、どんな町にも同じように素敵な方は多くいると思います。私は6年間で本当に幅広い方々とつながらせていただいて、6年たった今でも知らなかった素敵な方が次々と出会えることです。そうした方々同士が事業ではなく単純につながっていくことも大事だと思い、3月には、東神楽町100人カイギもスタートしました。10,000人の町で素敵な人を1回5名×20回の計100名に登壇してもらいます。
尊敬する山本町長はじめ、役場の方も農家さんも企業の方も町民も素敵な人が多すぎて本当にこの地で6年間活動が出来たことは幸せでした。特に、困ったら何でも相談させてもらって何とかやってみようと動いてくれる農家さんや役場の方には感謝しかないです。って終わるみたいな言い方ですが、まとめとして書いておきます。
地域活性の方向性は7年前に出していた
そんな素敵な6年間になれると信じていたか分かりませんが胸を膨らませて2016年4月、東神楽町山本町長から辞令交付をいだたき始まりました。
その就任1年前に町で講演させていただく機会があり、その時のテーマが「東神楽町の宝と地域連携」でした。改めて自分自身で振り返り、その通りのことをやってきたなと感じたので、その時のスライドを数点掲載しつつどんな考え方でやってきたのか整理していきます。
その時、地域連携を何かキャッチーな言い回しで説明したいと考え「漫画のワンピース」、「アイドルグループAKB48」、「人気ゲームのドラゴンクエスト」を題材にお話しました。
想いや夢など「火種」は絶対にある
地域というマクロな全体論だけで議論をすると、「何もない町」「動く人がいない町」ということは全国どこでもテンプレのように言う方がいますが、ミクロでみれば、「火種をもつ方」=何かしたい人、想いがある人、夢がある人はどこにでもいます。その中から、地域活性(ここでは個人や事業として成長をしていくのではなく地域全体を巻き込んで何かしていかないと進まないこととしておきます)という観点での火種を見つけ出し、周りでその火を大きくする活動をしていけば、自然とその火に集まる人が増え、火は大きくなります。
そうした火種と火種が集まっていき、地域活性としての連携をスタートするには、共通認識をもち目標を掲げる(地域単位での活性)こと、どうやってその目標という山を登っていくのか、だめならすぐ次のルートを見つけるのか。その為にはそれぞれが役割に応じた活動をすることが重要になります。1年目の終わりにプレゼンをした若手農家の学び舎としての株式会社東神楽アグリラボはまさにこの流れでした。
私はこの中でも大事なのは「役割分担」だといつも思います。上と下という組織の縦割りではなく、農家は農家として行政は行政としてプロデューサーはプロデューサーとしてそれぞれの価値を最大化できる範囲でやっていくのが重要です。
ONEPEICE→AKB48→ドラゴンクエストへ
その最初の「火種」に関しては、意欲ある人がどんどん突き進むことが重要です。周りがどういおうとまずは動き出すこと。その方向性自体が間違っていれば火種は自然消火されますし、恐れることなくまずは動く!
これが『ONE PIECE』段階。
ルフィーの熱い想いから物語が始まり、その熱に巻き込まれる形で仲間が増えていきます。ただ、その仲間もルフィーの夢を叶える為に動いているのではなくそれぞれの夢がある中でルフィーという熱い想いに惹かれ動いてます。
結果、最初は一人の火種で燃えていきますが、徐々にチームとなります。スポーツなどはこのチームでの目標設計(例:全国大会優勝)があれば一致団結して動きやすいですが、地域連携などそれぞれが別の事業や働き方をしている場合、チームだからといって簡単に動きやすい状態にはなりません。
そこで『AKB48』段階に向かいます。
余談ですが、この当時は存在しなかった坂道グループの「日向坂46」のファンなので今ならここに日向坂46と書いていたはず。
ここでいうAKB48とは、チームとてのブランディングへもっていく段階ですね。先ほどのONEPIECEでいえば、もしルフィーが亡くなったり抜けたりしたらあのチームは続かないと思います。なぜなら、ルフィーの夢をベースに動きだしているので。一方でAKB48は神7と呼ばれた初期メンバーがいなくなった今でも、チームとして成立し続けていますしファンも一時の隆盛は衰えたかもしれませんが、しっかりと確立しています。
言い方を変えると、属人的な火種からの脱却が大切というところですね。
※繰り返しになりますが、1事業者の場合は属人的な火種のままでも問題ないと思います。あくまで「地域連携・地域活性」という主体性が難しい話の場合です。
中盤と書いてますが、ここまでが準備段階だと思います。
小さな火種から、チームを組みこういうことをやろうとしている人たちがいる。という認知が少しづつ広まってきている状態ですね。
最後の『ドラゴンクエスト』段階というのは、地域全体で共有できる目標を設定しチーム以外の多くの方々を巻き込んで進んでいく状態です。ドラゴンクエストをされている方ならわかると思いますが、魔王を倒すために、勇者一行がストーリーを進めていきますが、その過程では王様から町民まで幅広い属性の人にヒントをもらったり協力してもらったりして進んでいきます。そのヒントをもらうためには町民から与えられた課題をクリアしていくというのもあります。そして何より敵だったスライムなどを仲間にしてしまい一緒に戦うチームに編成してしまうのも地域連携では重要な要因だと思います。現実では敵認定というよりは、なかなか協力関係が結べない相手や一緒に何かをやるという考えが無かった相手なども巻き込みつつ進んでいくという感じですね。
こんな話を7年前にさせていただきました。
6年を経て、ドラゴンクエストに到達
6年間でどんな成果を出せたのか、と考えると「ドラゴンクエスト」段階までようやくたどり着けたというのが成果になります。6年もかけてそこですか?と突っ込まれるかもしれませんが、ようやくここからが本番なのです。
6年間で実施してきた具体的な活動は最後に箇条書きでまとめ、また7年目の今からやることも後半にまとめてあるので、ここではドラゴンクエスト段階に至る過程で感じたことを整理します。
6年間の成果といえるもの
東神楽町の様々なプレイヤーとつながれたこと
彼らがどんな思いを持っているか、何をしたいかなど火種がたくさん発掘てきたこと
若手農家らと地元に八百屋を立ち上げて運営できたこと
東神楽町の状況を深く知ることができたこと(官民両側から)
その上で、東神楽町の将来に必要な地域単位での活動が整理出来たこと
廃校となる小学校の利用権を獲得できたこと
具体的に地域に貢献できていることが少ないですね。そう、少ないんです。これはもう私の実力不足ということですが、支えてくださった役場や農家さんには感謝しかないです。
地域活性の時間軸と優先順位
話はやや変わりますが、今、東神楽町で私と共に活動をしてくれているメンバーは5名います。この5名は全員「地域おこし協力隊」として着任し、一緒に東神楽町を盛り上げるべく活動をしてくれています。お隣の東川町が全国屈指の人数(50名ぐらい)の協力隊を活用してますのでそれに比べると東神楽町は少ないですが、その大半が私が推進している活動を一緒に取り組んでくれています。なぜ協力隊員を活用させてもらうのかは、地域活性の優先順位では収益の獲得段階が最後にあるからです。誤解を招くと困るのでしっかり書いてきますが、収益性が無い事業ではありません。持続可能な取り組み=収益性が伴わなければ雇用も価値も生み出せませんので収益性を得ますが、多くの方に協力をしてもらいながら進めていくことと、1つのことだけで活性化とはならないので小さな複数事業を組み合わせていきより強固な形を作り出していくことなどを、理解を得つつかう協力を得つつ進めてく必要があるので投資コストの方が先に出続けていきます。そこでそした部分を協力隊の力を借りていますし、何より協力隊は3年任期ですので、その後も継続して関わってもらえるべく、その期間で給与が払えるぐらいの収益性をださなくてはいけません。
<収益までの手順>
事業計画を立案する
理解がされなくても小さく動く(自分が火種になる)
動いたことで理解を深めてもらう
協力関係を構築していく
2~4を繰り返していく
事業実施体制を構築する
収益を得られる状態にする
民間事業であれば収益があがる前提での投資や融資があるが地域活性の場合はそこが難しい場合がある。か私が下手なのでそれが出来てないか(笑)
農業プロデューサーといいつつ地域単位では1つの産業では意味がない
そもそも私の活動領域は「農業」です。が、農業支援や農業プロデュースとなると、「農家」と「生産」が中心に見えるかもしれませんが、私が東神楽町に限らずやっているのは真正面からの本流の農業支援ではなく、わりと回りくどく周辺の整備という感じです。今回、東神楽町でも最初はとにかく農業と農家の課題解決をと考えていましたが、そこだけを見ていると東神楽町の農業の可能性を小さくしているだけだと感じてきました。もちろん八百屋では農家の勉強と地元に売り場をという側面があり実施してるので、それが間違いとは思ってません。ただ、つながりと見えてくる人が増えてくると、全く無関係に最初は見えていた、町にある旭川家具や、工業団地の企業などもどんどん巻き込んでいかないといけないと、東神楽町全体の地域活性につながる形での農業活性というより大きな成果へはつながっていかないことに気が付きました。ですので今では無関係な産業は1つもなく、今、虎視眈々と町内のクリーニング企業とのつながり方なども考えています。結果、農業支援なのに廃校を獲得し、東神楽大学という謎に思われている事業を推進しているのです。
そしてこれは町にずっといて働いている方には真逆のことがいえます。PTAでつながっていたり、実は同級生だったり、同じ地区に住んでいたりと接点はある人同士なはずなのに、お互いに違う業種だから特に仕事としての発展や掛け算が起きないまま過ごしているのです。誤解があると困りますがそれが悪いということではなく、私からするともったいないことです。産業に関係なく東神楽町というキーワードでつながれていることから新しい可能性は発展がどんどん起きてくると思います。
よそ者でありプロデューサーだからこそ
こうした自由な動きなどは長年当たり前だと思ってきたことが見えてこない「よそ者」という視点だから感じることでもあり、5名の一緒に活動してくれているメンバーも同じくよそ者(京都・福島・鹿児島・宮城・東京)だからこそ新鮮に捉え、もったいないに気が付き、火種を発見しやすいのだと思います。こうしたよそ者と地元が連携していけることはとても重要ですね。
そして、私がプロデューサーという視点で仕事をしているので、組み合わせ方について常に考えているので、一見無関係に見えるものでも掛け算の仕方で無尽蔵に価値を生み出し続けれること、場所や事業に縛られないので動き続けられることなども、東神楽町へのかかわり方とし貢献が少しでもできた部分ではないかなと思います。
7年目、いよいよ地域活性へ本格始動。急がば回れ
そんな形で東神楽町とお付き合いをさせていただき、これから7年目となります。東神楽町農業プロデューサーは卒業となりますが、この6年間で多くの方々と出会い、地域の価値や課題を見聞きしていき、東神楽町にどんなプロジェクトがあるとより町が盛り上がるのかを考え実現へ大きく動き出すという意味ではここからが本当の地域活性のターンです。準備に6年もかかっているのか6年しかかかっていないのか。これから東神楽町では大きく3つの事業を、細かくは40近いプロジェクトを東神楽町や仲間らと共にどんどんと進めていきます。
●東神楽町地域商社
~町のもったいないを価値化する~
農家も多く、特段困っていることもなく、子どもも多く、アクセスも良く、暮らしやすい町東神楽町。一方で今だ有効に活用されていない“もったいない”コト・モノ・価値がたくさんあります。将来を見据えると、少子化や人口減少、稲作中心産業の不安などの懸念点があり、その懸念点にむけ、もったいないを活用し「暮らしやすい町+楽しみが多い町」へ
東神楽町に行く、住む、ことでどこまでもいける未来へそれを面で進めていくための仕組みが必要となる。それが地域商社です。
グリーンツーリズムのテスト運用で見えてきた東神楽町の農業×観光の魅力
●東神楽大学
~働く・遊ぶ・学ぶのきっかけを生む複合施設~
東神楽町(北海道上川郡)にて2021年3月に121年の幕を閉じた忠栄小学校。
その跡地を、新しい拠点として活用するべく運用します。その事業名が「東神楽大学」となります。正式な大学ではなく、「働く」「遊ぶ」「学ぶ」を通じて東神楽町から世界へ、世界から東神楽町へと交流をしていく場となります。この3つがキーワードになってるのは東神楽町全体で今課題になっている部分と感じているのでそれらをまるっと解決していこうと考えています。
※正式な大学ではなく地域活性の取り組みの事業名として「大学」を付けております
●ハル・マーケット
~若手農業者の成長と地元の地産地消へ~
6年目となるハル・マーケット
道の駅も大きな直売所も無い町において地元農産物を安定的に買えるお店として町内の若手農家らを中心に立ち上げた八百屋。これから地元で美味しい野菜を提供し続けるお店として成長していきます。
●東神楽町100人カイギ
北海道初上陸!2022年3月『東神楽町100人カイギ』スタート!!
町で働く100人を起点に人と人とをゆるやかにつなぎ、 都市のあり方や価値の再発見を目的とするコミュニティ。毎回、東神楽町にゆかりのある方々がゲストとなり、何かゆるいけど想いが共感できる場づくりを始めることとなりました!
6年の活動を箇条書き
最後に、6年間で実施してきたことをざっと箇条書きで書き出しておきます。
1年目/2016年度:まずは知る
農業者へのヒアリング
アスパラナイト実施
軒先直売所視察
東神楽町農業女子プロジェクト交流
経営力向上基礎セミナー実施
新規事業プレゼン(株式会社東神楽アグリラボの構想)
2年目/2017年度:1つ動かす
アスパラナイト
都内マルシェでのアスパラ販売
旭川空港でのウェルウカムアスパラ
町民とのワークショップ
若手農業者経営研修
株式会社東神楽アグリラボ設立/八百屋「ハル・マーケット」開業
3年目/2018年度:内部連携の模索
アスパラナイト
都内マルシェでのアスパラ販売
女性農業者向けトークセッション
JAひがしかぐらとの協議、連携模索
東神楽町グリーンツーリズム構想の素案
八百屋「ハル・マーケット」2年目の営業
4年目/2019年度:未来への足掛かり
アスパラナイト
マルシェでのアスパラ販売
雪アスパラの東京発表イベント
地域商社構想の構築
グリーンツーリズム先進事例視察(北海道鶴居村)
地域商社先進事例視察(長野県小布施町・飯綱町)
SouseiMarcheでの東神楽町「種と実セレクト」コーナーの展開
八百屋「ハル・マーケット」3年目の営業
5年目/2020年度:本格稼働への準備
東神楽町地域商社立ち上げ準備
オンライン北海道物産展での東神楽町商品の販路拡大
企業タイアップオンライン食イベントでヤングコーン・とうきびで実施
SouseiMarcheでの東神楽町「種と実セレクト」コーナーの展開
マルシェでの種と実セレクト商品の販売
種と実セレクト商品用東神楽町段ボール箱開発
イオンモール旭川駅前での種と実セレクト商品のPR販売
八百屋「ハル・マーケット」4年目の営業
北海道移住ドラフト会議への東神楽町としての球団参加
観光/食/グルメなどの構築(補助金活用)
6年目/2021年度:本格稼働へ
東神楽町地域商社立ち上げ
給食事業開始
地域内流通開始
商品開発実施
町内に「東神楽町小さな直売所」を複数設置
種と実セレクト商品及び東神楽町農産物など販路開拓
ふるさと納税の商品開発、商品発掘
観光/食/グルメなどの構築(補助金活用)
旧忠栄小学校の跡地利用権獲得
SouseiMarcheでの東神楽町「種と実セレクト」コーナーの展開
マルシェでの種と実セレクト商品の販売
八百屋「ハル・マーケット」5年目の営業
東神楽中学校野球部全国大会出場のオンライン生配信&パブリックビューイング
最後に
改めて町長はじめ多くの方々にご支援、ご協力、ご理解をいただき、様々なことを実施させていただき感謝申し上げます。6年前、このような形で根をはり事業を拡大していくことになるとは思っていませんでしたが、大好きな東神楽町をもっともっと魅力的で可能性があって価値がある町へと微力ながら進めていきたいと思います。
ここからが本番!
2022年3月31日 脇坂真吏
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?