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心と体は本当に繋がっている

 もう十四、五年前の話ですが、心と体は本当に連動しているのだな、と思い知らされたことがあります。

 あるとき、普段できていたことが急にできなくなったのです。
 例えば、室内で天井に向かってジャンプをするということ。それほど高くなければ天井に手がつきますが、それが全くできなくなったのです。要するに力が入らなくなり、気がついたら歩き方も何だかフニャフニャなものになっていました。ジャンプができない、ということは、ダッシュもできないというわけでして、つまりうまく走れなくなったのでした。夢の中でもがいている感じ、と言ったら伝わるでしょうか。

 自分に何が起こっているのか、さっぱりわかりませんでした。最初に考えたのは、脳に何か異変があるのかもしれない、ということ。あるいはそれらに関連した神経系に問題が起きたのかと思いました。当然、気持ちは暗くなり沈み込みました。
 (自分の周りから普段どう見られているのかはわかりませんが)大して良くはないような状況でも、根拠のないポジティブさに支えられているのが、普段の自分でしたので、その心の状態に自分自身驚きました(誤解のないように付け加えますと、その根拠のないポジティブさで、「まあ、どうにかなるから」というような根拠のないような発言はあまりしないように心がけていますし、ポジティブさを強要するようなことは当然ありません 笑)。
 今では正確には思い出せませんが、過呼吸のような状態にもなっていたかもしれません。
 
 覚悟を決めて病院に行こうと思ったそんなある日、人に紹介されて行ったのが、ある整骨院でした。

 先生は気さくな方で話しやすい方でした。
 細かいやりとりは忘れてしまったものの、おそらく、自分が最近始めたことについて聞かれたのだと思います。
 その頃僕は柄にもなく、体を鍛えるべく都内のジムに通っていました。ちょっとした流れでそういうことになったのですが、その話をすると、僕が通っているジムの柔軟運動が前から疑問だった、というようなことを先生はおっしゃって、僕の体を見てくれました。あおむけで寝た状態になったところで、「足の親指動かしてもらえる?」と聞かれたので僕は言われた通りにしようと思いました。
 ですが、動きません。びっくりしました。それまで、動かないことに全く気がつかなかったのです。脳では動け、と命令を出しているのに、全く動きませんでした。そこで、先生がある場所を押しながらもう一度僕に聞きました。「今度はどう?」同じようにやってみると、今度は親指が普通に動いたものですから、また僕はびっくりしました。

 結局のところ原因は、あまり良いとは言えない柔軟運動と、その他のジムのトレーニングの仕方による神経系へのダメージでした。柔軟運動に関して言えば、体が元々柔らかくはなかったところに、さらに拍車をかけたのかもしれません。もちろんトレーナーはいました。
 親指が動いたのはとても嬉しかったですが、動くようになるのは先生が押したそのときだけです。その後で、先生に言われて行ったのは、ゆっくり深く腰をおろすスクワット(目標8回)と、腕立ての状態で顔を上げ目線は3メートル先を見る(目標5分)、というものでした。それらを少しやるだけで、良くなるのがその場で実感できました。それを毎日続ければ一ヶ月後には元に戻る、と言われました。実際に僕は毎日それらの運動を続けました。そして、おそらく一ヶ月経つ前には、僕の体は元どおりになっていました。

 顎関節症の治療で、歯科医から頼まれることもあるし、例えば、鬱(うつ)病は大抵体の歪みを改善すれば治る、と、いうようなことを、先生はおっしゃっていました。鬱に関して僕は詳しくありませんし、様々な傾向があるのかもしれませんので断言はできませんが、先生に診てもらったそのときの僕は、そうなんだろうな、と思ったわけです。
 体の影響が心に影響するように、心が固くなると、体も良くない状態で固まり、それがまた心に影響する、ということはあるのだと思います。
 その先生はもう残念ながら亡くなられましたが、他におっしゃっていた事は『歩く』ということが、いかに人にとって大切か、ということでした。それは本当に実感します。最近はサボっていましたが、また歩くようになって、その事が自分に良き影響を与えていることは間違いない、と思える今日この頃です。

 本日は、ツイッターなどには短いものをアップしていましたが、そのフルバージョンをお届けしたいと思います。
 尺八とピアノのために書いた楽曲です。昨年12月20日に表参道の河合楽器のサロンで発表しました。

 atmosphere piece for Shakuhachi & Piano
(演奏)尺八:石垣征山(石垣秀基) ピアノ:ワキマル・ジュンイチ


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