【キネマ救急箱#18】レイニーデイ・イン・ニューヨーク〜雨と、ピアノと、シャラメと〜
こんにちは。
ニク・ジャガスです。
先週末は日本各地で桜が満開、天候にも恵まれ、お花見を存分に楽しめた方も多いのではないでしょうか。
雨が降ってしまうと、せっかく咲いた桜が散ってしまいますからね。
そんな日本全国が晴天を願った週末、私は小さな画面に向かって雨乞いを繰り返していました。
それは何故か。
雨が降るニューヨークの週末を舞台にした映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』を鑑賞していたためです。
ティモシー・シャラメに降り注ぐ雨が美しすぎて「まだ足りん!まだ足りんぞーーー!」と半狂乱で雨乞いを繰り返していました。
あらすじ
ハリウッドを代表する若手スター達が眩しい
報道陣の前に10秒立っているだけで1週間はニュースになっているティモシー・シャラメ(勝手なイメージ)。
先日のアカデミー賞でも、SNSはウィル・スミスとティモシー・シャラメに溢れかえっていましたね。
本作の主人公は、そんなティモシー・シャラメと『マレフィセント』シリーズのエル・ファニングという、ハリウッドきっての若手スター達が演じています。
綺麗めゴリラがタイプな私は、生きる彫刻美なスレンダー男子シャラメに特に食指が動かなかったのですが、本作で見事にやられました。
生粋のニューヨーカーを演じるシャラメ、その名もギャツビー。
エルが演じる田舎生まれで上品な育ちのアシュレーが大好きすぎて、自分の庭であるニューヨークをイキリたっぷりに紹介したがります。
一方、アシュレーは自分の夢や野心に正直な女の子で、彼氏との約束をすっぽかして、映画業界の重鎮男性たちの懐に飛び込んでいきます。
大人組に敗れたギャツビーは、友人が取り組む映画撮影の現場で、元カノの妹であるチャン(セレーナ・ゴメス)に再会。
ギャツビーに引けを取らない皮肉屋であるチャンと、飽き飽きしながらも会話が弾んでギャツビーは楽しい時間を過ごします。
偶然キスシーンを演じることになった2人、思い切り唇を重ねた瞬間に雨が降り出すのです。
ウディ・アレン監督曰く、本作における雨は“ロマンス”や“愛”を象徴しているそう。
快活でピュアなアシュレーが“太陽”であるなら、シニカルで知的なチャンは“雨”。
チャンは、まさにギャツビーが愛するニューヨークそのものなのです。
そんなギャツビーが途中、チャンのアパルトメントに立ち寄り、ピアノを弾き語るシーンがこちら。
弾き語りをしているのは、チェット・ベイカーの「Everything Happens To Me」。
決して歌が上手いとは言いませんが、ピアノの美しい音色とギャツビーの甘い声に三半規管が狂い出すのを止められません。
「君が運命を変えてくれると思った」と、アシュレーへの届かぬ想いを歌い、思わず毒舌なチャンも「ステキな曲ね」と誉めてしまう。
五つ星ホテル「ザ・カーライル・ローズウッド・ホテル」のベメルマンズ・バーでの弾き語りシーンもあり、とにかくギャツビーが演奏するピアノに心地よく酔いしれることが出来ます。
雨と、ピアノと、シャラメと。
うっとりしすぎて、全人類がスライムになること間違いなしです。
シャラメとセレーナのせいで「ノンストップ雨乞いムービー」だわ
ニューヨークをこよなく愛するウディ・アレン、その愛情を惜しみなく本作に注いでいます。
というのも本作は、さながらニューヨーク観光気分を味わえるロードムービーにもなっているからです。
劇中に出てくるスポット一覧はこちら。
(参考URL:https://natalie.mu/eiga/pp/rdiny02)
行った事のない街ってイメージがつきにくいですよね。
この作品で予習をして、死ぬまでに一度はニューヨークを訪れたい。
そして帰ったら再度、映画を見てうっとりするんだ。
ギャツビーとチャンがキスした瞬間から、どのスポットも終始雨に包まれていきますが、最後の方、ある重要なシーンで一瞬雨が止みます。
そして再び雨が降り始めた時、新しい何かが始まる。
ネタバレになるので詳細は省きますが、このシーンが美しすぎて雨乞いが止まらなくなるので、ご注意ください。
ウディ・アレン監督らしいディティール
ウディ・アレン監督作品であれば、よく知られたところである「皮肉屋で、おしゃべりで、女性にやり込まれる男性主人公」は本作でもティモシー・シャラメが快演しています。
お洒落で、ユニークで、全世界が憧れる街ニューヨークを「不安と敵対心と被害妄想を掻き立てる街」とギャツビーの独特なセリフで表現。
華やかな表舞台だけでなく、ニューヨークで生きていくために必要な狡猾さを端的に表したアレン監督らしいセリフ。
他にも、アシュレーの「性的な葛藤があるとしゃっくりが出る」という体質や、ギャツビーの兄が「嫁の笑い方が気持ち悪くて離婚したい」と思っているなど、人間が持つ変なクセや引っかかりを映画に仕込み、全編を通して静かに反復、回収するウィットは安定でした。
個人的には、アシュレーが密かにギャツビーに電話をする「フィルム編集室」が懐かしく、郷愁に駆られました。
ニューヨークと映画への愛を込めた本作。
派手な盛り上がりはないですが、かつて誰しもが抱いた「アイデンティティの悩み」「恋と夢への葛藤」「他人への見栄張り」など、何かが心にチクリと刺さるノスタルジックな映画でした。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました☺️
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?