"ネタバレ注意" 映画「ジョーカー」は壮大なホラ話…?

「ジョーカー」観ました。いや凄かった…。ホアキン・フェニックスほど狂気の役がハマる役者そうそういないのでは…と思わせられる独壇場。
正気と狂気、現実と妄想の境目が曖昧で、いろんな解釈できそうな作品になっているのも良かった。

今回は最狂のヴィランがどのように誕生したかを描くエピソード0的なストーリーで、心優しいアーサーがなぜジョーカーに変貌してしまったのかが明らかになるんだけど、個人的にはその理由に若干の違和感を覚えてしまったのも事実。
すごく好きな方向性だし一本の映画としても今年ベスト級の傑作だとは思うから本当に些細な違和感ではあるんだけど…。

多分その違和感の原因は、ジョーカーは絶対悪というイメージというか思い込みを持ってたせいかなと観終わってから気付いた。超純粋な愉快犯,サイコパスの極致的な(笑)

今回ジョーカーに堕ちていくアーサーは精神的に障害を抱えていて周囲から浮いていて生活も苦しい社会的弱者として描かれていて、その上で理不尽な仕打ちや不運が重なって壊れていくという流れで、それなら狂うのも仕方ないよなとは思うんだけど、そこに今までのジョーカー像が結びつかないというか…そういう意味で今回のジョーカーは過去のジョーカーとは繋がらない全く新しい姿なのかもしれない。

ちょっと例えは不適切だと思うけど、もう失うものがなくなって「誰でもよかった」的な自暴自棄で凶行に及ぶ無敵の人みたいな面を感じてしまったり…。

ものすごく自分勝手な意見だけど(笑)逆に上流階級に生まれて何不自由なく暮らしてるのに満たされずに破壊的衝動に駆られるみたいなタイプのほうがサイコパスの極致としてしっくりくるし、バットマンとの対比としても面白いのではと思ったり…。
今回のジョーカーには感情移入したくなる部分が多すぎるとも感じたかな。

ちょっと前に「Us/アス」という映画を観たんだけど、最近はエンタメ映画に社会問題や政治に対する批判やメッセージを語らせるスタイルが増えてきてる気がする。
そういうのも嫌いじゃないし、実際Usもジョーカーも成功してるとは思うんだけど、そういう社会問題や政治が原因じゃない純粋にヤバい奴を観たかったという気持ちも少しある(笑)

とはいえ、ジョーカーというキャラクターを借りた哀しいオッサンの転落劇という意味では身につまされるものがあるし(笑)心にズシンと来る傑作だと感じたのは間違いないです。

今回描かれたような生い立ちを踏まえたジョーカーが今後のバットマンシリーズに登場するなら、それはそれで面白くなりそうな予感…。

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ただ、ラストの意味が少し引っかかるというのはある。
もし長々と語られてきた一人の哀しい男のストーリーが全てジョーカー本人による壮大な作り話だったとしたら…。
それなら今までのジョーカー像とも符合するつかみどころの無さという気もする。

映画を観た人の中には「自分の中にもジョーカーがいる」とか「自分もジョーカーのようになる可能性がある」という感想を抱く人もいるみたいだけど、そういう感情移入を引き起こさせること自体が最高のジョークというか皮肉になっているのかもしれない…。

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