君たちはどう生きるか感想(ネタバレ注意)

前書き


君生き見てきました。その感想文です。
この記事には多大なネタバレ成分が含まれますのでご注意ください。
問題ない人だけ下にスクロール。
































率直な感想

これは私一個人の感想です。

 物語は作り終えた時点で作者の手を離れ、読み手が受け取ることで初めて意味を成します。
 結果、人それぞれで感想が異なるものになります。

とりわけ君たちはどう生きるかはその傾向が強い作品にみえます。

 つきましては、これは他の感想や考え方を否定するものでは一切ないものであることをご了承ください。


 とまあ前置きはこれぐらいにして本題に入ります。

私はもののけ姫~崖の上のポニョといった有名どころは大体見たことがある程度の人間です。
 早い話ジブリ作品には普通の人程度の理解はあると思っています。

その上で君生きを見た感想はこんな感じでした。

「世界観のしっかりしたスタジオジブリの歴代作品と比べると今までと異なる雰囲気を放つ作品。
 同時に、「ジブリ作品の表現手法」「人生の軌跡」「ジブリでの創作活動」を詰め込んだ”宮崎駿の自伝”」


順番にみていきますね。

世界観のしっかりしたスタジオジブリの歴代作品と比べると今までと異なる雰囲気を放つ作品


 ジブリの作品って設定の作り込みが凄いですよね。
隅々まで考えられ洗練された世界観こそがジブリ作品の素晴らしさの理由だと私は考えています。
 宮崎駿が考えた、宮崎駿による、宮崎駿のための世界感。

つまり宮崎駿ワールド全開…って、こと?

….まあ作品にもよりますが、
ファンタジーに特化した作品だったり、
現代+少しファンタジー、だったり、
現代極振りだったり、と様々。
 作品の時代設定、舞台設定に合わせた、洗練されたデザインの統一感からくる、作品全体の雰囲気の完成度の高さが最大のウリだと感じています。

破綻がないのはもちろんのこと、
行ってしまえばどの作品も、

夢があって、
子供から大人まで楽しめる工夫がされていて、
何より話の内容がわかりやすい。

それがスタジオジブリって感じかなと思っています。

 そんな中で今回の作品「君たちはどう生きるか」は、今までジブリが綴ってきた文脈とは異なるものでした。

 物語の時代設定としては明治初期、
西欧文化の流入により日本の近代化が進んでいる頃が舞台でしょうか。(間違ってたらごめんなさい)
 その時代の敏腕経営者である父のもとに生まれた息子、主人公の眞人(まさひと)が不思議なお屋敷に引っ越してくるところから話は始まります。

 そのお屋敷の池には不気味なアオサギ(通称君生きバード)が住み着いており、その鳥にそそのかされたり化かされたりしながら近くの怪しげな洋館に行くことになり、不思議ワールドが展開していきます。

生と死を連想させる不気味な世界、
謎の文字が彫られた金の扉、
大量のペリカン、
船を操りその世界の歩き方を心得る謎の女性、
白いほわほわ(かわいい、ほんとすこ)、
きりきり働くカラフルなインコ達、
世界の創造主たる大爺様、

…などなど不思議な生き物が沢山いる摩訶不思議な世界を眞人は冒険することになります。

で、迷い込んだ世界を見て私が浮かんだ印象は「違和感」でした。

 今までのジブリの洗練された作品群と比べても毛色が違うような気がします。
今までのスタジオジブリの新作を期待して見に来た人は少々怪訝な顔をすることでしょう。

なんだコレ?って。
不気味だったり、怖かったり、言っていることやってることがよくわからなかったり。

検索のサジェストからも万人受けするものではないことがうかがえます(気になったら見に行ってみてね)

 ですがこの作品の原作・脚本・監督を務めているのは宮崎駿です。
数々の名作品を生み出してきたあの宮崎駿の手掛ける最新作です。

 エンターテイメントとして面白さに特化した作品を作り続けてきた宮崎駿ですが、今回は作品づくりに対する考え方が今までと根本的に異なっているように思われます。

今まで作品を作るうえで見出してきた、アニメ映画がより良いものにするために押さえてきたルールの多くを無視し、それまでと異なる考えのもと作っているように感じます。

 人気の出る作品を作るにはどのように作ればいいといった解法があるとおもいます。
起承転結なんてのはそれの王道的な型の一つでしょう。

 ですが、その型にはめることイコール創作者本人が作りたいものではないことが多々あります。
 漫画の週刊連載のキャラの人気投票に伴う出番の増加とかがいい例でしょうか。
人気キャラが出るとみんな嬉しいですからね。売り上げも伸びやすい。

 そんな感じで良いものにはなることが分かっているけど、それが自分が作りたい理想の形ではないという可能性があります。

 今回の作品は、宮崎駿その他の人が本当に作りたかった考え・思いに基づいて作った作品ではないではないのでしょうか。

 ある意味で100%作りたかった宮崎駿の作品ってことですかね。

風立ちぬとはまた異なった考えなのかな?
※実は私は風立ちぬを見ていませんが、宮崎駿が作りたかった作品というのは聞いてます。詳しいこと知ってる人はぜひコメントで教えてね。今度見なければ…。

 異世界に迷い込んだ時代の色が濃い装いをした少年の眞人。
不思議世界とは似合わない服装をしていて一体感がなく、デザインの統一性を強く重視してきたジブリ作品と比べると強く違和感を感じます。
ですがその違和感こそが作品の醍醐味だという見方もできます。

 不思議ワールドを探検してる眞人、明らかに世界観的に浮いてて独特の味わいがありますね。

「ジブリ作品の表現手法」「人生の軌跡」「ジブリでの創作活動」を詰め込んだ”宮崎駿の自伝”

 私としては正直こちらが一番そうなんではないかと感じたものになります。

 この話は「ジブリ作品の表現手法」「人生の軌跡」「ジブリでの創作活動」なのではないかと感じています。

あと、私は弱小ですが物作りしている人間のため、見方がかなりそちらよりに偏ってしまい、早い話後世のクリエイターに向けた作品に見えて仕方ありませんでした。

なのでこれから綴る感想は物凄いそちらに寄っています…。

■ジブリ作品の表現手法
 今までのジブリ作品であったような描写が映像の各所に散りばめられ、あのシーンはあの作品のあれに似ているな、といったのは随所に見られました。
あのえも言えぬ不思議な世界観は、宮崎駿の頭の中をそのまま抜き出したような気すらしました。

 ツイッターを見てたら私と同様に君生きのシーンと過去のジブリ作品のシーンを重ねてる人がいました。
論より証拠なのでリンク貼っておきます。
参考までに。

https://twitter.com/iso_zin_/status/1700350096792256552

上記のやつ以外にも探せばまだたくさんある気がしています。
 私は眞人が外れの洋館に入ろうとする時に狭い入り口を見つけたシーンがあるのですが、天空の城ラピュタでパズーがバズーカで開けた穴を無理やり通るシーンと重なって笑ってしまいました。

■人生の軌跡
 物語はファンタジーのフの字もないような現実的な導入で始まります。
この時点だと火垂るの墓とかそういう路線なのかな?とかも思いました。
同時にこの登場人物たちには誰かモデルでもいるのかな?と思いながら見ていました。
 途中から眞人は宮崎駿がモデルなのかな?と薄々思っていましたが、大爺様の世界の作り方講座の下りでそうとしか見えなくなりました。
 終わった後気になって少し調べてみたら主人公の眞人は宮崎駿本人の生い立ちと非常に似通っていました。
以下参考までに。


■ジブリでの創作活動
作品中には、ジブリでの活動が重なって見える部分が多く見受けられました。

 例えば君生きバード。
あれって鈴木敏夫さんの事じゃないの?なんて勝手に思ってます。
 鈴木敏夫は宮崎駿の創作の情熱という矢に射抜かれ、共に作品作りという異世界へ冒険に旅立ちます。
 途中まではぶつかることも多く味方なのか敵なのかわからない状態なのですが、空いた穴を埋めてもらうなどしてもらいながら一緒に戦い抜き、最終的に戦友になります。
「じゃあな、友達」みたいなことを最後に言ってましたね。

 他にも、大爺様なんかもありますね。

「それは木ではなく墓の石だ、悪意がある。」
「悪意のない木がここに13個ある。これで世界を作ってくれ。」

など、そのままだと意味がよくわからないセリフがいくつも耳に残ってます。

 創作物は誰かから影響を受けた結果、自分もこんなのを作ってみたい!と思い作り、結果第一歩を歩み始めるものだと思います。

というか、私がそうでした。

 心躍る作品に出会い、大きな影響を受け、自分もまたこんな素晴らしい作品を作りたいと、心に憧憬の火が灯る。
 ただその積み木も利害関係という様々な思惑が関係しているため、悪意があると眞人は言っていたのではないでしょうか。

 同時に、悪意のない13個の木は純粋に新時代の作り手である眞人(宮崎駿)影響を与えた作品の数々ではないかと思います。

 それはあくまで自分の中にあるもので、まだ初めすらしていないために様々なしがらみが何もなく、結果純粋な物なのだと言えます。

 他にも13という数字は今まで作ったジブリ作品の本数で、それを使って眞人(視聴者)に次の世代の作品を作って欲しいと語っているなんて見方も考えました。

そんな中、その場に乱入者が現れます。赤いインコの王様ですね。

 こんなもの!といってものすごい速度で木を積み上げていきますが、
上手くいかず最後には積み木を机ごと叩き切ってしまいます。

 これは利害関係者の外部圧力で、こうすればうまくいくだろ!という思惑があるけど、結果うまくいかなかった事の比喩では?など考えてます。

 まあそんなこんなで最終的に不思議な世界を脱出する眞人ですが、脱出後には不思議世界を内包した塔は崩れ、中からインコ(ジブリで働いていたアニメーター達?)などの生き物が一斉に溢れ出します。
スタジオジブリの終わりの暗喩でしょうか?

 不思議世界の脱出直後、眞人のポケットには何か入っています。
おばあちゃんの人形と道端で拾った小石ですね。

 途中助けられた船乗りの女性(おばあちゃんの別の姿?)、そして持ち帰ったおばあちゃんの置物は久石譲の事なんじゃないかな?とか思っています。
君生きバードが強力過ぎるお守りって言っててそう思ったんだっけかな……。
作品を華やかにかつ強力に彩るという意味合いでは大変強力ですね。

 また、小石については君生きバードはそんなのすぐ忘れたほうがいいぜ?といった話をしていますが、心の中に残った大事な物語への思い入れとかその時拾った他の作品からの影響の比喩なのかな~なんて思いました。
 影響を受けるのは良いけど、そればかりに囚われすぎず、自由に作ったり受け取ったりして欲しいってことなのかな?

 そのほかは大勢のインコに囲まれて絶体絶命に陥ったところを死んだ母親に助けられたり、落ち込んだところで元気もらったりなどなど…。

 総括すると、色んな人たちやいろんな思惑があり、色んなしがらみを乗り越えられたという事なんじゃないかな?

終始そんなことを考えながら私は映画を見ていました。
見返してみたらほとんどが勝手な決めつけと思い込みな気もしてきますね。

「へぇ、君生き見たんだ。じゃあ、君はどうするんだい?」

 私が勝手に解釈した、この物語のメッセージですね。

「僕はこうやって生きてこんなことを頭の中で思い描いて、こんなに色んな表現を魅せてきたんだ。

 早い話僕が映画を作るうえで考えたことの多くを君生きに詰め込んだ。

もはやこれは宮崎駿そのものだ。

 頑張った結果世界的に成功し、最終的にこんなに好き勝手し、自伝のような映画を出すことができた。

それで、君はこれを見て何を考えて一体どうするんだい?」

そんな問いかけが聞こえてきたような気がしました。

 ゆえに「君たちはどう生きるか」ってことなんですかね?

 それと、君生きはほとんどCMを打っていないらしいですね。
これも私の思い込みなのですが、広告を打たなかった理由って、今回の作品は100%宮崎駿エゴで作られた作品ゆえに、世界に通じるエンタメ映画を作り続けてきたスタジオジブリとしては宣伝をしにくいから、ではないでしょうか。

 宣伝するからにお客さんに楽しんでもらえる、娯楽に特化した作品であるべきである。
 一方で今回は宮崎駿、その他大勢のエゴでできた作品。

 正直、見たい人だけ見ればいいんじゃない?
そんな事言ってる気がしています。

 こんなにもメガヒットを飛ばし続けた人が引退し、引退後に結局また戻ってきて再び大好きな映画を出し、
そしてそれがあまり一般受けしないような、自らのエゴに満ちた作品を作った。

これが宮崎駿だよォ!オラぁ!

…って感じの内容の話ですね。

 僕は勝手に、これは最強アニメクリエイターの超絶贅沢な同人活動なのではないのではないか?なんて考えていたりします。

浅いですかね?そうかもしれません。

 単純に制作者の自己満足だと批判する人もいたりするかもしれませんが、個人的には全然ありだし、やりたいことやってるな〜すげーなーって思ってます。正直羨ましい。

 同時に挑戦状って見方もできますよね。
これからの人に発破をかけてると言うかなんというか。
これを見たお前たちに私と同じことができるのか?やってみなよって。
まあこれもまた僕の思い込みかもしれないですかね。

まあ単純に今回は政策委員会方式ではなく、人気を出す必要がないことが大きな要因な気もしますね。

 それと可能ならもう一度劇場でみたいですね。
見るたびに新しい発見がある作品に見えるので。

 初回見た時は宮崎駿の自伝だと思い始め、そうとしか見えなくなってしまったのでw
 宮崎駿の生涯(存命ですが…)にあてはめると、すべての不明点に理由付けができてしまう気がするので。

次見るなら、自伝ではなく100%エンタメという観点で見てみたいですね。

おしまい。

☆おまけ
新海誠さんが似たようなこと言ってる記事があったので張っときますね。
新海誠と同じ考えといううぬぼれについては突っ込まないでくれると助かる(白目)

あと宮崎駿、これで最後の作品かと思ったら次回作作ってるみたいですね。
やはり映画作るのほんと好きなんですねぇ。
次回作も変わり種になるのかな?楽しみです。

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