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脚本家 若杉栞南|言葉に鼓動を
2024年6月5日 00:28
Day1-スズキ タダシ、29歳。春。雨に濡れた桜を踏みつける足取りは社会人を7年経験した絶妙な貫禄……いや絶妙な慣れを醸し出していた。この7年間それなりに歩んできたつもりだしそれなりに結果を出してきたつもりだしそれなりに人付き合いも上手いほうだったと思う。そんな“それなり”の30歳男になろうとしていた。学生時代の友人は結婚、出世、転職、消息不明…と
2024年6月5日 00:29
Day2-世界には、夜が来ない街というものがあるらしい。地球が傾いた状態で太陽の周りを回っているため起きる現象だという。年に数ヶ月その現象が続く街の住人を本当はどこか羨ましいく思っていたのかもしれない。気が付いたら……(……もしかしたら、焦りとか不安とか熱意とか そういう物をどこかに置いてきてしまった時から?)とにかく、それくらいの頃から夜が明けなくなった
2024年6月5日 00:31
Day3-フィルムに浮き上がる数秒前の俺は確かに“ぼやっとした顔”を写しているんだけど想像していたよりも“変な顔”はしていなくて「あぁこれが考えてる顔なのか」と納得してしまった。青い目をした彼はフィルムを眺める俺をじっと見つめて 「自分の顔、初めて見たんだね」なんて言うから 「今朝顔洗う時に見たよ」そう言ったら 「そうだね。でもきっと、君は初めて自分の顔を見たんだよ」と、よく
2024年6月5日 02:03
もう1ヶ月以上も前のこと。1ヶ月以上も前のことを、人はどのくらい覚えているだろうか。いま目の前で本を読んでいるあのおじさんは、1ヶ月前…正確には「39日前」に誰の本のどんなシーンを読んでいたのか覚えているだろうか。ベンチで前髪にカーラーをつけるあの女子大生は39日前の“ある明るい時間”に誰とどこにいたのか、覚えているだろうか。俺は覚えている。はっきりと。あの日の、あの時の、あの