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幼少期の呪い

「おやすみプンプン」という作品が七夕限定の無料公開だと知人にオススメされたが、七夕は深夜まで仕事をしていて読む時間を取れなかった。
 勧めてくれた知人に申し訳ないと思っていたところ、公開期間が伸びていたので土曜の午前を使って読むことにした。

 褒め言葉として、ありふれた物語だと思った。
 こういう家庭や環境や人生や思春期の悩みなんかは、自分ごとではなかったとしても自分の隣近所くらいには必ずあるものだと思う。
 共感し得る部分もあれば、理解できない部分もあり、まるで人間関係そのものみたいな漫画だった。
 なんだか高評価をつける気にはなれないが、最後まで興味深く読んでおいて今さら低評価をつける気にもなれない。複雑な気持ちだ。



 読了後、幼少期のことを思い出していた。
 私が生まれ育ったのは、歴史と観光が売り物で、災害関連の意識と「こころときずな」が強い地域だった。

 小学生のとき2学年上の男子が亡くなったのを、思い出していた。
 彼の遺体は裏山の崖下で見つかったのだ、とだけ校長先生の話で聞いた。飛び込んだのか、足を滑らせたのか、はたまた誰かに突き落とされたのかは知らない。

 友人の母親が過労で亡くなったのを、
 学級代表からの年賀状に書かれた住所が施設のものになっていたのを、
 苗字が二転三転するからみんなが下の名前で呼んでいた保健係の女子を、
 幼馴染の父親が路上で凍死したのを、
 好きな色のランドセルを買っていいと親から大嘘を吐かれた入学前の自分を、
 その他きっかけが無ければ思い出さないような薄暗い記憶を、思い出していた。


 ふと、Googleの検索窓に『ランドセル 黒』と入力してみた。
 サジェストに「女の子」「おしゃれ」「かっこいい」「男の子」と出てきた。
 一番上に出てきた「女の子」を追加した検索結果を見る。
 当然のように、女の子が黒いランドセルを背負ったプロモーションが表示され、ランドセル販売サイトへのリンクが並んだ。
 当然のように。ごく、当たり前に。
 なんだか、それに少しだけ救われた気がした。

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