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わかおの日記165

田村くん(専攻内の唯一の友達)と飲んでいたら盛り上がり、酔っ払って帰ってきて、ぐっすり寝たのち目が覚めたらこんな時間だった。もう電車は動いているが、まだ夜だ。さみしい。人恋しい。人恋しいってこういう感情なのか。

昨日は原典講読の授業でプレゼンをした。恋田先生という嘘みたいな苗字の綺麗な妙齢の教授に1目置かれたくて、気合いをいれてプレゼンしたが「着眼点は面白いけど、雑ですね」と苦笑されながら言われてしまった。

「着眼点は面白いけど、雑」な人生を送って来たので、なんだか自分を見透かされた感じがして、嫌だった。

しかし、「雑」と言いきったときの恋田先生の表情に絶妙な色気があって、謎に興奮したのも事実だ。何を書いているんだろうおれは。

プレゼンのほかにひとつ、絶対に外せないイベントが昨日はあった。それは、自分が書いた小説を芥川賞作家に講評してもらえるという授業だ。仲間内でさえあまり評判の芳しくない小説をプロに読ませたら、どうなってしまうのだろうという恐れと、「you、見どころあるね」的なことを言われたら嬉しいなという期待が半々の感情で、緊張しながら田村くん(モグリ)と教室に赴いた。

思いのほか褒めてもらえた。褒めてもらえてはないかもしれない。自分が小説の中で表現しようとした問題意識については凄く共感してもらえたし、文章自体も読みやすいと言われたけれど、なんだか手加減されてるような感じがした。

カラオケで85~89点を取ると、「直すところがないです!」みたいな感じで機械に絶賛され、90~93点あたりを取ると逆に「ビブラートを意識しましょう」みたいにアドバイスされることがあるが、今回の場合は自分が前者の扱いを受けているような気がした。

これはとても悔しかった。まだ自分がそのレベルに達していないのだろう。仕方がないので、殺すような目付きをしてアドバイスを真剣に聞いた。大学に入って初めてくらい人の話をきちんと聞いたかもしれない。

「特に世の中に不満や、自分の主張みたいなものもないんですけど、それでも書く資格はありますか」みたいな質問をした。

「ぼくだって、小説を書かなくていいよと言われたら多分書かないと思います。だけど書くのが好きな人は、認められようが認められまいがずっと書き続けると思います。認められるということが、絶対じゃない」みたいな答えが帰ってきて、すごく安心した。

それでいいんだったら、書き続けられるかもしれないと思った。

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