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鍵のかかったあの日の嘘の中に住む話

長い時間をかけて
重ね、厚みを増された嘘の中に
私はずっと住んでいる。

悪い嘘なのかいい嘘なのか
それとも"都合の"いい嘘なのか。

どれにしろ私は
そんな嘘で満たされた広い深い箱の中で
陸を探して必死にもがいて泳ごうとしていた事がある。
南京錠を掛けた箱の中に
水を満水まで貯めて私を放り込み
その箱すらも鉄格子の檻に入れて
そこに分厚い遮光カーテンを2枚重ねられた様な
そんなイメージが浮かぶ。

水の中に酸素が含まれていても
私たちはそれを取り込むことが出来ないように
私が思っている嘘の中に
真実が混じっていても私は取り込めない。

取り込めないなら息を止めて口を閉じて
必死に全てを拒絶するしかなくなる。

私以外の人は、特に恋人というものは嘘ばかりつく
男も女も、嘘を嘘で蓋をして私に渡してくる

なにも信じられない

なんでそんなに嘘ばかりつくのだろう
私は嘘つきが嫌いだ
誰の言うことも嘘だと思う。

だけどまだ信じたいと思う気持ちがあるのは
私が人を傷つける嘘は絶対につかないから。

私が嘘をつかないなら
他にもきっと嘘をつかない人がいると
信じているから。

貴方の言葉も行動も
嘘と、嘘を取り繕い私の機嫌を取るためのものだと
そういう風に捉えてしまう。

真実を述べる誰かの言葉も
嘘なんだと捉える。

何が本当かは本人にしか分からない
真実か嘘かを確かめる術も
基本的にはない。

嘘を真実に見せることは
誰にだってできるトリックだから。

嘘だらけ嘘まみれ
びしょ濡れの私は

嘘の中に生きている
息苦しくて怖くて冷たくて寒い
嘘はプール。
波もない。静かに私を浸して来る。

誰か、嘘をつかない人も居ると
貴方が信じた事は間違ってないと
真実だと、私を箱から出してくれないかと思う

私はもう、必要以上に嘘を飲んだ
もう入らない。飲めない。

嘘をつかない。
嘘をついたら針千本飲む、なんて
どうせ飲めない事を言わないでもらいたい。

嘘ついたら____

その後に続く
絶対的信頼を得られる人質を
誰か提案して欲しい

お金だとか私ともう関わらないだとか
私は望まない

何か別のもので
嘘をつかない事と対等の
自分の大切な何かを、私に差し出してくれないかな

それとも
貴方を監禁して電波からも遮断して
監視して、嘘なんてつけない所で
保管したらいいのか?

それでもいいよと言って欲しい

私以外に失うものは何も無いと証明して欲しい。

なんて言ってたらもうしっかり朝になった
朝の鳥が鳴き始めると
少しだけ嘘から気が逸れる。

今日も嘘の中で
息継ぎに勤しむ。

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