中小企業が注意すべき新規事業のポイント
今回は新規事業について考えてみたいと思います。
私の場合は、特に不動産会社の経営企画時代に、割と新規事業を企画することを求められることが多かったです。直接担当して事業化したのは、有名お菓子メーカーと組んだアンテナショップしかありませんでしたが、その他にもM&Aでの海外事業や海外飲食店の日本国内でのフランチャイズ展開、不動産証券化など部分的に関わったものもありますし、事業化しなかったものとしては以前紹介した国内チェーン店のM&A案件の他、新規物件での展開事業、居酒屋など色々ありました。
<国内チェーン店のM&A案件の話>
以前ご紹介した、中小企業の経営企画を表す文章、
”経営の意思としてやらなければいけないが、任せられる部門がない課題や仕事を請負い、推進する”(稲田将人著、戦略参謀)
に照らし合わせていうのであれば、まさに中小企業の新規事業こそ既存部門では任せられるケースが少なく、中心となるかは別として経営企画が関わるべき業務である(経営者の立場からすると関わらせるべき)と断言できます。
中小企業が新規事業を検討すべき理由
そもそも、なぜ中小企業は新規事業を検討すべきなのでしょうか?主な理由は以下の通りです。
1. 既存事業の成長限界
中小企業の多くは、創業当初の事業で一定の成功を収めているものの、その成長が頭打ちになることがあります。市場シェアが限定的で、新しい顧客を獲得するのが難しくなることや、競合企業の台頭で価格競争に巻き込まれるリスクが増します。このような状況下では、現行事業に依存するのではなく、新規事業によって新たな収益源を確保することで、企業の成長を持続させることができます。
例えば、製造業の企業が従来の製品だけに頼っていると、需要の減少に直面することがあります。しかし、新しい技術を取り入れた製品やサービスを開発することで、既存顧客とは異なる市場に進出し、ビジネスを拡大することができます。
2. リスク分散のための新規事業
一つの事業に依存することは、企業全体のリスクを高める可能性があります。景気の変動や業界全体の低迷、予期しない災害やパンデミックなど、外部環境の変化は中小企業にとって大きな打撃となり得ます。このような不確実性に対処するためには、複数の事業ポートフォリオを持つことが重要です。新規事業を展開することで、経済状況に左右されにくい安定した収益基盤を確保でき、リスク分散が図れます。
2020年の新型コロナウイルスのパンデミックは、飲食店や小売業に大きな影響を与えましたが、デリバリーサービスやオンラインショップを新規事業として展開した企業は生き残り、さらなる成長を遂げました。
3. 技術革新による新しい機会
技術の進歩は、ビジネスに新たな機会をもたらしています。例えば、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、デジタルマーケティングなどの技術を活用すれば、従来のビジネスモデルを進化させるだけでなく、まったく新しい製品やサービスを創出することが可能です。中小企業は、これらの技術を取り入れることで、より効率的に業務を行い、競争優位を獲得するチャンスを得ます。
例えば、ある製造業者が3Dプリンティング技術を取り入れることで、特注品の製造に対応できるようになり、新たな収益源を確保したケースが見られます。
4.スタッフのモチベーションアップ
新規事業に関わってみたいというスタッフは多いです。新規事業をリリースすることで、そのような人材がいつか自分も関わってみたいと思い、モチベーションアップにつながります。
中小企業が新規事業を成功させるために絶対に必要なこと
では、中小企業が新事業を成功させるためにはどういうことが必要になるのでしょうか。いくつかあるとは思いますが、絶対に外せないポイントをご紹介します。
1.既存事業との関連性を考える
まず最初に説明するのは、既存事業との関連性、いわゆるシナジーと呼ばれるものについてです。既存事業と全く無関係の事業を始めて成功したというケースもありますが、経営資源が限られている中小企業にとってはリスクを抑える意味でも既存事業とある程度関連性がある新規事業を検討すべきでしょう。アンゾフの成長マトリックスの新製品化発戦略や新規顧客開拓戦略の考え方(このnoteの読者は中小企業診断士とかある程度経営戦略を学んでいる方も多いと思うので、細かい解説はしませんが、分からない方はGoogleで調べてみてください)が有効です。
私が不動産会社で新規事業を担当していたときには、特に初期のころは所有物件でのビジネスを検討するということだったので、その時点でシナジーは成り立っているというケースが多かったです(自社物件という制約が無ければと思うことも多々ありましたが・・・)。
2.世の中のビジネスをベースに考える
全くのゼロから新規事業を生み出すのは、とてもかっこいいですが、残念ながら特に中小企業の場合は、世の中に全くないビジネスを考えようとしてもアイデアが出てこないケースが多いです。
では、どうしたらいいのかというと、世の中にある既存のビジネスをベースに考えるということです。私が担当した前述のアンテナショップは、別のお菓子メーカー(具体的にはカルビーさんです)のアンテナショップをまねたものです。それこそ何回も通って、メニューや単価はもちろん、オペレーションやどれくらいの売上なのかを可能な限り研究しました。
また、世の中の既存のビジネスを組合わせることも有効です。今から10年ほど前にブームとなった相席屋は、街コンと居酒屋を組合わせたものです。街コンは開催日が決まっていて好きな時にいけないけど、居酒屋で街コンみたいなものがあれば好きな時にいける、というアイデアから始まっています。
このように、世の中の既存ビジネスをベースに考えると、アイデアが生まれやすいだけでなく、社内の経営者や事業化した際のお客さんからの理解を得やすいというメリットもあります。
3.担当者の選定
新規事業は社内のエース級や期待の若手といった、成功が見込まれるメンバーをそろえて、成功の可能性も1%でも高めることが大事です。●●が空いているからやらせてみようでは、成功確率を下げることになります。
その意味で、私が担当したアンテナショップは、企画段階で私を担当者にしたのは、自分で言うのもなんですがいい判断だったと思います(笑)。ただし、私を店長にしたのは、上記に反する判断だったと思います。これについてはまた別の回で説明したいと思います。
今回は中小企業の新規事業について説明しました。まとめると、今後の成長やリスク分散を考えると中小企業こそ新規事業に取り組むべきであり、経営企画が関わるべき分野です。ぜひ積極的にチャレンジしてみてください。経営者の方で、新規事業を進めるにも社内に人材がいないという場合は、新規事業の推進や人材育成のご相談にも乗りますので、ご連絡ください。
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