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Movie review ヨーゼフ・ボイスは挑発する

ヨーゼフ・ボイスは挑発する

白黒テレビに映し出される討論番組でフェルトの帽子を被った一人の芸術家が苛立ち、叫ぶ。「今は民主主義がない、だから俺は挑発する!」
彼の名前はヨーゼフ・ボイス。初期フルクサスにも参加し、“脂”や“フェルト”を使った彫刻やパフォーマンス、観客との対話を作品とするボイスの創造(アート)は美術館を飛び出し、誰もが社会の形成のプロセスに加わるべきだと私たちに訴える。既存の芸術が持つ概念を拡張するその思想は、世界中に大きな議論とセンセーションを巻き起こし、「社会を彫刻する」という、貨幣経済や権力に管理された社会を創造性によってつくり直そうという試みは、バンクシーを始めとする現在のアーティストにも脈々と受け継がれている。
本作は膨大な数の資料映像と、新たに撮影された関係者へのインタビュー映像で創られた、ボイスの芸術と知られざる”傷”を見つめるドキュメンタリー映画である。
ボイスの肉声やパフォーマンス映像は、30年以上前のものであるにもかかわらず、生々しく、力強い。今、ボイスの言葉たちが、時を超え、再び私たちを挑発するー  。

ヨーゼフボイスの存在は、なんとなくは知っていました。「普通のアーティストというよりは、社会派のアーティスト。」程度ですが。今回は、この映画を観て、よりその考え方を知ってみたいと思いました。

印象に残ったメッセージは、「アートは、問いである」ということ。人を行動に移すのは、テーマではなく、問いであると。一緒に解決策を探るのだと。

これは、アートを観る自分の姿勢を反省しました。私は、アートを観る時に、「問い」ではなく「答え」を求めていたように思います。

「これは、作者からのこんなメッセージなんだ。」と受けとめて、「あーなるほど」とか「ちょっとわからないなあ」とか言ってみたかったんだなあと。

アーティストは、作品を通じて、何を問うているのか。私の中で、その問いは、どう位置づけられるのか。そのためには、単に作品を観るだけでなく、作者を知ることや、自分を知ることも大事だなと。

ボイスの考え方も、全般によくわかりましたし、自分自身のアートとの向き合い方を考えさせてくれた映画でした。

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