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地方演劇を真面目に考える会 その11 【大都市文化圏との関わり方 中編】

概要

2021年に和歌山市のクラブゲートと、オンラインで開催した「地方演劇を真面目に考える会」の記録です。以下のHPにて、開催した動画のアーカイブ、アンケートデータや、インタビュー動画をご覧になれます。ぜひご覧ください。

大都市圏との文化格差について

今回は、大都市圏との文化格差について見て行きたいと思います。

 かなりの割合で文化格差を感じているようです。約半数が強く感じるという事でそれは間違いないでしょう。演劇に限らず経済規模がそもそも違うので、文化に流れる予算規模がそもそも違うので仕方がない所です。ただ、6分の一はさほど気にならないという答えもあり、そもそも大都市圏との距離の問題もあるのかもしれません。

文化格差についての詳細

もう少しくわしく、文化格差について自由に書いてもらいました。
ある程度、似たような種類を分類しています。

5・文化格差があると感じる方は、どこの部分に感じますか? 47件の回答
●人材の能力や熱量の違い

ビジネスとしての演劇が少ないが故に業者、団体の経験値、技術の差が大きい
習熟度
プロ意識、向上心、連帯感
優秀な人材(俳優・スタッフ・指導者・作家)の偏り
演劇人口が少なく、演劇に対する情熱も薄い。
役者や演出家、音響や照明のスタッフなど、演劇の世界が広い
演劇人のモチベーション、運営する上での金銭感覚
作る側も、見る側も、勉強(知識)が足りていない
ガラパゴス化してる。芝居のスタイルが全然違うと感じる。それは良いところでもある。
メソッドやシステムを知る機会が少ない。勉強できる場がない。
感性の違い(独特の内容は受け入れられにくい)
業界の人間が、新しい表現・文化を学ぶ意識があるかどうか。
パフォーマンスのクオリティと文化活動への出資規模
観客や団体の演劇に対する知名度が低い。技能においても単なる周知の度合いにおいても。
都会の小劇場がやったものを参考にしてやっているような、二次コピーのような印象を受けることがある。

●作品のクオリティーの違い
公演作品のレベル
クオリティ
革新的な芝居ができるかどうか。

●観劇機会の少なさ
機会の絶対数。
見たいものが見れない。交通費がかかる
観劇機会の量。東京都杉並区の小学生の観劇など。
催されるものの回数
絶対的な公演の数が違う。
量(機会)。
演劇の種類、表現の自由さ、周囲の理解、価値観
頻度

●観客
観客の雰囲気と劇団の制作力
お客様の観る力(評価)
作品の好き嫌いではなく、しっかり評価・評論する人が地方には少ない
人口と交通の便。集客のためにアプローチしたいターゲットが限られがち。
補助金。観劇しようとする客数
観る習慣のある人の分母が違う
興味を抱かない人が多い。演劇は特殊な人が関わるものだと認識されているようだ。
先述した、都会から輸入された商業活動こそが文化だ(テレビで映る規模)。すなわち、同様の活動を趣味でする人間が地元にいるはずがない、引いては商業主義だ(胡散臭いものだ)という、紋切り型のイメージが浸透しているところ。文化が生活に馴染んでいない。
観客層の広さ(地方はどうしても固定化してしまう)
お客様の数(多様性)や、情報の発信・受信に対する感度が大きく違うと感じる。
演じる人と観る人の演劇人口
都会の方が偉いと思っている

●周辺環境
劇場の数
ネットワーク
多くの場合、点であり面になっていない。然るに立体化出来ない。これは活動するものの問題ではなくアーツマネジメントの問題だと考えています。
文化コミュニティがしっかりしている
練習場所、公演練習をする場所がなかなかない
活動のしやすさ
インフラを含めて多くの面で

●その他
文化格差の定義は難しい。平均的な質はさして問題ではないかなと
格差と言うよりも、文化の違いだと思う。劇団の規模や客層、拠点の劇場によっても違うのを、格差とは言えない。

 地域で活動するうえでのデメリットとやや質問がかぶってしまっていたかもしれません。やはり金銭面・観客数・人材・モチベーションの違いが答えとしては多いでしょうか。文化格差の面で見ると、やはり行政規模の差が大きな違いだと感じます。まず劇場数などは、劇団ではどうしようもない問題です。特に劇場があるとないとでは、公演場所の問題以上に、コミュニティーの形成にかかわってくると思います。劇場に集まる人や団体によって文化団体によるコミュニティーが生まれて、新しい文化を形成する場となるという事があると思います。これがあるとないとでは大きな違いです。また、場所だけがあってもどうしようもなくて、一昔前の(今も?)箱もの行政のように、立派な劇場だけがあってもしかたがなく、そこで地域の文化資産を生み出す力を持っている人がいるのか?も大きな違いだと思います。まだ、大都市圏の文化を買って、持ってきて見るのが文化だと思っている文化行政担当者も多いのではないでしょうか。あと、個人的に一番格差を感じるのは、交通費だなと思います。交通費さえ払えば、好きな劇団・好きな映画を見られるのは間違いありませんが、大都市圏の人は、それを払わずに、自分だけ払ってるのかと思うのと、仕方ないの奥に、ちょっとした怨念がくすぶりたりなかったり。

大都市圏との文化格差についての個人的見解

 今回は、主に文化格差について見て行きました。
デメリットと被る部分も多かったですが、非大都市圏で演劇や、文化活動をするうえで、かならずぶつかる壁の一つではないでしょうか。そもそも、大都市圏に、地方から観客は行きますが、大都市圏の観客は、あまり地方に観劇に行きません。これはどうしようもない問題なのかもしれないし、どうにかすれば解決できる問題かもしれません。「ああ、あの地域の劇団はとても魅力的で、とても見たいのに、都会だからいけない(悲)」となれば、いいなという恨みがましい気持ちも、若いころはわりとありました。ただ、自分はこんなことをやっていて申し訳ないのですが、あまり地元に固執しているタイプではないので、地元で演劇を作って、いろんなところに行きたいな。とよく思います。大規模な公演だと大変ですが、小規模な作品を作ればそう難しい事ではありません。そして、いろんな地域の演劇人と話をしてみたいなと思います。それも演劇の楽しい魅力じゃないでしょうか。一人で、パソコンに向かってキーボード、パチパチするより楽しそうです。
 文化格差については、とても肯定的にはなれそうはないですが、日本の政治システムの問題でもあるので、地道に一票、投票するのが大事というか、それしかないかなと思います。

つづきます。
その12はコチラ【準備中】

劇作家 松永恭昭謀(まつながひさあきはかりごと)

1982年生 和歌山市在住 劇団和可 代表
劇作家・演出家
劇団公式HP https://his19732002.wixsite.com/gekidankita

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