Vol.1若の浮世なコラム 「コロナ休業、全記録」

休業に入るまで(3月上旬から4月6日まで)

年明けからちらほら耳には入っていた新型コロナウイルス。おばこにも影響し始めたのは3月上旬でした。
徐々に来客が減って、暇な状態が続いていました。
3月上旬、テイクアウトのおつまみを販売を開始。
インスタグラムで広告も出したけど、売れたのは全部で10個程度でした。
3週間程度続けてすぐ撤退

4月上旬。
週末の外出自粛要請が東京都から発表され、土曜日の営業を休止。
この時、初めてのインスタライブを開催。
内容は僕が歌ったり、愛読書を紹介したり、一緒にお酒飲んだり、女将が作るおつまみ食べたり、女将の爆食いタイム(後に名物コーナーになる)があったり。
これからどうなっていくか不安もあったけどなんとか楽しい夜を提供したいという思いでした。

4月上旬、感染者数の増加で二週間程度休業するという飲食店がちょこちょこ出始める。
この時の正直な心境をお話しします。

去年、おばこは僕が入って以来一番いい業績を出しました。
自分なりに色々頑張ってやってきた成果が出たと充実感を感じて一年をとじました。
今年はその勢いのまま、さらにいい業績を出せるようにと、正月休み中に頭を整理。
予算を組み新しい変革(設備投資など)に向けて、準備を始めていました。
決して安い予算ではなかったので、売り上げを出すことは必須
要するに、休業して予算を作るのに手こずり、設備投資などが遅れるのがだったんですね。
各業者にお見積もりをすでにお願いしていた事も心理的に拍車をかけました。
「予算作りたいから休みたくない。」
シンプルにこういう思いでした。

だけど、営業を続ける中で徐々に自分のそういう考え方が身勝手に思えるようになってきました。
そして来てくれるお客さんに対しても、素直に感謝することが難しくなってきました。

「来てくれてありがたいけど、今は来ないで。」
という気持ちでした。


毎日、迷いの中で続く営業。
だけど、ある日。その迷いを解く言葉が頭に浮かびました。
正確な言葉ではないけど、それはカミさんが一昨年買って読んでた本「漫画 君たちはどう生きるか」に書いてあった内容です。

「悩んでいるということは、正しい道がわかっているのに勇気が出なくてそれが出来ないということ。」

僕はこの時点で、
自分が人の命(お客さん、バイトさん達、自分たち)を大切にすべきなのに、お金や計画のためにそれが出来ず悩んでいる事を捉えました。

バイトさん達に休んでもらって、カミさんと二人でテイクアウトのみの営業をやる事を決めました。

テイクアウト営業(4月7日から4月27日まで)

4月7日、緊急事態宣言。

夫婦二人で始まったテイクアウト営業
慣れておらずとても手間取りました。
二人でやっているのと、元々時間のかかる料理などもありご不便をかけてしまった部分もあり、改善を考えては毎日オペレーションを鍛える日々
色々お勉強できる日々でした。
想定していたより多くのお客さんにご利用いただいてありがたかったです。

人に会えない生活もこの辺りから始まり、夜の営業がないといかに毎日が味気ないものなのか実感しました。
仕事を通して人と会えるっていうことがこんなに自分の生活のハリになっているんだっていう実感は今後の人生をより明確なものにしてくれたかもしれません。

テイクアウトブームのようなものも爆発的に広まりました。
インスタ覗くと美味しそうな料理のオンパレード。
美味しい料理はいかに人の生活を潤すかを実感しました。
外食は絶対に落ちぶれることはないと僕は思います。

同時に料理は誘惑のように、人の心を誘います。
テイクアウトで料理を楽しんで、自分の仕事(インフラに関わる人など)の励みにしてくださる事や、自粛中のストレス緩和に散歩がてらテイクアウトして帰るなどの利用は嬉しかったのですが、
不要な外出、というか割と遠い所にも出歩いている人たちがいる事もSNSで見受けられるようになりました。
おばこがそういう人たちの目的のお店になってしまう事をに思って4月24日にテイクアウト営業もやめてしまい完全休業を決めました。

この辺りに関しては、買う側も売る側もいろんな意見が飛び交っていましたね。正解はないと思います。
強いて言えば、それぞれの考えを貫き通せた人が正しいと思いますが、そこに優位性はないですね。

完全休業(4月28日から5月31日まで)

これは大変不謹慎な話ですが、実は完全休業を僕は喜んでいました。
やりたいけどできてなかったことが全部できると思ったからです。

僕は読書趣味ですが、積読している本もたくさんあり、これらを読む時間がたっぷりできました。

最初の一週間くらいは1日10時間以上読書する日々。
最高でした。
60歳過ぎたらこういう生活がしたいなーってぼんやり考えていたことが、32歳で叶ってしまいました。

だけど、それもそのうちつまらないモノになってしまいます。
アウトプットできないからです。

読書は次の行動のためにするもの。
少し本を読む人ならわかることだと思います。

アウトプットできないから、インプットしても意味がないと思うようになってしまいました。
それからは本を読もうとしても集中することが難しくなってしまいました。

仕方なく、マスクをして人気を避けながら散歩
ただ歩いてもつまらないので、ラジオを聞くようになりました。
20代の頃ものすごくよく聞いていたラジオですが、仕事が忙しくなるにつれ聞く時間をなくなり、いつしか遠のいていました。

久しぶりに聞いてみると、昔を思い出すっていうのもあって、すごくリラックスした時間に。
仕事の事ばかり考え過ぎて忘れていたものを取り戻すことができました。
仕事の事は一生懸命やっているけど、ちゃんと休むっていうかのんびりする時間もちゃんと取らないといけませんね。

休業中はインスタグラムYouTubeを本格的にやり始めました。
普段の営業中には見せない顔やじっくりに何かを伝える事は、やっていて面白いし、より僕らを知ってもらうのにいいツールですね。

僕らはありのままの自分たちで飾らず嘘つかず正直に商売したいと常々思っていたので、いい場所発見できたと思っています。

営業再開、これから「おばこ」(6月1日から)

6月1日、ついに営業再開を迎えました。

席数を減らし、営業時間も短縮しています。
当たり前ですが、売り上げは前に比べれば減っています。

だけど、前より一人一人のお客さんと話す時間は増えました
もちろん今は、対面で会話する事にはリスクがあり、本当はやるべきではないのかもしれません。

やり方は考えなきゃいけないけど、ここだけは僕の持論を通させてもらいたい。

人はコミュニケーションを避けては生きれない。
もちろん、技術が進めば対面でのコミュニケーション以外のツールはいくらでも生まれるでしょう。
だけど対面に勝るコミュニケーションは絶対にないです。
じゃなきゃ、営業再開してからお客さんが来てくれて言葉を交わす事で僕の中に生まれているこの喜びを説明する事はできないです。
自粛中に窮屈していた思いを説明する事はできないです。

おばこはコミュニケーションのお店です。
僕の料理の技術じゃ、他の美味しい料理がある飲食店には勝てません。
おばこは料理を楽しむのがメインのお店ではなく、人と人が繋がるお店です。

これからはこのまま席数を減らしてやってもいいのかなって思ってるくらいです。

来てくれたお客さんと店員としてではなく、人として繋がって楽しい夜を過ごしてもらう。
まるで家族のように繋がり、実家のように落ち着けるような、そういう空間を目指していきたいと思っています。


良い飲食店を目指していた前とは少し違う方向に進みます。
賛否両論を生むかもしれませんが、これはこれからの「おばこ」の挑戦です。

コロナは多大な被害を人類にもたらしました。
だけどやられたまま何にも得ず、何も変えないなら本当に無意味な経験になってしまいます。
僕は今回の事で人間らしさを改めて考え直した
以前のように競争トゲトゲしく作られている社会に戻るのではなく、
人のありがたみを感じながら少しずつお互い成長できる社会を目指したいと思う。

資本主義とも共産主義とも違い、かつそのどちらも否定せず、
良いところ抽出し、今までなかった新しい価値観を考え創り出すことができないかと思いふける次第です。

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