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日本語学校で働き続ける理由

年度末真っ盛りの三月。最終授業を迎えるいくつものクラスがあります。そのなかのひとつに一年間、90分×2を週に2回教え続けたクラスがあり、それも先週の水曜日で終わりました。担任ではないけど、もう担任のような気持ちでこの仕事に関わっていました。こんなふうにじっくりクラスに向き合うのは久しぶりのことで、とても幸せな時間でした。

このクラスではありがたいことに特別に自由に任されていたので、テキストを変え、テストを変え、評価方法を変え、校外学習を取り入れ、自律学習を取り入れました。その全てに学生さんは真摯に取り組んでくれました。

教育とは結果すぐに出ないものですので、それが良かったかどうかはわかりません。ただ、手応えとしてはこの方向でいいとおもっています。大事なのは対話と体験と自律、この3つをうまく組み合わせていくことがこれからの日本留学のクラスのあり方だと信じます。

最後の授業ということもあり、学生さんは口々に感謝の言葉をくれます。もったいないくらいです。感謝されることをこの仕事の動機にしないことを自分自身のわきまえにしてきましたが、この3月の卒業時期に特別な言葉をもらうのはやはりうれしいことで、自分の心の玉手箱のなかにしまっておきたい言葉を今回もいただきました。

何より、授業中、難しい顔をして内職に励んでいた人や、なかなかクラスに馴染めなかった人たちが晴れ晴れとした表情をしているのをみると、清々しい気持ちになります。やはり、その人の大事な時期にほんの少し関わららせてもらえることは貴重なことで、その機会を与えられていることに感謝をしています。

そして、そのことが教師としてだけでなく人間としての自分自身を成長させていると実感しています。教えているつもりが、反対に教えられていたり、育てているつもりが、逆に育ててもらっています。わたしが今までいた日本語教育の現場で、それを強く感じることのできるのは日本語学校だけなんじゃないかとおもうのです。だから、日本語学校はおもしろいし、やめられないなと思った先週の最後の授業でした。

そして、そんな学生さんたちに送った最後の言葉をここで紹介します。

なまけものになりなさい。

この一年みなさんと勉強ができてとても楽しかったです。まずそのことにお礼を言いたいと思います。わたしの新しいさまざまな試みをみなさんは受け入れてくださいました。ありがとうございました。

みなさんは春からの進路に期待を膨らませていることと思います。これからの活躍を期待するとともに、この教室で学んでいたそのままのみなさんでいてほしいとも願っています。今のいいところを失わないで、と。そして、勇気を持って人生を歩んでください。わたしもそうします。

人生の究極の目的は「自分になること」だと思います。

人はついつい誰かからの見た目や批判や賞賛を気にして行動してしまいます。人から認められるために努力します。確かにそれも大切でしょう。しかし、それでは他人の人生を生きていることになってしまいます。大切なのは「自分がどうしたいか」です。

人は自分の声を無視しがちです。疲れているのに、働いてしまう。食べたくないのに、食べてしまう。遊びたくないのに好きでもない友人と出かけてしまう。

そんなときこの言葉を思い出してほしいです。

「なまけものになりなさい」

この言葉は漫画家水木しげるの言葉です。彼は戦争に行かされ、銃弾を受け左手を失いました。戦後日本で漫画家として活躍しました。売れ出したのは40を過ぎてからでした。「ゲゲゲの鬼太郎」で有名ですね。

人生は有限で忙しいです。だから、意識的に「なまけもの」にならないと自分を見失ってしまう。お金や他者からの承認に惑わされる人生はつらいものです。「なまけたい」と思う自分に時々は正直になって、自分の声を聞きそれを勇気を持って実行し、自分になってください。少しずつ自分になっていくみなさんにまた会えたらうれしいです。

2024年3月13日


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