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「5分早く迎えにきて」

息子が保育園の頃「他の子みたいに早くお迎えに来て欲しい」とせがむのをなだめるために「5分早く迎えに行くから」と言ったことがあった。

それ以来息子は、小学生になって学童へ行くようになった今も毎朝「5分早く迎えにきて」と言い続けている。

小さな子には5分がどのくらいかなんてわからない。「早く」迎えに来てくれるなら何分でも良かったのだろう。

日が落ちるのが早くなってくると、まだ息子が保育園だった頃のある秋の夕暮れのことを思い出す。

あの日も息子は「5分早く迎えに来て」と言っていたが、結局はお迎えが遅くなってしまった。

自転車に息子を乗せて真っ暗な道を走っていると、後ろから小さな声が聞こえた。

「朝、お母さんを困らせたから迎えに来てくれないのかも。って思った」

「そんなこと考えて待ってたの?心配だったでしょ」

「うん」

「そんなことないよ。遅くなってごめんね」


たった5分。
一本早い電車に乗るだけでよい。

でもそれが出来ない日の方が多い。
早く帰る事が「出来ない」んじゃなくて、早く帰ろうとする「努力が足りない」のかもしれない。

0歳で保育園に預ける時、自分の子どもより大事な仕事があるだろうか?って泣いたのに…

私はなんですぐに忘れちゃんだろう。

そんなことを思ったっけ。

また秋がきたね。

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