チョコレート

今日は朝から雪が降っていて、40デニールのタイツではとても耐えられそうにないほどの寒さだ。息を吸い込むたびに肺が凍りそうになる。薄い水色のカーディガンをブレザーの袖から引っ張り、両手をすり合わせ、息を吐きかける。どんなに寒くても、やせ我慢だと笑われても、今日だけは少しでも可愛い私でいたい。

2月14日、今日は恋をしている人にとって、無視できない一大イベントの日。

例にももれず、私も2月に入ってから、そわそわと落ち着かない日々を過ごしてきた。美味しいと思ってほしくて、何度も練習してきた生チョコレート。赤いリボンをかけて、不慣れなりに試行錯誤してラッピングをしたこのチョコレート。精一杯込めた気持ちだけは、誰にも劣らないと断言できる。

まだ誰も来ていない自転車置き場は、しんと静まり雪が降る音だけがしている。あの人は、部活の朝練があるから他の生徒より登校時間が早いし、さらに自主練もするから、野球部の誰よりも早くグラウンドにやって来る。

心の中で、何度も何度も練習してきた言葉は、ドキドキしすぎた心臓の音でかき消されそう。早く来てと思う気持ちと、まだ来ないでという気持ちがせめぎ合い、心の中はそれはもう大変なことになっている。思わずうつむきたくなるが、ぐっとこらえて前を向く。

がしゃんと音がして、そちらを向くと、あの人が来ていた。寒そうにネックウォーマーに顎をうずめ、自転車から降りて鍵をかけている。彼の一挙手一投足に心臓が揺さぶられる。彼が私に気づくと同時に、私は足を大きく踏み出した。



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