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嘘の話

これは嘘の話。

私は16歳の時に大学生の人が好きだった。彼は大学のサークルで演劇の舞台をしていた。とてもとてもかっこよかったのだ。でも自分は高校生で、大学生なんてとても大人に見えたから、片思いだった。彼の舞台をいつも楽しみにしていた。何回か観に行くうちに顔を覚えてもらった。私は手紙で好きだと伝えたけど、彼からは友達でいようと言われた。たぶん。

2回くらい2人で会った気がする。彼は舞台に夢中でお金も時間もない。と私には言う。確かファーストフード店でごはんを食べただけの気がする。ああ。喫茶店にも行った。今はもうない店だ。

私達は友達のまま、同じタイミングで東京に出た。たまたまだ。彼は東京で仲間たちと劇団を旗揚げするという。私は大学への進学だ。私はもうちゅうぶらりんな関係に飽き飽きしていて、もう、どうでもいいやと思っていた。新しい生活の方が大切なのだ。私も。

しかし、彼は付き合おうという。ふーん。まぁ、いっか。恋人らしいことはしたっけな?キスはしたし、彼が初めて私の家に泊まりに来た時に、私と同じSALAのシャンプーの香りだったのが嬉しかった。遊園地にも行ったけど、全然楽しくなかった。彼はお金がなかったし、私もそれを知っていたから。知っていたから色々買ってあげた。電車賃や冷蔵庫のなかの食材やビールとか。

彼の劇団の人たちは年上とは思えないくらい、いま思えばぞんざいに私を扱った。誰か買ってきたケンタッキーを私も食べれば文句を言われ、誰かの家でごはんを食べる時は必ずビールを買ってこいと言われた。とにかく、金がないということはこういうことかと知った。みんな余裕がないのだ。私も協力をした。劇団員のスタッフになってチラシを他の劇場に配りに行ったり、チラシを置いてくれる劇場に電話して送ったり、会費を払ったり。いま思えばかなり怪しい団体である。

付き合っているはずの彼は何もフォローしないし、更に追い討ちをかけるようなことを私に言う。もっと演劇の勉強した方がよいとか。もっと音楽の勉強した方がよいとか。それは私じゃなくてお前だろ。と言えたら良かったのに。私の団体嫌いはここから由来するかもしれない。

結局は別れた。短い期間だった。私には大人と劇団に対する嫌悪感だけが残った。

別れた数ヶ月後にその彼から電話が来た。なんの用事がはっきりしない内容だった。クリスマスが近かったから彼も寂しくなったのかもしれないが、なんて身勝手な奴だと「二度とかけてこないで」と一方的に電話を切った。

いま彼らは何をしているだろうか。どこかで野垂れ死していてくれたらと思う私は地獄行きかもしれない。

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