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血糖値が高すぎる人は運動しちゃだめ!?


A:糖尿病療養指導ガイドブックによると空腹時血糖(10時間以上食事をとらない状態の血糖値)が250㎎/㎗以上だと運動療法は控えることが推奨されています。



 なぜでしょうか?





空腹時血糖が高いということはどういうことなのか。


 血糖値とは血中のブドウ糖のことで、食事の量や、内容によって変化します。空腹時血糖とは空腹時、絶食状態の血糖値で健常者では80~110㎎/㎗が正常値です。
 食後血糖とは食事後2時間後の血糖値で、正常は140㎎/㎗未満にコントロールされています。血糖値をコントロールする代表的なホルモンはインスリンですが、臨床的に空腹時血糖を調節するのがインスリン基礎分泌、食後血糖を調節するのはインスリン追加分泌と呼びます。
 2型糖尿病の特徴は、空腹時血糖に比較して食後血糖が高値を示します。この高血糖を調節するために大量のインスリンが分泌されますが、この過剰分泌状態が長く継続すると、インスリンが効果を発揮できない状態となります。これはインスリン抵抗性と呼ばれ、インスリン抵抗性-肥満-高血糖スパイラルを糖毒性と呼びます。糖毒性が長く継続すると、徐々にインスリン分泌は低下し、それにともない基礎分泌も低下することで、空腹時も血糖値が高い値を示すようになります。つまり空腹時の血糖値が高いということはインスリン分泌の絶対量の不足を意味するのです。


インスリンとは…


 インスリンは身体の中で血糖降下作用を持つ唯一のホルモンです。膵臓から分泌されて血糖値を一定の値にする役割を持ちます。インスリンの役割は血糖値を下げることですが、詳しくいうとブドウ糖を利用・分解することで血糖値を下げています。したがって血糖値が高いということはブドウ糖が利用できていないことを意味しています。





血糖コントロール不良時の運動は血糖を上昇させます。


 血糖コントロールとは高血糖を改善して、血糖値をできるだけ正常な値に近づけることをいいます。日本糖尿病学会のガイドラインでは食事の時間と関係なく測定した血糖値で250~300㎎/㎗以上の高度な代謝異常の場合、薬物療法が優先されることが示されています。前項で示した通り空腹時血糖が250㎎/㎗以上の場合はインスリン分泌が枯渇した状態です。インスリンが枯渇した状態で運動をすると、ブドウ糖の代わりに、脂肪の分解が高まります。脂肪は分解されると「ケトン体」という物質となり、血液を酸性にします。この状態をケトアシドーシスといい最終的には意識障害などが引き起こされます。
 またケトアシドーシスを呈する患者では、運動により血糖値が上昇することが示されています。



まとめ


 空腹時血糖が250㎎/㎗以上が運動の禁忌になる理由は、インスリン分泌が欠乏状態にあるためです。インスリンは糖を利用するために必要なホルモンなので、インスリンの欠乏は糖の利用が制限させることを意味し、その状態で運動をすると脂質の利用が異常に亢進し、その結果ケトアシドーシスが惹起されます。
 血糖がしっかりコントロールされた状態での運動はインスリン抵抗性を改善し、血糖値を低下させる治療手段です。



参考文献
糖尿病治療ガイド2022-2023 文光堂
糖尿病療養指導ガイドブック2021 メディアルレビュー社
心臓リハビリテーションQ&A 伊東春樹

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