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港町ジェッダに初めて日本のラーメンが上陸した話

サウジアラビアのジェッダにMASHI NO MASHIがいよいよオープンした。ジェッダはF1も開催するサウジアラビアの有名な港町だ。サウジのマイアミなどとも呼ばれている。当初オファーを頂いたときは、リヤドじゃなくてジェッダで果たしてMASHI NO MASHIが通用するか?と僕は思ったのだが、新設された新しいビーチ・クラブの中にラーメンがあっても面白いだろうということで、進出を決めたのだった。リヤドは訪れたことがあったが、僕はジェッダは初の訪問になった。5月半ばにオープンしてから二週間経ち、ついに僕も現地入りである。なにせ世界最大の箱だ、ラーメンだけではなくもともと目指していたフルダイニングエクスペリエンスをラーメンと餃子を主軸に構成していく。ゲストたちは長い人たちは2時間、前菜から始まり、ラーメンへと繋ぎ、そしてデザートまで楽しんでから帰っていく。香港の湾仔の小さな店からスタートしたMASHI NO MASHIが世界で5店舗と拡大した。ここジェッダ店ではスタッフを20名抱える規模で、キッチンサイズもライン設計などをみても完全にレストランに変身した。いってらっしゃいの掛け声、そしてお馴染みの合いの手のしゃいのしゃいも、見事にエコーをして現地の食通を唸らせている。

ヘッドを張るのがマレーシアのホザだ。香港、そして日本にも修行をしにきて、長い期間の準備を経て彼がヘッドでこの多国籍のチームをまとめていく。基本レシピが通用しないのがここ中東だ。アルコールが入っているものはすべて使えない、なのでみりんが酒が・・・とレシピどおりに作ったとしても全く異なる味に仕上がってしまう。そこを丁寧に因数分解して、再度レシピ化していくというのが僕の今回の役目だ。用意された時間は12時間だ、その中でキッチンでホザとつきっきりでレシピを分解しながら修正をかけていく、またホザからのアイディアがあったメニューも自分なりの料理に戻す作業も同時に行う。調達チームにはサージブレッドを作ってもらい、急遽シュワルマも開発するなどもはや空中戦だ。この新しいメニューがスタートするのが明日だ。すでに200組の予約があり、ラインフローももう一度直さないといけないのだが、ホザはマシーンである。12時間働き続けておそらく疲れているだろうに、「ボス、最後にクレームブリュレの抹茶とマダガスカルのバニラビーンズで作ったジェラートを味見してくれないか?」といってくる。こんな熱いスタッフが作るレストランは当たり前だが、最高なのだ。

嬉しかったのは2019年のリヤドシーズンで何度も足を運んでくれた人たちがやってきてくれたことだった。その中でもラーメンをおかわりして、そして3度足を運んでくれた女性がいた。久しぶりの再会に握手すると「この間食べた一杯は、リヤドで食べたものとちょっと味が違ったの」という。調味料の配合がビシッと決まっていなかったことを伝えて、今日チューニングし直したものを食べる?と聞くと、あたりまえじゃない!という笑顔で言う。このジェッダの高温多湿の気温、そしてツアーセッション後にスタッフで食べるあの旨いラーメン。オーセンティシティを奪わずに、アルコールが使えない調味料の中で呻るような荒々しさを表現する。難しいことはない、ラーメンらしさをしっかりこの地で表現すること、それを愛情を持って一杯に向き合うことだったりする。黄色いレンゲで一口すする。彼女の眼が大きくなり「これよ、これ!」と叫びながら握手をしてくる。リヤドのあの味が戻ってきたと嬉しそうにラーメンを味わっている。間違いなく中東だけじゃなくて、ヨーロッパ全体でも一番旨いラーメンだと自負している。

ULTRA WAGYU RAMEN AT MASHI NO MASHI JEDDAH


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