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世界一の昆布を訪ねて羅臼へ(前編)

羅臼に来ている。どうしても見てみたかった昆布漁、突然ぽこっと空いた時間で訪れる場所を決めるのは早かった。僕がガキの時に初めて買ったのが羅臼昆布だったと思う。単純に強そうなネーミングだったというのが理由だ。そこから僕は羅臼フリークとなり、常に羅臼の昆布で出汁をとっていて、出涸らしの昆布は洗濯バサミで乾燥させて糠床の餌にしていたりこする。羅臼で昆布漁をされて55年になる井田一昭さんはこういう。大変な仕事だけど、待っている人がいる仕事というのは素晴らしいもんです。羅臼漁協の昆布漁トップは昆布愛に溢れていた。

そんな彼が見せてくれたのはとれたての昆布、そして一年ものの昆布、3年、そして5年ものの昆布だ。蔵で寝かした昆布の存在は知っているし、使ったこともあるが、果たしてどこかで違うのかそこまで体験できていなかったが、今回特別にバーティカルなテイスティングをして初めて理解できた。羅臼の昆布はアミノ酸量が他の真昆布や利尻と比べても群を抜く。なぜか?その秘密は北から南へ流れる海流が育む素晴らしい素材、そしてその素材を引き出す工程にある。2年かけて育った昆布を水揚げしてから100日間、23の工程で熟成かけた昆布、その過程をこのバーティカルテイスティングで味見をしながら違いをみていく。

普通の昆布が6-7の工程だ。羅臼の違いは湿りという工程からだ、一度乾燥させた昆布を夜露に湿らせる。そこから奄蒸(あんじょう)という旨みを出す作業をかけていく。この羅臼特有の工程を3度繰り返して行く。水分量が高いところから乾いたところへ浸透圧げで交換されていく中で、旨みが増していく。昆布を広げると白い粉が広がる。指で擦ると薄くなる白、そして指で擦っても紋様のように動かない白。動く白は塩だという、そして動かない白が旨み。そう井田さんがつぶやくとハサミでその二つの部位を切ってもらう。食べてみると明らかに違う。前者は磯の味、後者は旨味だ。

昆布は蔵で寝かすことができる。家庭でも畳の部屋で、置いておくと自然に熟成されていく。貯蔵庫は湿度が70%で室温が18度ぐらいのキープされていた。昆布の水分含有量は大体18%ぐらいとおう。熟成された昆布をまずは嗅ぐ、この時店で圧倒的な差が生まれる。そしてハサミでチョキチョキ、少しづついただく。今まで食べていた昆布は一体なんだったんだろうと思う、圧倒的なパワーある旨味、そしてなんともいい得ぬ余韻。これが本物かーと僕は唸った。明日はいよいよ長年の夢だった昆布漁に出向くのだ。

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