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中東固有種の羊でジンギスカンを作ってみた

ワールドツアー中、ユニフォームとエプロンだけは常に持って行くようにしている。今日は「たらふく食っていってくれ」とゲスト側で呼ばれていたのだが、どうしても何か作りたくなって現地のキッチンを借りることに。包丁も食材も持ち込みゼロだ、現地の食材のみで作っていく。料理は多少の制限があったほうが面白い。これが頭の整理にもなってとてもいいのだ。僕が調理したかったのはナイミーという現地のの固有種の羊だ。英語ではAwassiというこの種の羊は、成長がとても早く4ヶ月で体重が50キロになる。この地方の気候に合っている羊なのだが、生産者が純血の3ヶ月半の子羊をつぶしてくれて、一頭分をドカンと送ってきてくれたのだった。


まずは部位別にキッチンで食べる。臭みが全くなくテクスチャーが面白い肉だ。僕はマトンとか濃い味の羊が好きだが、羊は食べられない人が多い。それがこの独特の香りだ。それはグラスフェッド特有の香りなのだが、このナイミーは若いのと同時にグレインフェッドも上手く混ぜながら肉質向上に取り組んでいる。すぐに特製のソースを作ることにした。YAKINIKUMAFIAのベースになるソースの土台に僕なりにこの肉に合うアクセントを入れていく。頭の中では完成系が出来上がっているのだが、弱火で煮込みながら3時間ほどで完成するまで、ちびちび味見しながら味がまとまってくるのを待つ。このソースに名古屋のどて煮みたいな感覚で焼いたばかりのナイミーをどっぷりつけるのだがこれがまた旨い。おそらく現地の人が初めて食べるジンギスカンだ。ソースを作っている傍で肋の骨でスープを取る。そのスープをベースにカレーを作ることにした。ちょうどバスマティも発見したことなので、バターとアニスなどを入れて炊き上げる。

モーリシャスからやってきたシェフと仕込みながらあーだこーだと話していく。「料理っていうのは永遠の学びだよね。色々なスタイルがあって毎回勉強になる」と言う。フランスの名店を渡り歩いた彼の料理はまた素晴らしい。とにかく料理をするだけで、出会える人たちの幅が広がるのだ。そして彼らの料理をキッチンで吸収していける。幸せの無限ループが料理人の世界だ。

カレーの具は一度炭で火入れした肉を突っ込む。みっちりインドで仕込まれたスパイスの感覚と妄想喫茶で毎回仕込んでいるあのカレーのイメージ。そこに40度を超える灼熱の暑さに見合うスパイシーなサラッとしたカレーに仕上げて行く。二品ともに3時間程度で完成だ。それを振る舞っていく。

普段食べ慣れているナイミーを現地の方々が、僕の料理でどう感じてくれるのか?その反応が見たかったというのがキッチンインしたもう一つの理由だったりする。BBQソースはえらい好評でレシピを教えて欲しいと何人にも聞かれた。そしてカレーの反応は…行列ができて瞬殺だった。この味は世界で通用するなぁっと感じた瞬間だった。ソースは水を含んでいないので、瓶詰めしてキッチンに残した。数ヶ月間はエイジングしていくことだろう。みんなの笑顔と汗びっしょりになったあとで飲むビールがまた格別なのだ。

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