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この日曜日、あなたは珈琲と咖喱に向き合うのです。

井崎英典という男がいる

第15代ワールドバリスタチャンピオンにアジア人として日本人として唯一頂点に輝いたコーヒーの伝道師である。そんな彼の書いた書籍に出会ったのは、コロナ禍への対策が少し軌道にのってきた去年5月ぐらいのことだった。

早速彼のコーヒーメソッドを試してみた。これがなかなか美味しかった。何よりも面白かったのは、全てが数式で方程式になっているポイントだった。再現性があるものを考えられるということは、非常に頭がいいということだ。

そしてyoutubeで彼の動画を観てみた。この井崎という男は、しゃべりも上手かった。

僕は基本的に自分から人に会いたいという気持ちがない。不思議なことに僕の場合、なにかの偶然のめぐり合わせで会うことが多いからだった。非常に珍しく、この井崎英典さんに会いたいと思った。そこでコンタクトを取ったのがうちの親父だった。SCAJ(一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会)という団体の立ち上げに関わった僕は、その代表理事にイタリア好きだった親父を紹介した。大学にて経済発展論を教えていた親父は、コモディティのスペシャリストだった。当時、エチオピアの最貧地域に住むというフィールドスタディをして、こんな哲学的なことを言っていた。

寿人、貧しいところに住むと初めて見えてくるものがあるんだよ

ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)にも毎年夫婦で参加していた親父から、昔丸山珈琲にいた日本人が初めてチャンピオンになったと聞いたことがあった。それが今思えば、井崎さんだったのだ。

そこから出会ったのが井崎さんだった。小さなオフィスにお邪魔して、そこでフルカッピングをさせていただいていた。目がキラキラとしていて、僕と同じくやたら声がデカかった。

そこから僕らは一緒に旅をすることになった。この少ない期間の中で一番旅をした一人になった。彼との旅は楽しかった。僕は人の数倍、食事を食べる。南部鉄器を求めていても食と酒を探す。たいていの人は一緒に旅をすることが困難だ。なぜならずっと食べているからだった。盛岡を旅して気づいたことは、彼は僕以上に食べるということだった。そして常にお腹が空いたと呟いている逸材だったのだ。

彼からはコーヒーについてのアップデートを英才教育してもらったように思う。何よりも僕が彼のことを好きだなぁっと思うのは、東京駅で待ち合わせしたときに缶コーヒーを持って飲んでいることだった。そして旅中、車を止めて目指すのはセブンイレブンだった。

「猿田彦のこの監修いいですねぇ、いい味だしてる。セブンのこの赤シリーズはさすがですよ、二度抽出しているし、なかなか普通のコンビニには出来ないし。普通に美味しい。何よりも豆がフレッシュ。」

とにかく、それぐらいコーヒーが好きなのだった。僕も肉好きだが、WAGYUMAFIAクラスの和牛を食べていると普通の肉食べられなくなるでしょう?と聞かれるのだが、どこでも食べる。プロで嫌いなのは自分が扱っているものしか信じない人たちだった。この人たちと付き合っても宗教話を聞いているようで、何も生まれない。

コーヒーが好き。肉が好き。そのぐらいがちょうどいいのだ。

そんな彼と僕の共通の趣味があった、それは日本の古き良き喫茶店だった。旅先でもおしゃれなコーヒー屋さんには行かずに、街に古くから存在している喫茶店に足を運ぶ。何よりも僕らはその雰囲気を味わうのだった。

そんな喫茶店をいつか開きたいなぁっと話している。井崎さん曰く、喫茶店といえばカレーらしい。僕は喫茶店でカレーを食べたことはあまりないのだが、カレーを食べることも作ることも好きだ。好きすぎてインドを回ったことがあるぐらいだ。いつしか出来るかも夢の喫茶店、その確かな導線として僕は彼と一緒に「珈琲と咖喱」という喫茶店を一日限りで作ることにした。この日曜日、3月14日の昼間だ。

僕らの他愛もないコーヒーとカレーと肉への愛情トークも交えて、濃厚に抽出した一時間を贈りたいと思う。カレーは僕が旅した南インドで生まれたカレーを出す予定だ。スパイスもその時に持ってきたものを使うので、僕にとってもタイムスリップだ。井崎さんはライブでブレンドしていくという彼らしい企画も用意してくれているらしい、彼のコーヒーは唯一無二の味だ。ぜひ日曜のブランチにでも遊びに来てほしい。

最後に井崎さんの親父を紹介してくれた、うちの親父に感謝を込めて。


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