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2位ではダメなんですか? #85 ウィニングエッジ理論

将来の望ましい状態を実現するために目標を掲げます。
目標とは、決して、漠然と取り組んでいては実現させることはできません。
また、実現させようと努力したところで、実現が保証されているものでもありません。
それだけに、如何にして、実現の可能性を高めた取り組みをするのかもマネジメントでは重要となります。

あるセミナーを受講した際に、その冒頭で、ウィニングエッジ理論という考えを教えていただきました。

競馬のレースで、1位と2位の差が、鼻の差の僅かであったとしても、その賞金の金額は10倍も20倍も違ってきます。
ここから、事象としては大きな差がなくても、結果は大きな差を招くという意味となります。

高い目標を掲げてしまうと、プレッシャーを感じてしまうので、妥協して低い目標を設定してしまう人がいます。
しかし、人は、妥協した目標を掲げると、努力も妥協してしまう傾向があります。
目標を、確実に達成するには、更に高い目標を掲げる必要があります。

例えば、100点満点のテストで、80点を取ることを目標に勉強した人は、理論上、100点を取ることはありません。
更に、80点を取ることを目標に勉強したからと言って、80点を取れる保証はありません。

しかし、100点の満点を取ることを目標として勉強した場合は、80点を取れる確率が高まるはずです。
結果的に、80点を目標とすることと、100点を目標とすることでは、大きな格差を生むことになります。

政府が歳出削減を目指して、2009年に実施した施策に事業仕分けがあり国民からも注目を浴びました。
その中で、次世代スーパーコンピューター開発費用について、文部科学省などの担当者らが「世界一を取ることで(国民に)夢を与えるのが、プロジェクトの目的の一つ」と説明しました。
対して、「仕分け人」であった国会議員が「世界一になる理由は何があるんでしょうか?」と聞いた後、「2位じゃダメなんでしょうか?」と発言しました。

まず、この様な費用対効果を論じる場に、夢という感情的なものを目的として掲げてしまった担当者側も問題だったかもしれません。
実際、質問した国会議員は、当時を振り返り、「1位になればどんな研究ができるのか、国民のメリットは何か、2位になる不利益は何かと問う質問だった」と説明しています。

ウィニングエッジ理論からしたら、2位で妥協しようものなら、減額された予算以上に開発成果が低下する可能性があります。
僅かでも良いので、2位に差を着けて前に出る意識は決して捨ててはならないと、あらためて思います。

実際、この事業仕分けを契機に、従来の漠然と1位を目指すという考え方から、その後の後継機は、2020年に計算速度世界1位を獲得し、他の指標でも1位となり4冠に輝いたそうです。

更に、その後の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて飛散シミュレーションを高い汎用性と優れた計算速度から迅速に行い社会へ大きく貢献しています。
その起爆剤となった、「2位ではダメなんですか?」はある意味、名言だったのかもしれません。

成長するためにも、決して妥協を許さないウィニングエッジ理論は、常に意識していたいと思います。

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