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映画「ブレードランナー」の原作を読んだ感想

SF小説においては古典中の古典、名作中の名作ですが、なぜか今まで読んでいませんでした。もちろん映画の方は「ブレードランナー」も「ブレードランナー2049」は見ているし、何なら年に2-3度ぐらいは見返しています。

小説のジャンルとしてはSFとミステリーが突出して好きなのですが、ディック作品の中で映画化されたものは避ける傾向にありました。

なんでだろうと考えていたら、多分主役のキャラが強過ぎるのかもなぁと思いました。
・「ブレードランナー」:ハリソン・フォード
・「マイノリティ・リポート」:トム・クルーズ
・「トータル・リコール」:アーノルド・シュワルツェネッガー

どの映画もビッグスターが主演をしており、また制作年代に関わらず、どの作品も映像が素晴らしい。ブレードランナーなんて1982年の作品ですからね。

しかし、ブックオフに立ち寄った時に映画化を機に訳が改定された版の早川書房版が在庫に出ていて、思わず手に取っていました。

ディックの改訂版って表紙が黒いので分かりやすいですね。

読後の感想

文庫本で300ページ超です。SFとしては長くはないですが、読み応え抜群。

映画を何度も見ているのでストーリーは頭に入っているし、映画に対して原作が陳腐だとイヤだなぁと思いながら読み始めていたのですが、いい意味で裏切られました。

映画化作品あるあるですが、最初のアンドロイドを殺すところからして映画と違います。

登場人物やアンドロイドを作っている会社などは共通していますが、大筋、細かいところで映画と原作はかなり異なっています。

映画の方は超ざっくりあらすじを書くと
・火星にいたアンドロイドが脱走した。
・ハリソン演じるリック・デッカードは賞金稼ぎのアンドロイドハンターとして、脱走アンドロイドを殺しに行く。
・アンドロイド制作会社に行った時レイチェルがアンドロイドであることを見破る、後々ラブな展開に。
・何体かのアンドロイドを殺した後、ラスボスとの戦いに。
・ラスボスにハリソンの指を折られたりして、もう無理かもと思うが、意外な盲点があり、エンディングへ。

映画はあの雨が降る中のエンディングがとてもシネマティックで、アンドロイドの苦悩、それを見やるハリソンの表情がとてもよく、2時間の映画としてかなりの見応えと満足感を与えてくれます。

一方の原作ですが、リック、レイチェルという名前は同じ、役回りも同じものの、そもそもリックには妻がいるし(映画ではいないからこそ、レイチェルと懇ろになる)、最初にしとめようとするアンドロイドなんて罠をしかけられてリックが殺されそうになるし、2体目のアンドロイドは世界的な人気を誇るオペラ歌手だし、なんなの、この違いは?と、戸惑います。

しかし、こういうのはよくあることなので、映画とは別物として読み始めると、これが実に面白い。映画を覚えているので、最初のアンドロイドとの戦いはあそこだよなぁと思っていたら、全然違う場所、環境で遭遇し、やられそうになる。

そして、その描写がリアルというか、「うぉ、まじ?」と思わず声を上げてしまいそうになるぐらいの臨場感がある。

こんなのが300ページに渡って続くので、文字通り「ページを捲る手が止まらない」久々の小説でした。

原作では合計6体のアンドロイドと戦うことになりますが、映画と違って、あまり苦戦することなく、わりとあっさりしてる。

しかし、逆に映画ではあまり描かれていないリックのプライベートの生活や、リックの思想、考えがしっかり描写されていて、ひとりの男の物語として立派な小説になってます。映画の方ではハリソン・フォードはほとんど自分の考えとか喋らないもんね。もっと言葉出せとか言いたくなる。

映画はやはりあの圧巻の映像によって見るものを圧倒しますが、原作ではアンドロイドや他の人間たち(およびリックの妻)の心理描写が秀逸で、その心理を追っていく時間がとても楽しい。これこそ読書の喜びと思いました。

いやー、面白かった。やっぱりSF小説っていいですよねぇ。

ちなみにディックの映画化作品だと
・トータル・リコール(追憶売ります)
・マイノリティ・リポート(マイノリティ・リポート)
・ペイチェック(報酬)
・スキャナー・ダークリー(暗闇のスキャナー)
あたりは原作も読んでいます。いずれも世界観は踏襲しているものの、細部やエンディングは映画と原作では結構違います。マイノリティ・リポートなんて「全然違うやん!」と思ったものです。

中学の頃からSF好きで、中3の時国語の先生に「今、この新作めちゃくちゃ面白いぞ」と勧められた「ニューロ・マンサー」が最初の10ページほどで挫折し、大学になってようやく読破できた軟弱者ですが、個人的に好きな作家ベスト3は
・フィリップ・K・ディック
・ラリィ・ニーヴン
・ロバート・ハインライン
です。ハインラインはまぁそれほどでもなく、上2人が圧倒的に好きです。

ニーヴンの作品とか映画化してくれないかなぁ。特にリングワールド。何度も映画化の話が出てはポシャっているようですが、死ぬまでにはあの世界の映像をぜひ見てみたいです。

あとはこちらも何度も映画化の話がポシャっている「ニューロ・マンサー」も見てみたい。どちらも今のCG技術なら映画化できそうな気がするんですけど、どうでしょう。

あと、ハインライン物だと「輪廻の蛇」が映画化された「プリデスティネーション」がめちゃくちゃおもしろかった。こちらもアマプラにあるので何度も見ています。いわゆるタイムループものですが、主演の2人の演技が圧巻です。こちらは原作も映画も結構似ていて、原作に忠実に映画を作ったんだなぁということが分かります。

リドリー・スコット、ジェームス・キャメロン、クリストファー・ノーランあたりが「リングワールド」作ってくれないかなぁ・・・。というニーヴン好きによるディック読書感想文でした。

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