生誕と人生と

27歳になって余命あと3年になった。

22歳の時を思い出す。

私には異性の親友がいる。
出会ったのは22歳のときで、いろんなことを一緒にした。
オール・セックス・台本読み合わせ・散歩・カラオケ・ゲーム・食事・映画を見る・買い物…
数えきれないくらいなんでもした。
哲学的な話もたくさん話した。
きっかけはあっちが私に好意を抱いてくれたことだったけれど
それがいつの間にか友情に、友情よりも愛情に変わった。

君は魅力的だよ。と、いまでも言ってくれる。
私は彼とは付き合わないし、あっちも私と付き合おうなんて思ってないと思う。
だけど、お互いがお互いを本当に好きだ。
それは恋愛でも友情でもない、私たちだけの関係だ。

活動は主に夜で。
お互いに不安定だった私たちは、どちらかがヘルプを出せば私が彼のうちに行った。

会っても迷惑かけるから、なんて迷惑をかけられた覚えはなかった。

会えばお互いの処方箋を交換して、ラリってだらけながらいろんな話をして
気が向いたら深夜にカラオケに行ったりセックスしたりご飯を作ってもらったりした。

彼は薬に詳しいから、実験に症状の重かった私の処方箋を欲しがった。
私も私の体を大事になんてしてないからどんな薬でも試した。
楽しかった。どんな違法薬物より、二人で飲むデパスが一番楽しかった。

ある日、昼間に下北沢で古着巡りをした。
私のセンスを好いていてくれた彼は私の選ぶ服選ぶ服、ほめてくれた。
これ可愛い、あれ似合いそう、そのあとは私の家でセックスした。

パニック障害持ちだった私はごはんが満足に食べられなかった。
でも彼の手料理だけはおいしく食べられた。
「なんでだろう。君にだけはおいしいと思って食べてほしくて作ってる」
そんな彼の料理は当時どの料理店で食べる食事よりおいしかった。パニックも起きなかった。
パニックが起きた時、ひたすらにそばにいて背中をさすってくれた。
換気扇の下で笑いながらタバコを吸う彼を今でも鮮明に思い出す。

会えないときは電話した。
何時間でも電話してパキって傷つけて泣かせて、電話を切ったあと罪悪感でリストカットして、早朝から彼の家に行って起きるまで家の外で待機したこともあった。

怠惰で退廃的なこの生活が続けばいいと思った。

ある日の深夜、彼のマンションの屋上で星を見た。
住んでる東京が全部見えた。
空も、全部私たちのものだった。
ちょっとだけかけた月を見て「溶けてくパイン飴みたい」と言ったら
いい例えだねって返してくれた。
空の端から白くなっていく夜明けが、まるで地球の色が変わっていくようだった。

だから曲を教えてあげた。

エモいねって彼が笑った。

代わりに私に似合う曲を教えてくれた。

エモいねって私も笑った。

今は彼は地元に帰っている。
だから数年あってないし、もうセックスすることもない。
あの時の私たちはもういないから。
お互いが、お互いによって別の方向を向けたから。

でも彼との関係はずっと続いている。
恋人でも友情でもない何かでずっとつながっている。

そんなことを思い出す誕生日だった。



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