『人間椅子』『鏡地獄』『芋虫』読了

全て江戸川乱歩の短編だ。

江戸川乱歩といえば推理小説というイメージがあるかと思うが、わたしは彼の猟奇趣味、ナンセンス文学がとても好きだ。
彼の活躍した昭和初期、エログロナンセンス文学がとても流行った。小栗虫太郎、澁澤龍彦、大下宇陀児、夢野久作、久生十蘭…etc
その探偵小説、エログロナンセンスを率いていたのが彼、江戸川乱歩なのだ。今でもファンを増やし続けている。盲獣なんかも面白かった。
それに作品がとても多い!探偵小説から猟奇まで網羅しているのは彼くらいなのかなとも思う。
それに確か、乱歩は性癖がそんなのだった気がする(曖昧)んです。それもまた一興。
エログロナンセンス、乱歩はいいぞ。是非読んでみてほしい。

『人間椅子』
バンドの人間椅子はここから来ている。彼らは見るからに乱歩リスペクトのバンドだ。
さて、この作品読んだ体で話を進めますね。読んでない人は履修してください!!!!短いので!
ラストで安堵した人🙋
いますでしょうか?
わたしは全く「なーんだ、創作か」とはならなかった。
これ、気づくと怖い話みたいなんですけどね、結局確かめてないんですよ。奥様は創作だって、信じたからです。
信じたら確認しないでしょう?
奥様が確認しないということを踏んだ上で男が創作でした!といった趣旨の手紙を出したのなら、まだ椅子に潜んでいる可能性もあるのですよ。
つまり椅子のなかにはまだ…

これぞ乱歩の怖さ。癖になりますでしょう?

『鏡地獄』
こちら、鏡に狂った男のはなし。
私が江戸川乱歩をこれを題材に研究しようとして、裏付けがすぐとれてあきらめた作品でもあります。
なんでも雑誌の相談欄(ラジオのはがきみたいな)に「鏡で球体をつくってそのなかに人が入ったらどんな風に見えるのですか?」という話があって
それをみて乱歩が書いたそうな。
球面の鏡。その中に入ったらはたして何が見えるのか。
人間の想像の及ぶところではない。
まさに「夢想することも許されぬ、恐怖と戦慄の人外境」なのかもしれない。
だって、なかにはいってしまった男は狂ってしまったのだ。
今の科学を以てしたら、鏡張りの球体の中はどう見えるのか分かるものなのだろうか。
もし、わかる人がいたら教えてほしい…。

私も試してみようかしらん…。

『芋虫』
こちら私の一番大好きな話です。エログロの真骨頂。原点にして頂点。今もなおサブカルクソ女(特大ブーメラン)に崇拝されし『芋虫』
丸尾末広先生の漫画でもお馴染みですね。
戦争で四肢を失い、顔もほとんど壊滅し、口も聞けぬ耳も聞こえぬが目だけが外界との接触を許された唯一の器官となった須永中尉とその妻時子。
彼女の歪んだ情欲は、その殆んど肉塊ともとれる夫との情事。
なんとエロの耽美なことか。グロの不気味なほどの要素がエロを引き立てる。もちろん直接的な描写ではないし官能小説でもないため、場面の事細かなことは書いていない。うっすら匂わせるだけ。それでも、ここに禍々しいグロとエロの狂詩曲を感じることができるのだ。
わたしは身体や顔を壊滅させても尚生きている人が、死体やスプラッターなんかよりとてもグロテスクだと思う。結局グロテスクなのは(語弊と反感を呼びそうだが)片輪となっても生きている人間なのだ。
そんな私のグロの骨頂は江戸川乱歩の芋虫に詰まっているのだ。恐怖心を煽られてとても目を背けたくなることを仰視することこそ、私の心を満たしていくのだ。
これぞエログロナンセンス。
外界との唯一の繋がりの目を、時子は潰してしまう。我に返って目を潰してしまったと思い取り乱すも、実はそうしたくてしたのではないかと自分の内なる恐怖を感じる時子。治療を終え夫の胸に「ユルシテ」と何度も書くが反応がなく彼の意図が読めず困る時子。
須永中尉は部屋を脱走した際に柱に拙い文字で(彼は口に鉛筆をくわえて書く)「ユルス」と書いていた。
彼は自殺をしようとしているのだ。
古井戸に飛び込む須永中尉。見届ける時子を含めた二人。
その時のことを、時子は芋虫が重みに耐えきれず落ちたと表現するのだ。
ひどいなんて!!!!いわないで!!!
この関係性で非道なのは時子じゃないし須永中尉でもないのです。ここに美しさを、内面を失わず外見の美しさを失った中尉と、外見の美しさはそのままに内面のおそろしい情欲を叶えてしまった時子。
きっと相互愛の結果なのだ。悲劇。だけれども美しさを秘めた悲劇。
本当はその恋愛関係についてもっともっと突っ込みたいけど
次の作品に集中したいため一度ここで筆を止める。
またひっそりと追加したら読んでほしい

乱歩の奇妙さ、美しさ、猟奇さはいつだって人々を惹き付けるのだ。私が魅了されたように。

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