見出し画像

庭でトウモロコシかじるフリースクールなんてどうだろうか

「生きづらさを抱える子への支援の手立てとして、最近注目しているものは何かありますか?」というご質問を頂きました。

支援の手立てというと、各種SSTやコグトレなど、小さな室内でも比較的気軽かつ手軽に行えるトレーニングも広く知られるようになりましたね。

私自身も職業柄、学校生活や日常に困難を抱える子ども達がリスタートを切るまでの過程においてどのようなツールが有効であるか、日々情報収集したり、各分野の専門の方に教えてもらったり、実践したりしてまいりましたが、コト”最近の”注目と聞かれると、私は「土」と答えています。

「は?土?」みたいな顔をみなさん(当然)されますが、そうなんです、土なんです。
教員時代からフリースクール時代にかけて、いろんな分野をまたいでトレーニングやアクティビティをかじってみて、1周して帰ってきたところが”土”でした。

どんな支援教材もトレーニングも合わなかった…そんな子がいたら、ぜひ土を触らせてあげてみてほしいと、最近は思っています。
できれば好き放題どろんこになれる場所が用意できればいいんですけど、それも難しいと思うので、可能であればどこかに花壇なんかを作って。
それも難しければプランターで植物を育てるとか、牛乳パックで枝豆育てるとかでもいいと思います。

ただし、うまくいかなくても怒らないでくださいね。
土は万人受けはしませんから、「うまくいったらラッキー」くらいで始めるのがおすすめです。土ダメって子は、とことんダメですからね。
でも反対に、ハマる子にとっては素晴らしい時間になるはずです(半々くらいじゃないかな?こう書くと結構低確率ですね)。

こんなに”土オシ”になったのも、私自身が「土イイかも」と感じる50%内に入ったからです。要は「合う、合わない」の「合う」だったんですね。

きっかけは、私のおうちフリースクールの生徒さんに「僕は今、畑にハマっている」とカミングアウトされたことでした。
彼が来室するたびに「この前の休みは庭の土をひっくり返して小松菜を植えた」とか「セキチューに売ってる●●は野菜の防寒に最高」とか聞かされるうちに「そんなにおもしろいのか」と興味が出て来たわけです。
気づいたら彼と一緒にイモ掘りやエダマメの収穫をしていたのが昨年の春~秋でした。

また、ある時期から各分野の複数名の先生方が「畑をやれ」とそれぞれのご著書の中で口をそろえて言う(書く)ようになってきたことも、土が気になってきた要因でした。
皆さんそれぞれ異なる分野の学者さんでいらっしゃるにもかかわらず、どの本を開いても「不登校」というキーワードと「畑」がセットで語られるようになった時期があったんです。コロナによる一斉休校の直後くらいだったかな。

ある先生はそのご著書の中で「なぜ畑がいいかと聞かれるが、やってみろとしか言いようがない」と書かれていました。
こういうこと、エライ先生に言われると、しびれるなぁ。
「やってみろ」を真に受けた庶民代表として私なりに土いじりの効能(?)をサクッとまとめると、

・とにかく五感に心地よい
・ハプニングだらけでおもしろい

以上2点。
私が関わってきた子ども達のほとんどがマイクラを楽しんでいたんだけれど、リアルの土を掘っても本当にあのポコ、ポコ、という音がするのよね。
シャベル越しにも土が固いとか柔らかいとかが伝わってくるのも、とても楽しい。
「マイクラ好きなんだねーそうなんだねー」で終わっちゃうのはつまらないと思うんです。
マイクラの面白さを教えてもらった分、こっちも「グラフィックも悪かないけどリアルも捨てたもんじゃないぜ」と新しい世界を紹介できるような支援者でありたいと思っています。
断られたら断られたらで仕方ない、でOKだと思うので。

私自身、土をいじった日はPCいじる時間が減る傾向があります。
以前はnoteやブログを書くのが一番の気分転換だったんだけど、土をいじった日はそれだけでなんどなく満足して、文章を書かなくても心が呼吸している感じになれる日が増えました。

「直線だらけの都市と違って縦線も横線も曲線も豊富な自然の中で実体験を重ねることは、認知世界を広げるうえで重要」と、「子どもが心配」の中で小泉英明先生も書いていたっけ。

また、畑ってとにかく思い通りにならないことだらけなのもおもしろい。
天気に振り回されたり、「このひとマニュアル本に出てこなかったじゃん」みたいな謎の虫に根を食いちぎられたり、とにかく予定どおりに進まない。

〇〇トレーニングなど、”訓練する者される者”という構図がうっすら見えてしまう活動と違って、土の上では大人も子どもも平等にチャレンジャー。
みんなで愉快に豪快に失敗して、本気で対策を考えるから面白い。
私などは畑の知識に関してはザコ中のザコなので、大人子ども関係なく周囲の人達の名案に救われてばかりです。

おうちフリースクールのナリワイを始めて1年経ったくらいの頃に読んだ内山節先生の「民主主義を問いなおす」の中で、韓国には”農村フリースクール”が結構あること、農村フリースクールがなかなか良い教育をやっていること、そこを出た若者たちが立派に社会復帰を果たしている実績があることを知って以来、イナカで子ども達とネギとかイモとか育てながら学び舎をやるの、いいな…そんなことを考えています。

本日もあっちゃこっちゃ話が飛びましたが、今日もフリースクール再開についてぼんやり考えていることをつらつら書きました。
とりあえず、しばらくは土にハマりそうです。

【参考文献】
子どもが心配

内山節と語る未来社会のデザイン①民主主義を問いなおす

https://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54020176/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?