[ 穴穴家電(その5)]~創作大賞2024応募作品
五
「また来たの?」〈椿姫〉が眉間に皺を寄せ、呆れ顔で言った。
「毎度、いらっしゃいませ」堀部のオヤジは上機嫌。出迎え方が好対照である。
何にしてもわたしはまた穴穴酒処の暖簾をくぐってしまった。昨夜の〈るうずべるとさん〉の件が頭にこびりついて離れず、部屋に帰ってもろくに眠れず、腑抜けのように床に座り込んでいたのだが、朝陽が部屋に入る頃になって猛烈な眠気に襲われ泥のように眠り、目が覚めたら夕刻で例によって空腹でいてもたってもいられなくなり、気がついたらここに来