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[毎週ショート・ショートnote]二億斎藤

書面をにらみながら課長が声を上げた。
「ちょっと斉藤君、きてくれ」
大きなフロアで机に向かっていた数十名の社員がいっせいに顔を上げて振り向き声を揃えて言う。
「はい、なんでしょうか!」
斎藤課長の顔が歪む。

小学校では、教師が困った顔をしている。「この質問わかるひと手を上げて」と聞いて数人が手をあげたから「ではそこの斎藤くん」と言ったら、全員が「はい!」と答える。全員名字は斎藤だ。もちろん教師の名字も斎藤である。

うっかり、街中で知り合いに遭遇して「おや、斎藤さん」などとうかつに声をかけたものなら通行人が一斉に振り向く。道中にも気を使う。

とにかく世の中斎藤だらけ。
大昔「一億総中流」と呼ばれた時代があったらしいが今は「二億斎藤」の時代である。かつては少子高齢化で衰退していたらしいが今や日本の総人口は二億に達しつつある。ずいぶん昔にとある田舎町に斎藤家が引っ越してきたのが発端らしいが真偽は定かではない。もしそうなら斎藤家様々である。

かくいうわたしも斎藤である。


このショートショートはたらはかにさんの企画に参加しております。いつもありがとうございます。
また、このショートショートの題材をベースに、短編、あるいは中編に仕上げようと思っております。詳しくはそちらで斎藤だらけのドタバタ劇、また斎藤だらけになった裏事情を語りたいと思っております。それではよろしくお願いいたします。

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