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【コラボレーターの仕事術】夢、やりたいことが見つからなくても「生き方」を追い続けられれば良い。 立川流落語家 立川 うぃん

今回は、落語立川流、新二ツ目『立川 うぃん』さんにインタビューさせて頂きました。

立川うぃんさんは、20歳まで落語を聞いたことがなかったところから、大師匠の「立川談志」さんをきっかけに落語の世界にのめりこみ、今ではテレビやメディアに引っ張りだこの師匠「立川志らく」さんへと入門しました。

落語家としての信念を守りながら、現在は、自主公演や様々な企画会社の方などに呼ばれて落語公演をメインに活躍されています。ただ落語を広げるというだけでなく、異業種とのコラボをすることで幅が広がっていくだろうと直感し、今回のワクセルとのコラボレーションでも、新たな可能性を見出し、どんな視点からでも落語を広めることへ繋げようという姿勢が印象的でした。

そんな立川うぃんさんが、落語を目指されたきっかけや、今後の展望、そしてこれからチャレンジする若者へのメッセージをインタビューさせていただきました。

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立川談志の言葉「落語は業の肯定」、これが二十歳の自分の価値感、ど真ん中へ “グサッ”ときた。

インタビュアー)
落語をはじめたきっかけはなんでしょうか?

うぃんさん)
落語を知るきっかけになったのは、大師匠「立川談志」の存在でした。実は、20歳になるまで落語を聞いたことがなかったんです。

それが、ビートたけしさんや爆笑問題の太田さんというすごい芸人さんが師事を仰ぎ尊敬する「立川談志」という、これまた凄いおじさんがいる!と知ったのをきっかけに、落語を聴くように、というより立川談志の落語を聴くようになったんです。

その中で、大師匠の語る言葉たちにどんどん“グサッ”とやられていくんですね。例えば「落語は人間の業の肯定」という言葉。人間なんて結局はいい加減なもんだ、でもそれを笑って許す、肯定するのが落語なんだ、と。一つ一つの言葉がいちいち痺れるんですよね。(笑)

ぼくだけじゃなく、ぼくらの世代で、こういう談志の言葉にやられた人達ってすごく多かったみたいなんです。

「業の肯定」「イリュージョン」「江戸の風」など、狂気的に価値観を押しだした落語を家元(※談志師匠のこと)がやり始めると、昔からのご通家さん、古典ファンの一部の方は離れてしまったそうなんですね。でも、その代わり、若い新しい世代のお客さんがどっと増えた時期があったそうで。

これ、ぼくの考えなんですけど。ぼくらの世代って、小さい頃にバブルが弾けるのを見て、大人たちが今までの価値観を転覆させられて右往左往している姿をみて「あんまり既存の価値観って信用しちゃいけないぞ」「自分たちの価値観は、自分たちの基準を作って築いていかなきゃいけないぞ」って、刻まれた世代だと思うんです。

だから小さい頃に終戦を味わって、軍国教育からガラッと大人の言うこと、価値観が変わる瞬間をまざまざと見せつけられた家元の紡ぎだす「落語は業の肯定だ」「幸福の基準を決めよ」「現実は事実」とかの言葉が、すごくしっくりきたんだと思うんです。

そんな家元の影響で、落語を聞くようになり、談志が「あの名人のあれを聞け、これを聞け」と客にいうのを、そのまま鵜呑みにして聞いてるうちに、そのまま落語好きになって、そのまま落語家になろうとまで思ってしまって。

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談志師匠に弟子入りをするため、会社の研修を途中で抜けてまで落語の道を目指した

インタビュアー)
弟子入りはすぐにはOK出ないと思いますが、何か試練はありましたか?

うぃんさん)
そうですね。今、弟子入りというと楽屋口で出待ちをして「弟子入りさせて下さい!」と直訴したり、手紙を渡したりというパターンが多いと思うのですが、はじめ、立川談志へ弟子入りしようと思っていた自分にとって一番の試練は、そもそも家元のお体の具合でした。

もう、一人の客として高座を観ていましたが、正直、声も聴き取れなくて「あぁ、この人はもう、先が長くないんだ…」そう誰がみても明らかにわかるような状態だったんです。

それでも、そこにいるお客さんはみんなそれが分かっていても、落語をやれなくても、高座にあがってる姿をみれるというだけで、その存在が神様のように、会場の熱気がワッとなっていました。

それで「談志師匠に弟子入りできないくらいなら」と、落語の道は諦めて、就職して、その年、家元が亡くなられたんです。

当時、家にテレビがなかったので、友達に「談志師匠が亡くなったら、必ずニュースになるから、教えてくれ」と頼んでいたのですが、今でも忘れません、山手線に乗っていたら、友達から一斉に「だんしがしんだ!だんしがしんだ!」と、連絡がきたんです。これ、逆から読んでも「だんしがしんだ」って、回文になってるんですよ。(笑)

その時、山手線のなかでしたが、初めて人が亡くなったのを聞いて、泣きました。

それで、談志師匠のお別れ会が、ホテルニューオータニで開かれるということになって。このお別れの会、午前中は荘々たる芸能人が参列していたのですが、午後はお金を払えば一般の人でも献花できるって聞いたんです。ただ、その日は会社の研修が、飯田橋で夕方5時までだったんですが、ホテルニューオータニのお別れ会も夕方5時までだったんです。

最初は「諦めるしかないな…」と思っていたのですが、やっぱり、どうしても最期、献花しに行きたい!と抑えきれず、研修中「トイレに行ってきます!」と飛びだして、そのまま会社、辞めっちゃたんです。そのせいで、今でも、その会社の研修の日はやけにピリっとするそうで、ほんとにその節はご迷惑をお掛けしました。。

それで、研修を抜けて行ったのはいいものの、ホテルニューオータニに着いたのが5時15分。あぁ、せっかく来たのに15分、間に合わなかったとうなだれました。こうして佇んでいると、気付いたら目の前に黒紋付、羽織袴姿の大柄な、どうみてもヤ○ザにしか見えない、談笑師匠という方がでてこられて「どうしたの?」って訊ねてくれたんです。

それで事情を説明すると「そんな情熱を持って、若い人がきてくれたなら!」と言って、終了時間、過ぎているにも関わらずホテルニューオータニでも一番の大広間、何百本もの白い花で埋め尽くされた遺影のまえ、たった一人で献花させて頂いて。

その時、「落語家なろう」と決意したんです。

二ツ目になった時、談笑師匠にこの話をしたら「人間、良いことしたら覚えてないもんだね」と言ってました。ほんと、かっこいいですよね。(笑)

それからもう一回、立川流の落語会を中心に通い続けて、誰よりも剥き出しな志らくの高座をみて「この人が一番かっこいい!」と思い、弟子入りさせて頂きました。

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落語を全国に広めたい。落語も様々なコラボによって、さらに広がる可能性を秘めている

インタビュアー)
今後の展望、ビジョンはありますか?

うぃんさん)
2つあります。
1つめは東京でやっている「東京独演✕立川うぃん」という会を全国規模でやることです。例えば「埼玉独演×立川うぃん」や「沖縄独演×立川うぃん」といったように、47都道府県で独演会をやりたいんです。

元々バックパッカーで旅行をするのが好きだったので、仕事しながら全国の人と関われたらいいなって思っていました。落語は、座布団、緋毛氈(ひもうせん)、自分の着物さえあればどこでも公演ができますし、将来的には全国ツアー化したいんです。

もう1つは、ワクセルから話をいただいて感じたことでもありますが、いろんな業種とコラボすることです。落語はコラボできることがものすごくたくさんあります。例えば師匠 志らくが、ロックバンドや演劇とのコラボをしていたり、ある御師匠さんはバレエとコラボしたことがあるそうなんですが、バレエの演技のあいだに、落語化したストーリーを語る。そうすることで、初めてバレエを見る人達に分かりやすくストーリーや情景が入ってくることで、ものすごい相乗効果があったそうで。

自分も以前、お寺とのコラボで、ご祈祷+説法をして頂き、身も心も清めたあとで落語を聞いてもらう(笑)なんていう試みはあったのですが、まだまだ考えもしない、意外な角度からのコラボが生まれそうだなと感じています。

インタビュアー)
落語はいろいろとコラボ出来て面白そうですね。例えば、今、全国の自治体やローカル鉄道と組むプロジェクトがあるんですけど、何かできそうですね?

うぃんさん)
いくらでもあると思います!例えば、ローカル線ってすごく駅員の方や乗客さんに思い入れやストーリーがあると思うんですが、それを落語に仕立ててみたり。もっと単純に、寿限無で長い名前を読み上げていくように、鉄道の駅名を全部読み上げるなんてのも面白いかもしれません。沢山の可能性があると思います。

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やりたいことが見つからなければ、「生き方」を追えばいい。

インタビュアー)
最後に、これからチャレンジする人へのメッセージを頂けますでしょうか?

うぃんさん)
今、定時制の高校で落語を毎年やらせてもらっているんですが、そこで、将来についての話をしてくれと頼まれて、いつも学生に言っていることがあるんです。

多くの大人が「やりたいことを探すといい、夢を追うといい」と言うけれど、それが見つからないことなんかに押し潰される必要はない。大半の人は見つからないし、やりたいこと、夢なんてのは、見つかればラッキーくらいのもんだと思う。

もし、やりたいことが見つからなくてうなだれそうになっても、『生き方』を追えば良いと思う。例えば、身近な誰かを大切にすると幸せだとか、正直でいられれば幸せだとか、誰かとなにかをしていられれば、一人でこういう時間を過ごせれば幸せだということがあるなら、それを『生き方』として大切にしていれば、少なくとも小義の個人的幸福は追うことができるし、自然とやりたいことや、夢なんてのも見つかったりするのでは?ぼくはそう思う。そんなことを話しています。

これは二ツ目になったあと、師匠に言われた言葉ですが「落語家になるのは職業の選択ではなく、『生き方』の選択だ」と。これを聞いた時、改めて、この人に弟子入りして良かったなと思ったし、改めて、すごく大切にしている言葉です。

一同)
長いお時間、ありがとうございました。

▼ワクセルコラボレーター 立川うぃんさんhttps://waccel.com/collaborator/tatekawa-wien/

<プロフィール>
立川流落語家

<経歴>
学習院大学経済学部卒業
2013年6月、立川志らくに入門し、十五番弟子「らくぼ」となる。
2021年1月、元日より二ツ目に昇進、同時に名前を「うぃん」に改めた。
名前は祖父の代から父親の代まで60年馬車道で経営していた老舗喫茶WIENの名にちなむ。

■代表作・主な実績
「片棒」…2017年、立川龍志師匠より、受け継ぐ。
「死神」…2021年、立川ぜん馬師匠より、受け継ぐ。
2021年7月10日に行われた二ツ目昇進披露落語会では、師匠 志らく、談志の長女 松岡ゆみこ、松元ヒロ、世界のゴンゾーをゲストに400名近くの動員をして執り行われた。

■公式ホームページ、SNS等
Twitter
https://twitter.com/rakubo_50?s=06

特集サイト
https://7net.omni7.jp/


■SOCiAL BUSiNESS COMMUNiTY『ワクセル』
ワクセルは、コラボレートを通じて、人に夢を与え続けていくソーシャルビジネスコミュニティです。健全に学び、チャレンジし、成長し、達成し続ける人が次々と集まるコミュニティを作り続けます。

さまざまな分野で活躍する著名人や経営者、クリエイターの方々とコラボレートすることにより、下記の取り組みやコンテンツ制作を行っていきます。

・YouTube等での番組配信
・オンライン講演会
・出版プロデュース
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