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戦略の出発点の話。 事業ドメインとマーケティング近視眼

今回もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
「マーケティングを担当することになったけど、何から始めたらいいの?」そんな疑問を抱いたことはありませんか?
中の人も、初めてマーケティングを担当することになった時に、そんな疑問にぶち当たった記憶があります。
今回は「マーケティングは何から始めるの?」という問いに対する、ひとつの答え=「事業ドメインの定義」について書いてみようと思います。

事業ドメイン

ドメインとは、元々は「領地・領土」を意味する単語です。なので事業ドメインとは、自社が定める事業領域=競争するフィールドを指します。
「私たちは〇〇屋さんです」と宣言することになるので、マーケティング計画において長期的な方向性を定めることになります。そのため、戦略の出発点といわれています。

事業ドメインの定義の仕方

では、事業ドメインってどうやって決めればいいの?という疑問が生じると思います。
簡単に答えると「自社は何の会社なのか?」という問いを立てることです。
もう少し詳しく考えてみましょう。
「何の会社なのか?」という問いを分解すると、
「何を(What)」「誰に(Who)」「どうやって(How)」届けるか、という3つの問いに分かれます。
専門的にはWhatを「顧客機能」、Whoを「顧客層」、Howを「代替技術」と言いますが、難しい単語は置いておきましょう。
この3点を結んだ内側が事業ドメインとなります。

これらを考えるときに、以前差別化戦略について書いた時に紹介したSTPのフレームワークが有効的です。
特にtargetingは「誰に」という問いに直結します。

事業ドメインの事例

そうは言っても、なんか抽象的でよくわからない。というのが正直なところ。
カフェ・チェーン事業を例にっとて具体的に考えてみましょう。

カフェが提供できるもの(What)って何があるでしょうか。
美味しいコーヒー、スウィーツ、ボリューム、容器のデザイン、リラックスできる空間、品揃え、気持ちの良い接客 etc…  色々ありそうですね。

ではカフェは誰をターゲットに(Who)したら良いでしょう。
定量的にセグメントすれば、ビジネス・パーソン、ティーンエイジャー、家族連れ etc…
定性的にセグメントすれば、ストレスを抱える人、睡眠不足な人、一人の時間が欲しい人、集中したい人 etc…  などが考えられそうですね。

それらはどうやったら(How)提供できるでしょうか。
直営農場からの仕入れ、受注後に焙煎、ゆったりした店内にやわらかいソファ、フルサービス/セルフサービス、街中立地/郊外立地 etc…  WhatとHowに対応して色々と思いつきそうです。

みなさんなら、どんなドメインにしますか?

Starbucks Coffeeの例

カフェ・チェーンでも有名な、みなさんお馴染みのスタバのドメイン定義を考察してみましょう。

有名なのは「何を(What)」でしょう。
スターバックスは「サードプレイスを提供する」と謳っています。
家でも、職場でもない、くつろげる空間=サードプレイスがスターバックスの顧客機能です。コーヒーやフラペチーノといった飲食物を提供する「珈琲屋さん」ではなく、「空間を提供するコミュニティ」というのがスターバックス自らが定義したドメインということです。

では、「誰に(Who)」はどうでしょう。
これは明言されていないので私の主観ですが、おそらくメインターゲットはビジネスパーソンだと思われます。とりわけ、女性に注力していると思われます。
デカフェ(カフェインの少ない)コーヒーや、ソイラテ、甘いフラペチーノなどの品揃えや、ショップバッグなどのデザインなどからそう読み取ったのですが、実際そうなのかはスターバックスに聞くしかないですね。

「どうやって(How)」も同じく推測の域を出ませんが、考察としては以下の通りです。
店内でくつろげるようにソファ席が多く用意されています。適度なボリュームでジャズやボサノバなどのBGMが流れ、大きな窓から採光されて明るい店内。そうしたお店の雰囲気と、フレンドリーに話しかけてくれる店員さん。これらが居心地の良いサードプレイスを演出していると思われます。

サードプレイスを求める人=ストレスを抱える人
→ストレスが渦巻くのはビジネス街など人が多く集まる場所
→ビジネス街に出店している
といった立地に関する考察(説)もあるようです。

マーケティング近視眼

さて、具体例を見たことで何となく事業ドメインの決め方についてイメージが湧いたでしょうか。
実務で事業ドメインの定義を行う場合は、マーケティング近視眼(マーケティング・マイオピア)に陥らないように注意しなければなりません。

マーケティング近視眼とは

マーケティング近視眼とは、製品や技術に気を取られる内に視野が狭くなり、顧客ニーズの本質を見落としやすくなることを言います。
事例の枚挙にいとまがないほど、非常に陥りやすく気をつけなければならないポイントです。
例として、ポータブル音楽機器の変遷を見てみましょう。
カセットテープを持ち運べるウォークマンの誕生から、CD、MDとコンパクトになり、iPod、スマホへと変遷してきます。
その過程で多くの企業は技術面に気を取られ、音質の改良に力を入れていました。一方で、顧客のニーズは音質ではなく、気軽に音楽を楽しむことにありました。そのニーズに応えたのがAppleです。
今ではiPodないしiPhoneがポータブル音楽機器の代表格になりました。
一方で、ウォークマンを手がけたSONYは音質を追求していったため、市場の中で徐々に地位を失っていきました。(現在は、その技術力と追求した音質を活かしてニッチな市場を制しています)

マーケティング近視眼にならないためには?

陥りやすいとはいえ、回避策はあります。
それはマーケティングの基本=顧客起点に立ち返ることです。
マーケティング近視眼の原因は技術や製品に目を向けすぎることで、ニーズを見落とすことです。なので、ニーズにしっかり向き合うことで回避することができます。
事業の本質は、商品・サービスをつくることではなく、顧客に満足してもらうプロセスそのものだと認識しておくと良いでしょう。

要するに、事業ドメインはニーズによって定義することが重要だということです。また、ニーズに基づいてドメインを決める以上、市場のニーズが変化すればそれに対応すべく、事業ドメインも変えていかなければなりません。

ドメインを変更して成功した事例も多くあります。
体組成計などを販売する「タニタ」は、【機器の販売】から【健康の提供】にシフトしたことで、「タニタ食堂」など関連領域で知名度を一気に上げました。
以前の記事(上述)で紹介したUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)も【映画のテーマパーク】から【エンターテイメントのセレクトショップ】へと転身を遂げたことで売り上げを伸ばしています。

ということで、マーケティング担当者になったら、まずは自社の事業ドメインを見直してみてはいかがでしょうか。

あとがき

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
こういう、アカデミックなところが「中の人」は大好きなのですが、わかりやすく伝えるというのは難しいですね。
ところで、三日坊主な私ですが、おかげさまで2ヶ月目に突入しました!
毎日、次は何を書こうかなとネタ探しをしていますが、それも何だか楽しめるようになってきました。
今後も、一層お役に立てる情報を提供できるように面白そうなネタを探してきます。

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