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【ウェブ担当者必見】「しーぶいあーる」ってなんですか?

今週もウェブ解析士のノートをご覧いただきありがとうございます。
さて、ちょっと前になるのですが、「中の人」はWACA主催のエッセンシャル講座Vol.5『ウェブ立地論 このサイトをつくったら何人来るのか?』を受講してきました。有料講座だけあって、ここ最近で一番学びのあるセミナーでした。今回は、その講座で印象に残った部分を皆さんと共有しようかなと思います。それでは、いってみましょう!
↓ 今回「中の人」が参加した講座です。

CVRは害悪な指標?

以前の記事で紹介したアビナッシュ・コーシック氏の『Webアナリスト養成講座』という書籍でCVRについてこんな記述があります。

■サイト全体のカスタマー・エクスペリエンスを解決するために、おそらくこれ以上有害な指標はないのではないか。

■コンバージョン率に取りつかれるということは、トラフィックの20~40%だけに注目しているということだ。ページやコンテンツの改善に焦点を当てられないため、最善のカスタマー・エクスペリエンスが施されていない多くのトラフィックを潜在的に無視していることにもなる。

アビナッシュ・コーシック『Webアナリスト養成講座』(抜粋)

CVRをKPIに据えている方も多いと思いますが、そんな指標が有害なのでしょうか。なんとも意表を突かれる指摘ですよね。

そもそもCVRって何?

CVRは一般的に使われる効果計測指標のひとつです。公式テキストの記載を見てみましょう。

コンバージョン率は、ウェブサイト全体のセッション数のうち、コンバージョンを達成した数の割合を指し、「CVR」ともいいます。
ウェブサイトに100件の訪問があり、そのうち10件がコンバージョンした場合、コンバージョン率は10%です。
コンバージョン率は、一般的には次の計算式で算出できます。
コンバージョン率(%)=コンバージョン数÷セッション数×100

『ウェブ解析士認定試験公式テキスト2023』

「コンバージョン」は日本語的には「転換」を意味します。要するに、ウェブサイトに訪れたうち、見込み顧客ないし顧客に転換した割合をコンバージョン率=CVRというのですね。つまり、ウェブサイトに来た人(インプット)に対する目標到達した人(アウトプット)の割合です。

CVRの問題点

さて、上述した通り、CVRはウェブサイトのパフォーマンスを測るのに有意義な指標です。多くの企業がウェブサイト運用のKPIに設定するのも頷けますよね。では、なぜコーシック氏はCVRを有害とまで言うのでしょうか。
CVRの問題点はそのアバウトさにあります。インプット(訪問者)とアウトプット(目標到達者)だけで計算されるために、その過程が不明瞭で、何をすれば数値改善できるのかの示唆がないと言うのが大きな問題点なのです。

ウェブサイトを運用していて、CVRが良かった、悪かったと言うのは容易いですが、ではどうすればより改善できるのかが分かりませんよね。インプットとアウトプットのみの計算では、CVRが一定だと仮定して、とにかくアクセス数を増やせばCV数も増えると言う暴論が罷り通ります。実際には訪問者の質が落ちてCVRも低下するなんてことはよくあることですよね。

CVRを改善につながる式に変換する

さて、CVRの計算式はサイトの訪問者(入口)と目標到達者(出口)しか考慮されていなのが大きな問題だと言うことはわかりました。ここでは、CVRの計算式を改良してプロセスを考慮したものにしてみようと思います。
CVRの数式は以下の通りでしたね。

$$
{CV数 ÷ セッション数 = CVR}
$$

さぁ、ここからは算数の時間です。割り算は逆数を使えば掛け算にすることができるのを覚えているでしょうか。この法則を使えば以下のように式を変形することができます。

$$
{CV数 ×\frac{1}{セッション数}=CVR}
$$

これで分数の掛け算になりましたね。さらに、分数の掛け算の約分の仕組みを利用するとこんな式にすることもできます。

$$
{\frac{CV数}{フォーム到達数}×\frac{フォーム到達数}{セッション数}=CVR}
$$

聡い皆様ならお気づきでしょう。
まず最初の$${\frac{CV数}{フォーム到達数}}$$は、フォームに到達したうちCVした数なので、すなわち、フォーム完了率をさしています。
次に、$${\frac{フォーム到達数}{セッション数}}$$は、セッション数(訪問者数)のうちフォームに到達した人の数なので、すなわちフォーム到達率を意味します。
と言うことは、CVRの計算式は以下のように表現することができますよね。

$$
{フォーム完了率 × フォーム到達率 = CVR}
$$

CVR改善の具体策

前項のようにCVRを求める計算式を変形することで、ウェブサイト内の顧客行動のうち、フォームまでの動線が悪いのか、フォーム上での挙動が悪いのかというプロセス上での改善判断が可能になるわけです。
フォーム完了率が低いなら、EFO(エントリーフォームの最適化)に取り組まなければなりませんよね。フォーム完了率の目標値については、株式会社WACULさんのレポートが参考になります。

出典:2019.06.14 研究レポート B2Bサイトのフォームにおけるベストプラクティス研究
WACUL TECHNOLOGY & MARKETING LAB

上記に示した表のとおり、フォーム完了率の基準値を25%に設定して、それよりも低い場合はEFOに取り組めばよいわけです。

ではフォーム完了率が基準値の25%を超えている場合はどうすればよいでしょう。今度はフォーム到達までの動線の見直しが必要になります。
フォーム完了率を25%として、目標のCVRを仮に1%と設定すると、先ほどの式に代入することで、目指すべきフォームへの誘導数が見えてきます。

フォーム完了率 × フォーム到達率 = CVR
25% × フォーム到達率 = 1%
フォーム到達率 =1%÷25%
フォーム到達率 = 4%

ということで、セッション数のうち4%をフォームへ到達させることが目標となるわけですね。
動線を理解するために、まずはどのページから入ってきているかを検索クエリなども併せて把握して、ユーザーの意図を掴まなければなりません。その上で、ユーザー求める情報を提示しながらフォームへと誘導していくわけです。この辺りはやり方は様々あると思うので、この記事では割愛します。EFOはある程度ツールに頼ることができますが、この動線設計やページ構成、CTAに載せるマイクロコピーなどはウェブ解析士の腕の見せ所になるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。KPIに据えることの多いCVRという指標ですが、それだけではどう改善していくかが見えてきません。そこで、捉え方を変えることで、なすべきことが見えてきます。
ウェブサイトの目標とするCV数と現状のセッション数を基本形の計算式に代入してCVRの目標値を設定。その後、フォームまでの到達率と完了率を測定して目標CVRに到達するための策を練っていくのが定石になりそうですね。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうござました。
エッセンシャル講座に申し込んだのは2回目なのですが、毎回とても勉強になりますねぇ。有象無象あるオンラインセミナーの中でも持ち帰るものが多い講座だと思っています。
ちなみにですが、今回の講座内容は以下の書籍の著者解説のような感じでしたので、気になる方はぜひご一読ください。「中の人」も読みましたが、ウェブサイトをリニューアルする際に大変役に立つ知見を得ることができますよ。

それではまた来週お会いしましょう。

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